放射冷却で寒い朝、59年前は全国的に大霜害
日本付近を低気圧と移動性高気圧が交互に通過し、移変りの天気の中で気温が段階的に高くなってきました。
放射冷却と遅霜
春先に移動性高気圧に覆われると、晴れて風が弱くなり、夜間は地面からの熱がどんどん大気中に逃げてゆくため、地表面の熱が急速に失われ、放射冷却がおきます。
通常の夜間は、雲があり空気中の水蒸気が気温は急激には下がりませんが、雲がなく、空気中の水蒸気が少ないと、地表付近の気温が下がります。
放射冷却は、風が強い場合には、たとえ放射冷却が起こっても上空の暖かい空気との混合が起きますので、放射冷却が弱くなります(図1)。
春先に放射冷却で地表付近の気温が下がると霜が降りるときがあり、これを「遅霜」といいます。
冬は発表しない霜注意報
霜は、氷点下(0度以下)の物体の表面に、大気中の水蒸気が昇華し、氷の結晶となって堆積したものです。気温は地表から約1.5メートルの高さで測定しますので、放射冷却等で冷える場合は、気温が3~4度以下であれは、地表面付近では氷点下となって霜がおります。
植物が活動中に霜がつくと、霜が植物を直接冷やして中の水分が凍って養分が行き渡らなくなるなどで枯れるなどの被害がでます。
しかし、冬に入って活動を停止した植物は、寒さに対する備えができていますので、霜による被害は、植物が生育を始めたあとの霜(遅霜)か、植物が活動を中止する前の霜(早霜)のときにおきます。
気象庁の霜注意報は、農業関係期間等と調整をし、その土地の農作物に霜が降りる期間だけの発表です。霜がいつも降りる冬には、霜注意報を発表しません(表1)。
つまり、霜注意報は季節限定の注意報です。
寒い朝
東日本から西日本は、移動性高気圧に覆われ、晴れている地方では放射冷却によって気温が下がり、寒い朝となっています(図2)。
このため、東北南部から東日本、西日本の多くの地方で霜注意報が発表中です(図3)。
大掛かりな扇風機がついている茶畑が少なくありません。この扇風機は、放射冷却で冷えた地表面付近の空気と周辺のそれほど冷えていない空気を攪拌するもので、霜注意報が発表されると作動し、霜の発生を防ぎます。
昭和33年の大霜害
今から59年前、昭和33年(1958年)の3月末は、移動性高気圧に覆われて強い放射冷却がおき、東京でも氷点下となるほど気温が低下しています(図4、表2)。
このため、全国的に大霜害が発生しました。
図1の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100、オーム社。