表面雨量指数で大雨警報(浸水害)・流域雨量指数を使って全ての川ごとに洪水危険度情報 台風3号の雨から
台風3号が7月4日8時頃長崎市付近に上陸し、4日の西日本は1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨、局地的には1時間に80ミリ以上の猛烈な雨が降りました。
東日本でも、台風3号の東進により、5日未明にかけて1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨、局地的には1時間に80ミリ以上の猛烈な雨が降りました(図1)。
また、台風3号は、梅雨前線を刺激したため、北陸地方など、梅雨前線付近でも大雨となっています。
このように、日本列島が雨にみまわれた7月4日、気象庁では13時から「流域雨量指数を使い、全ての川ごとに洪水危険度を発表」などという、新しい情報の発表を開始しました。
今年の出水期からの新しい情報
気象庁では、「危険度を色分けした時系列」と「警報級の可能性」についてという、今年5月17日から始めた、新しい情報でも警戒を呼びかけています。
ここで、「危険度を色分けした時系列」は、今後予想される雨量等や危険度の推移を時系列で提供するもので、警報級と注意報級が色分けされています(図2)。
また、「警報級の可能性」は、数日先までの警報級の現象になる可能性を提供するもので、雨、雪、風、波についての発表です。毎日5時、11時、17時におよび状況が変化した時に適宜発表する「警報級の可能性・量的予報(明日まで)」と、毎日11時と17時に発表する「5日先までの警報級の可能性(明後日以降)」の2種類があります(図3)。
ここで、「高」は、警報を発表中、又は、警報を発表するような現象発生の可能性が高い状況です。「中」は、「高」ほど可能性は高くありませんが、警報級の現象となりうることを表しています。
そして、7月4日13時から始まったのが、「表面雨量指数を使った大雨警報(浸水害)」と、「流域雨量指数を使った全ての川ごとに洪水危険度を発表」などの新しい情報です。
表面雨量指数
平成20年5月までは、大雨警報と洪水警報の基準は1時間雨量や24時間雨量などの雨量基準が使われていました。
雨量と災害との関係についての調査が行われ、雨量基準が作られていたのですが、この方法では、府県をいくつかに分割した地域での基準しかつくれず、市町村ごととか、河川ごとに警報を発表することはできませんでした。
そこで考えられたのが、土壌雨量指数、表面雨量指数、流域雨量指数という3つの指数です(図4)。
平成20年5月から大雨警報の基準に土壌雨量指数が、洪水警報の基準に流域雨量指数が併用される形で使われています。
その後、平成22年7月からは大雨警報が2つに分けられ、大雨警報(土砂災害)は土壌雨量指数の基準で、大雨警報(浸水害)は雨量基準での発表となっています。
そして、今年の7月から、大雨警報(浸水害)の基準に表面雨量指数が使われるという改善となっています。
雨が浸み込まず地表面に溜まる量である表面雨量指数は、今年初めて登場した印象がありますが、他の2つの指数と同じ頃から検討されてきたものです。
台風3号の接近で関東南部では所により1時間に70ミリ以上の非常に激しい雨が降り、表面雨量指数を使い、大雨警報(浸水害)の危険度分布が発表になっています(図5)。
これは、市町村内のどこで大雨警報 (浸水害 )等の発表基準に到達するかを確認できるよう、地図上で危険度を5段階で色分け表示しものです。
全ての川ごとに洪水警報の危険度分布
洪水警報には、気象庁と河川管理者が共同で発表する水防活動用の洪水警報(指定河川洪水予報)と、気象庁が発表する一般用の洪水警報の2種類があります。
国が河川管理者である一級河川は、全ての河川について指定が行われ、国土交通省と気象庁が共同で洪水警報を発表しています。
都道府県が河川管理者である二級河川は、準備の整った河川から指定が行われ、都道府県と気象庁が共同で洪水警報を発表しています。
指定が行われた一級河川、二級河川以外の河川については、気象庁が領域毎に(ほぼ市町村毎に)、流域雨量指数を用いて洪水警報を発表しています。この流域雨量指数は、平成29年7月から、国土数値情報に登録された全国の約20000河川について計算されています。
台風3号の接近による非常に激しい雨では、埼玉県上尾市の鴨川では、一時、「極めて危険な状態」となるなど、精緻化した流域雨量指数を活用して、各河川ごとに洪水警報の危険度分布が計算されています。そして、地図上河川の流路 に沿って、危険度を 5段 階で色分け表示されます(図6)。
ただ、同時に改善する予定だった大雨特別警報(危険度が著しく高くなっているときに発表)の改善については、梅雨前線および台風3号の雨による大雨の対応に万全を期すため、実施が2日遅れ、7月6日に延期されました。
もっと周知期間を
最近の気象庁の新しい情報の発表で気になることがあります。
周知期間がとても短いことです。昔の話となりますが、降水短時間予報が始まるとき、業務実験と称して数年間部外に発表してPRをし、防災機関や報道機関等から意見を集めて修正をしてから正式に発表を開始しました。
どんなに良い情報でも、利用者が十分に利用して、はじめて価値がでます。
利用者へのPRをもっと早くから、もっと大規模に行うべきではないでしょうか。
今年の出水期からの新しい情報は、画期的なものだけに、そう痛感します。