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雲仙普賢岳の大火砕流から25年 その2年後の4~6月に大きな土石流被害

饒村曜気象予報士
夕暮れの雲仙岳(写真:アフロ)

今から25年前の平成3年6月3日に長崎県の雲仙普賢岳で大火砕流が発生し、43名が亡くなっています。その2年後の4~6月には、土石流が頻発し、大きな被害がでています。

大きな地震や火山噴火後は二次災害の危険性が高まりますが、その年だけでなく、災害から2~3年後も警戒が必要です。

雲仙普賢岳の噴火

長崎県の雲仙普賢岳は、平成2年(1990年)1月17日に198年ぶりに噴火しました。

まもなく活動は低下しましたが、平成3年2月12日には再び噴火が始まり、5月20日にはドーム状の溶岩が頂上付近に出現し、成長を続けました(図1)。

図1 仁田峠から見た雲仙普賢岳の溶岩ドームの成長
図1 仁田峠から見た雲仙普賢岳の溶岩ドームの成長

このため、平成3年5月26日には火砕流に対する避難勧告が出され、警戒が強化されました。災害報道が加熱し、一部のマスコミが避難住民の家に無断であがって電話などを使用したことなどから、住民が自警団をつくって避難勧告地域に戻って見回りを始めた6月3日、大砕流が発生し、住民やマスコミ関係者など43名が亡くなりました。

雲仙普賢岳噴火後、警戒区域がすぐに設定され、以後しだいに警戒区域は拡大して、最大時の9月には対象人口が1万1000人となっています。

また、水無川の流域には噴出した大量の火山灰が堆積し、たびたび土石流が発生しています。とくに、大火砕流から2年後の4~6月には大きな被害が発生しました(表)。

表 雲仙普賢岳噴火における火砕流による被害と土石流等の被害
表 雲仙普賢岳噴火における火砕流による被害と土石流等の被害

二次災害は2~3年後が一番危険

大きな災害が発生してから2~3年後は、まだまだ二次災害が発生する可能性があります。むしろ、災害に対する警戒心が薄れ、災害体験の風化が進むために二次災害の危険性が高まります。

もっと時間が経過すれば、その間に地盤が落ち着き、防災対策が進捗しますので、二次災害の危険性がなくなってきます。このため、特に2~3年後は二次災害に警戒が必要です。

火山の監視

日本には110もの活火山がありますが、気象庁ではこれらの活火山について活動状況を監視し、5段階の噴火警戒レベルを設定し、噴火予報を発表しています(図2)。

図2 火山の常時監視システム
図2 火山の常時監視システム

巨大地震によって地下のマグマだまりが揺さぶられたり、地殻変動がおきることで火山性の地震が増えるとされています。また、巨大地震後に火山活動が活発になることは珍しくありませんので、気象庁では巨大地震のあとは火山活動を特に注視します。

東北地方太平洋沖地震では、地震後に日光白根山、乗鞍岳、富士山、阿蘇山など、関東から九州にかけての13の活火山における地震活動が増えていますが、噴火の前兆となる地殻変動や火山性微動は観測されませんでした。そして、そのあと、地震活動はもとに戻っています。

今年4月に熊本地震が発生し、阿蘇山はどうなるかということを気にしている人も多いかと思います。

気象庁では、熊本地震後も、引き続き阿蘇山などの火山活動についての監視を行っていますが、特段の変化がでていません。

阿蘇山噴火の心配より、熊本地震で大きく揺れた地域の土砂災害に厳重な警戒が必要です。

そして、その警戒は今年の雨の季節だけでなく、来年の雨の季節についても、再来年の雨の季節についても必要です。

図表の出典:饒村曜(2015)、特別警報と自然災害がわかる本、オーム社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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