特別警報がない洪水と、警報・特別警報がない雪崩
気象庁では、災害の起こるおそれのあるとき「注意報」を、重大な災害のおそれがあるときは「警報」を、重大な災害の起こるおそれが著しく大きい時には「特別警報」を発表しています。
特別警報の種類
特別警報は、平成25年8月30日から始まった新しいものです。
特別警報には、気象に関するもの、地震に関するもの、津波に関するもの、火山に関するものがあります。
このうち、気象に関するものは、
大雨特別警報(土砂災害)、
大雨特別警報(浸水害)、
暴風特別警報、
高潮特別警報、
波浪特別警報、
暴風雪特別警報、
大雪特別警報 の7種類があります(図1)。
図中のカッコ内の過去の大災害と同じレベルで特別警報が発表されます。
そして、特別警報には至らないものの災害のおそれがあるときには、特別警報に対応している警報、注意報が発表されます。
特別警報や警報、注意報の発表基準
特別警報や警報、注意報の発表基準は、気象庁と地方自治体での協議が行われ、地域防災計画の実績や実態等をもとに決められます。
気象庁では、予想される被害の大きさに応じて決められている基準に基づいて気象を監視・予報して気象情報や注意報、警報、特別警報が発表しています。
洪水についての特別警報はない
洪水については、洪水警報、洪水注意報がありますが、洪水特別警報はありません。
これは、気象庁が発表する一般の利用を目的とした洪水警報、洪水注意報とは別に、気象庁と河川管理者が共同して、水防活動のために、河川の名前がついている洪水予報(指定河川洪水予報)をしているからです。
一級河川については、気象庁と一級河川の管理者である国土交通省と、
二級河川については、気象庁と二級河川の管理者である都道府県が共同で行うものです。
洪水予報のレベルは、次のようになっています。
レベル 表題 状態・水位の名称
レベル5 はん濫発生情報 はん濫発生
レベル4 はん濫危険情報 はん濫危険水位
レベル3 はん濫警戒情報 避難判断水位
レベル2 はん濫注意情報 はん濫注意水位
レベル1 なし 水防団待機水位
警報を持たない注意報
雪崩、雷、濃霧、乾燥、着氷、着雪、融雪、霜、低温については、注意報がありますが、警報がありません。重大な災害の起こるおそれがないとはいえ、災害がおきる可能性があるので、注意が必要な現象です。
このうち、雪崩と雷は、注意報が発表となる地域に比べ、実際に災害の危険がある範囲が狭いという特徴があります。濃霧や乾燥など、ほかの注意報は、発表となる地域のほとんどで災害の危険があります。
雷は発達した積乱雲で発生しますので、雷の可能性が高い場所はどこかということについては、気象レーダである程度把握することができます。
しかし、雪崩の可能性の高い場所はどこかということについては、現地で実際に観測しないと、あるいは、新雪雪崩では現地で観測しても把握できないことがあります。
雪崩災害が発生すると、「雪崩注意報が発表されているときの行動は問題」とよく言われますが、雪崩注意報は雪が積もれば発表されるくらい、長期間、広い範囲に対する注意報ですので、雪崩注意報の発表中でも行動をとることが起こりえます。現在でも、図2のように多くの道県の中の一部の市町村で雪崩注意報が発表中です。
気象庁では、雪崩注意報を発表して注意を呼びかけていますが、あくまで、一般的な注意喚起です。このため、
。逆に、長いために油断しやすく、こまめにチェックが必要な注意報です。
雪崩注意報は、雪崩の危険があるので、それを承知しながら危険をさけつつ行動してくださいという注意報ともいえるでしょう。
図1の出展:饒村曜(2014)、天気と気象100、オーム社。