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上空のみの低気圧による大気不安定は続く傾向がある

饒村曜気象予報士
入道雲(写真:アフロ)

地上天気図では、移動性高気圧がゆっくり西日本を通過中ですが、上空約5500メートルの天気図では日本海西部に低気圧があって、ゆっくり東に進んでいます。

寒冷渦

地上天気図で低気圧がはっきりしていなくても、上空の天気図でははっきりした低気圧があり、気象衛星では雲が渦を巻いているように見えることがあります。

このような低気圧は、寒気を伴っており、寒冷低気圧、あるいは、寒冷渦と言います。

しばしば天気予報で使われる「上空に寒気を伴った低気圧」のことです。

寒冷渦では、上空に寒気か入り込むため、大気が不安定になります。

この際、地表付近が日射によって強く熱されたり、湿った暖気が流入してくると、一層大気は不安定になり積乱雲が発達し、落雷や降ひょう、突風、短時間の強い雨などの激しい現象をもたらすことがあります。

一般的には、寒冷渦の南東側では、下層に暖気が入り易いので、この傾向が顕著です。

雷三日

寒冷渦は、上空の強い流れがありました大きく蛇行し、切り離された場所にできますので、寒冷渦を動かす上空の風が弱く、動きが遅いという特長があります。

寒冷渦が日本を通過するのに2から3日かかりますので、昔から言われている、雷は三日続くという「雷三日」には意味があったのです。

移動性高気圧に覆われていても

西日本は移動性高気圧に覆われていますが、上空にはマイナス30度以下の寒気を伴った寒冷渦がありますので、単純に晴れとは言えません。

昨日は、寒冷渦の南東側にあった九州北部では大気が不安定となって局地的に雷雲が発生し、落雷や突風、急激な強い雨のおそれがありました。

寒冷渦は、ゆっくり東進していますので、今日は中国地方と近畿地方、および関東甲信地方で大気が不安定となって局地的に激しい現象が起きる可能性があります。

気象情報に注意が必要です。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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