沖縄県と奄美地方で警報級の大雨が「高」の時間帯 今年の出水期からの新しい防災気象情報
警報級の大雨の可能性
沖縄県と鹿児島県奄美地方で警報級の大雨の可能性がある時間帯が示されています。
これは、今年5月17日から気象庁が始めた新しい気象情報で、奄美地方では21日まで「高」が続き、沖縄本島中南部は20日まで「高」、21日は「中」という大雨の可能性があるという情報です(図1、図2)。
つまり、この時間帯は、大雨警報を発表している可能性が非常に高く、警戒が必要な時間帯を意味しています。
また、昨日15時58分に発表された奄美地方・十島村(奄美大島と屋久島の中間に位置する7島を中心とした村)に対しての大雨・洪水・強風・波浪・雷注意報(6月19日)では、20日の明け方までには1時間に70ミリの豪雨が予想され、大雨警報・洪水警報に切り替える可能性が高いことを発表しています(図3)。
このように、具体的に大雨警報・洪水警報の発表を前もって予告するということは、これまでありませんでした。
深夜に大雨警報が発表になっても、住民避難が遅れて大災害になったという事例が少なくありませんが、このようなタイミングでの情報は、避難準備が前もってでき、防災効果が高いと期待されています。
6月20日8時追記
奄美地方十島村では、6月20日7時25分に大雨警報(浸水害)、洪水警報が発表となりました(雷・強風・波浪注意報は継続)。
ここまで追記
平成29年度出水期からの防災気象情報
気象庁では、平成27年7月の交通政策審議会気象分科会提言「「新たなステージに」に対応した防災気象情報と観測・予測技術のあり方」を受け、平成29年5月17日から「危険度を色分けした時系列」と「警報級の可能性」についての情報提供を始めました。
このうち、「危険度を色分けした時系列」は、今後予想される雨量等や危険度の推移を時系列で提供するもので、警報級と注意報級が色分けされています。
また、「警報級の可能性」は、数日先までの警報級の現象になる可能性を提供するもので、雨、雪、風、波についての発表です。毎日5時、11時、17時におよび状況が変化した時に適宜発表する「警報級の可能性・量的予報(明日まで)」と、毎日11時と17時に発表する「5日先までの警報級の可能性(明後日以降)」の2種類があります。
「高」は、警報を発表中、又は、警報を発表するような現象発生の可能性が高い状況です。「中」は、「高」ほど可能性は高くありませんが、警報級の現象となりうることを表しています。
最初の発表は小笠原諸島
気象庁が警報級の可能性についての情報を最初に発表したのは、平成29年5月23日11時33分に東京都小笠原諸島に対して大雨警報(土砂災害)が発表されたときです。
上空に寒気が入り、大気が非常に不安定になったからですが、このときは、警報級の大雨は夕方まで(12ー18時)「高」という内容でした(図4)。
小笠原諸島の父島では昨年の5月頃から、母島でも9月頃から降水量の少ない状態が続いており、ダムの貯水率が少なくなって、水不足となっていましたので、恵の雨の側面もありました。
警報級の可能性「高」の精度
気象庁内部で行った大雨についての試行(平成28年6月~12月)では、警報級の可能性「高」は、明日の予測3047回に対し、2261回で大雨警報が発表(適中率74%)と、かなりの精度でした。
「高」と発表の場合は、警戒の準備が必要です。
勿論、「高」と予測しないのに大雨警報が発表となったケースも多く、試行期間では4日先、5日先の予測回数は0でした。
ただ、今後は、台風の強度予報が現在の3日先から5日先への延長が検討されており、「高」の発表回数が増えることと思います。
また、「中」では、明日の予測12079回に対して3424回で大雨警報が発表(適中率28%)でした。適中率はやや低いのですが、見逃しを減らしています。
「高」だけでなく、「中」、特に夜間における「中」の場合も、警戒の準備が必要です。
図1~図4の出典:気象庁ホームページ
図5の出典:気象庁発表資料をもとに作図