難しかった今年の台風進路予報
気象庁から今年の台風進路予報誤差の速報が発表されました。
スーパーコンピュータの飛躍的な性能アップに加え、気象衛星からの詳細なデータを取り込む技術が進んだため、台風の進路予報誤差は、年々小さくなっていますが、過去最小だった昨年よりは少し大きくなっています。
平成28年の台風進路予報
平成28年の台風の発生数は、今のところ、平年並の25個(平年値25.6個)ですが、上陸数は平年の2倍の6個(平年値2.7個)となっています。
上陸数の6個は、台風の統計をとりはじめた昭和26年以降、平成16年の10個に続く、2位タイの記録です。
台風には年ごとのくせがあり、進路予報が難しい年とそれほどでもない年がありますので、進路予報誤差は変動していますが、長期的にみると、確実に小さくなっています。
昨年は、24時間先(明日)、48時間先(明後日)、3日先、4日先、5日先の台風進路予報の全てが、これまでで最も高い精度となりましたが、これに比べれば、今年はやや大きな値となっています(図1)。
気象庁によれば、海上を一定方向に長く移動する比較的予報しやすい台風が、今年は昨年と比べて少なかったことが要因として考えられるとのことです。日本の南海上で大きく回転した台風10号(図2)や、進路予報がむつかしいために予報円が非常に大きかった台風16号(図3)など、今年は進路予報が難しかった台風が多かった年といえそうです。
年々精度が向上している台風の進路予報
台風の予報技術は進歩を続け、予報円表示が始まった昭和57年頃には、24時間予報の平均誤差が200キロメートル以上ありましたが、現在は約100kmと半減しています。今年の1日先の進路予報誤差は80キロメートルでした。
このような予報技術の進歩によって長期間の予報が実用的となり、昭和62年からは48時間先まで、平成9年からは72時間先(3日先)までの予報が始まっています。
さらに、平成11年からは4日先と5日先までの予報が始まっています。
そして、これらは、長い期間の予報ほど精度向上が著しく、21世紀が始まった頃の3日先の台風予報の平均誤差は約400キロメートルでしたが、近年は4日先でも、400キロメートルを下回っており、昨年は、5日先でも368キロメートルと下回っています。
このように5日先でも400キロメートルを下回ってくると、一週間先の台風予報が実用化する可能性がでてきたのではないかと思います。ただ、今年は467キロメートルでした。
私たちは一週間単位で生活していますので、1週間先の台風予報が実用化すれば、その利便性はかなりのものがありますが、今年のような年がありますので、まだまだ技術開発が必要と思います。
台風の進路予報誤差と予報円の大きさの関係
台風の予報誤差には,進行方向と進行速度の2種類がありますが、多くの例で調査すると,両方の誤差がはぼ等しく、予報位置を中心とした分布となっています。
精度の良い予報になればなるほど予報位置の回りに集中した分布となり、精度の悪い予報ほど周辺部にも広がっている分布となります。
予報円は、進路予報の精度を簡単に表すため、一定の割合が含まれる円の大小で表わす方法です。そして、予報誤差の平均が小さくなっているので、予報円が昔に比べてかなり小さくなっています。
将来、進路予報精度がもっと向上すれば、予報円を省略し、予報円の中心位置のみの表示になるかもしれません。