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台風と前線の危険な組合せ

饒村曜気象予報士
ゲリラ豪雨(ペイレスイメージズ/アフロ)

台風イメージは9月だが

台風の発生数、上陸数を月別に見ると、ともに8月が一番多く、次いで9月です(表)。

表 台風の平年と最近の月別発生数(上陸数)
表 台風の平年と最近の月別発生数(上陸数)

しかし、台風というと9月をイメージします。

これは、台風が秋雨前線を刺激して大災害となることが多いので、印象に強く残るからです。昔から、気象庁の予報の現場で言われている「台風と前線は危険な組合せ」です。

7月は9月ほど台風は接近してきませんが、接近してきた場合は、梅雨前線を刺激して大雨になることがあります。

台風と前線は危険な組合せであるということは9月と同じです。

台風3号が東シナ海を北上

現在、台風3号が南西諸島南部を通過し、東シナ海を北上中です。

図1 予想天気図(4日9時の予想)
図1 予想天気図(4日9時の予想)

梅雨前線は北陸地方に停滞しており、この梅雨前線に向かって南から暖かくて湿った空気が流入し、北陸などを中心に大雨となっていますが、台風が梅雨前線にゆっくり近づいています。

今後、ますます梅雨前線は活発になり、大雨が降って大きな災害の恐れがあります。

台風の強さには関係がありません。

台風3号のように、勢力が強くない台風でも、動きが遅い場合は、降雨時間が長くなりますので、記録的な大雨が降ることがあります(図1)。

大雨警報を発表する可能性は3日間続く

気象庁は、今年の出水期から(具体的には5月17日から)の新しい防災気象情報として、警報級の大雨が「高」または「中」の時間帯の情報などを提供しています。

ここで、「高」は、警報を発表中、又は、警報を発表するような現象発生の可能性が高い状況です。「中」は、「高」ほど可能性は高くありませんが、警報級の現象となりうることを表しています。

「警報級の可能性」は、数日先までの警報級の現象になる可能性を提供するもので、雨、雪、風、波についての発表です。毎日5時、11時、17時におよび状況が変化した時に適宜発表する「警報級の可能性・量的予報(明日まで)」と、毎日11時と17時に発表する「5日先までの警報級の可能性(明後日以降)」の2種類があります。

警報級の可能性「高」の精度

気象庁内部で行った大雨についての試行(平成28年6月~12月)では、警報級の可能性「高」は、明日の予測3047回に対し、2261回で大雨警報が発表(適中率74%)と、かなりの精度でした。「高」と発表の場合は、警戒の準備が必要です。

勿論、「高」と予測しないのに大雨警報が発表となったケースも多く、試行期間では4日先、5日先の予測回数は0でした。

ただ、今後は、台風の強度予報が現在の3日先から5日先への延長が検討されており、「高」の発表回数が増えることと思います。

数日間は警報級の大雨に注意

警報級の可能性によると、台風3号の動きが遅いために、北陸地方を中心に、台風と前線の危険な関係は6日まで続きそうです(図2)。

図2 新潟県下越と長野県北部の警報級の可能性
図2 新潟県下越と長野県北部の警報級の可能性

警報級の可能性「中」が数日続くという情報ですが、まだ始まったばかりの情報で限界もあります。

「台風と前線は危険な組み合わせ」ということを意識し、最大限の警戒が必要です。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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