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秋田の豪雨に続き北陸で大雨警戒 平成16年新潟・福島豪雨の5日後に起きた福井豪雨

饒村曜気象予報士
豪雨(ペイレスイメージズ/アフロ)

秋田県・雄物川を氾濫させた梅雨前線が南下

梅雨前線の活動が活発になり、秋田県を中心に大雨となり、秋田県南部を流れる雄物川が氾濫し、大きな被害がでています。

その後、梅雨前線はやや南下し、秋田県での雨は小康状態となっていますが、雄物川は高低差が少ない河川であるため、冠水した地域から水がなかなか引かず、被害の全貌がわかっていません。

洪水では、水をかぶるだけでは被害額が決まりません。水をかぶっても、すぐに引けば被害が拡大しないのですが、冠水の期間が長引けば長びくほど被害は拡大します。

一日も早く水を引かせる必要があるのですが、雄物川は高低差が少ない河川ですので、冠水期間が長引く傾向があり、心配です。

雄物川を決壊させた秋田豪雨をもたらした梅雨前線が南下し、現在、新潟県など日本海側の地方で大雨になっています(図1)。

平成16年の梅雨前線では、新潟・福島豪雨発生の5日後に、南下した梅雨前線で福井豪雨が発生したように、大災害は続くことがあり、要警戒です。

図1 予想天気図(7月25日21時の予想)
図1 予想天気図(7月25日21時の予想)

13年前の新潟・福島豪雨と福井豪雨

今から13年前の、平成16年7月12日夜から13日にかけて、新潟県中越地方や会津地方で起こった豪雨を、平成16年新潟・福島豪雨といいます。

日本海から東北南部にのびた梅雨前線の活動が活発となり、北陸沿岸で発達した雨雲が次々に流れ込み、新潟県中越地方や福島県会津地方の同じ地域で1時間雨量が50ミリを越す激しい雨り続きました。このため、新潟県三条市や見附市などを流れる信濃川水系の五十嵐川や刈谷田川などで堤防が決壊しました。新潟県と福島県の被害は、死者16名、住家被害5500棟、浸水家屋8,402棟などで、気象庁は「平成16年新潟・福島豪雨」と命名しました。

 新潟・福島豪雨の5日後の7月18日未明から昼前にかけて、福井県嶺北地方から岐阜県西部で起こった豪雨は、美山町(現福井市南東部)で1時間に96ミリの猛烈な雨を観測し、足羽川などの堤防が決壊して多数の浸水害が発生したため,気象庁では「平成16年福井豪雨」と命名しました。

図2 福井豪雨時のリードタイム
図2 福井豪雨時のリードタイム

 当時、筆者は福井地方気象長をしていたのですが、防災機関やボランティアの立ち上がりは非常に早かったという印象を持っています。5日前の新潟・福島豪雨で、新潟県内の自治体のトップ対応など、防災機関の対応が批判されていたことが、非常に早かった要因の一つかもしれません。

気象台も、偶然が重なってのことですが、十分なリードタイムを持っての警報発表でした。

福井県北部の警報発表が3時8分、県や市町村の防災担当者は雨が強くなる夜明け前に活動を開始し、豪雨が止んだ昼頃からは各県からの救援ヘリが救助作業を行っています。また、ボランティア活動の本部は当日のうちに立ち上がり、自治体との連携や各地からのボランティアの受け入れを円滑に行っています。

気象庁の豪雨の命名

気象庁は7月19日に、7月5~6日に九州北部で発生した豪雨を、これまでの命名基準を大幅に引き下げ、「平成29年7月九州北部豪雨」と命名しました。気象の命名では28番目です。

気象庁では平成16年3月15日に「命名についての考え方と名称の付け方」を決め直しをして、基準を厳しくしています。

豪雨の命名の考え方

 顕著な被害(損壊家屋等1000 棟程度以上、浸水家屋10000 棟程度以上など)が起きた場合

名称の付け方

 豪雨災害の場合は被害が広域にわたる場合が多いので、あらかじめ画一的に名称の付け方を定めることが難しいことから、被害の広がり等に応じてその都度適切に判断している。

平成29年7月九州北部豪雨の被害は、7月19日現在、消防庁によると、死者・行方不明者43人、浸水家屋1000棟と、浸水家屋の基準の10分の1ですが、命名の基準を厳しくした平成16年に発生した「新潟・福島豪雨」と「福井豪雨」は、ともに、浸水家屋10000棟という厳しくした基準を大きく超えています。

このような大災害が5日の間隔で発生しました。

大災害は続くことがあります。

日本列島から梅雨前線が消えるまで、梅雨明けをしていない北陸地方はもとより、梅雨明けした中国地方などでも梅雨前線の動向や雨の降り方に十分注意し、気象情報等を集め、万全の体制で警戒が必要です。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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