オホーツク海と北極域の海氷(流氷) ロシアは地球温暖化で大きなメリット?
発達中の低気圧の通過で北日本は大荒れとなりました。
札幌管区気象台では、平成29年4月18日5時13分、16時41分、21時53分に「暴風と高波及び大雨に関する北海道地方気象情報」を発表していますが、いずれも、なお書きで「オホーツク海や根室海峡、太平洋では流氷の動きが激しくなるため注意してください」とあります。
今年のオホーツク海の海氷(流氷)
オホーツク海の海氷(流氷)面積は、平均をとると、11月中旬から増え始め、3月上旬に最大となります。
今冬の海氷面積は、1月までは、ほぼ平年並に増えていましたが、暖かい2月によって減り始め、3月には過去最小の水準で推移しています(図1)。
今年、海氷が平年より大きく減っているのは、オホーツク海北部とサハリンの東方沖ですが、オホーツク海南部ではちぎれた形で平年より遅くまで海氷が残っています(図2)。
これが、発達中の低気圧によって大きく動くことが予想されたため、札幌管区気象台が発表した情報の中で注意が呼びかけられたのです。
ただ、オホーツク海南部の海氷は、発達中の低気圧が持ち込んだ暖気により、今後1週間の間に、融解がさらに進むと思われます。
北極域の海氷面積
オホーツク海の海氷面積は年々減少傾向にあり、昨年は久しぶりに海氷面積が大きかったのですが、それでも平年並の大きさでした。
北極域の海氷面積も、長期的に見ると減少傾向を示しています。平均をとると、毎年、北海道の面積に相当する海氷が減っていることになります。
北極域の海氷の減少は、年最小値に顕著に現れます。
昨年のオホーツク海の海氷は平年並で推移しましたが、北極域では、統計をとり始めた昭和54年以降では、平成24年に次ぐ小さな面積でした。
オホーツク海や北極域の海氷の減少は顕著ですが、南極域の海氷は若干ですが増加傾向にあります。
気象庁では、現在、「観測データに現れた変化傾向のどこまでが、地球温暖化によるものか、数十年スケールの自然変動に対応するものかは、まだ明らかではない」という立場をとっています。
地球温暖化の影響は単純ではありません。
北極域の氷と南極域の氷の違い
コップの中にある氷水の氷が溶けても、コップの中の水の高さは変わりません。これは、コップの中の氷が全部溶けても、氷の水面下部分の体積と同じ体積の水になるだけだからです。
北極域に目を移すと、氷のほとんどは海に浮いていますので、溶けたとしても海水面はたいして上昇しません。しかし、南極大陸上の氷は陸上にあるので、溶けると海水面が大きく上昇します。
また、地球温暖化が進んで、海水温が現在よりも高くなると海水は膨張し、これによって海水面が大きく上昇することになります。
海水面が上昇すると、珊瑚礁でできた高度が低い島国では、生活そのものが奪われる深刻な事態となりますし、日本も、低い土地に多くの人が住んでいます。このため、低い土地が水没したり、高潮被害が大きくなることが懸念されていますので、陸海空で地球温暖化の監視活動が強化されています。
地球温暖化で利益がでる国
地球温暖化の問題がマスコミ等で取り上げられるとき、「海水面が上昇するので水没してしまう島々」など、深刻な状態になって非常に困るデメリットが強調されます。
これは、これで正しいのですが、地球温暖化によって非常に困る地域だけではありません。
住みやすくなるなど、メリットを受ける地域もあります。
例えば、冷帯で気温が低いために穀物ができない地域では、温暖化によって穀物がとれるようになりますし、温暖化により雨が極端に少なかった地方で降水が増え、農作物がとれるようになることもあるでしょう。
また、オホーツク海の海氷が少なければ、オホーツク海を自由に航行し、経済活動を行う期間が長くなります。これに加え、北極海の海氷が溶けてくれれば、北極海の海底に眠る地下資源の発掘が可能となり、加えてヨーロッパと極東を最短で結ぶ北極海航路(図4)が可能となります。夏だけでも北極海航路が開通すれば、日本とヨーロッパを往復する時間と燃料が節約でき、しかも政情が不安定な中東や南シナ海を通らなくてすみます。実現が早いかもしれません。
北極海の海氷は、地球温暖化によってカナダやアラスカ、グリーンランドよりの海域より先に、ロシアよりの海域から減少すると考えられています。このため、北極海航路が最初に可能となるのは、ロシア沿岸です。
穀物の取れない冷帯を多くかかえ、地下資源の多い北極海に面しているロシアは、地球温暖化のメリットの可能性が一番大きいということができます。
地球温暖化により、デメリットがある国と、メリットを享受できない国が生まれます。
ただ、ロシアのように地球温暖化のメリットが考えられる国でも、変化が急であれば、そのメリットを受ける対応がとれません。
地球温暖化は、国際協調が円滑であったとしても、私達が対応できる範囲での緩やかな地球温暖化でないと、地球上に住みやすい地域はなくなってしまいます。
図1~図3の出典:気象庁ホームページ。
図4の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100、オーム社。