山火事前線は桜前線と同じ頃、同じように移動
桜前線は、桜の開花が同じ地点を結んで地図上に表したものです。桜前線は、3月下旬に九州南部~関東南部の平野部から北上、あるいは、麓から山頂に向かってすすみ、5月のはじめに北海道に上陸します。
桜前線と同じ頃に、同じように移動するのが山火事前線です。
山火事前線
山火事前線は、林野火災(山火事)が多発する地域を結んだ線のことです。
桜前線と同じ頃に、同じように南から北へ、平地から山へと移動します。
これは、日本の山火事は、落雷などの自然現象による林野火災はほとんどなく、大部分が人間の不注意によるものであるからです。そして、春に多く発生しています。
春は、乾燥した日が続き、枯れ木や下草が乾いてくることに加え、雪が解けたことで山菜取りやハイキングなどで多くの人が山に入り始めます。また、草本の新芽が出ない早春には野山の枯れ草を焼く山焼きもあります。新たに出る若草のための肥料とする効果や害虫を焼き殺す効果があるために行うものです。
このように、春は野山で火を扱うことが増えることに加え、強風やフェーン現象、乾燥した日々が続くなど、いったん山火事が発生すると大規模になりやすい季節でもあります。
このため、消防庁では林野庁と共同で全国山火事予防運動を3月1日~7日に行っています。
大規模な山火事の例
平成21年は、3月から5月にかけて林野火災が全国各地で発生しています。
大分県由布市では、3月17日の野焼きで急激に火が広がって4名が亡くなるなどの事故が発生しています。このときは、移動性高気圧に覆われ、乾燥注意報が発表されていました(図)。
また、同年4月には宮城県や山梨県で大規模な火災が発生しました。
春先は山林火災で大きな被害が起きやすく、戦後最悪の山林火災の一つで、18名の消防士が亡くなった広島県呉市の林野火災が起きたのも昭和46年4月27日のことです。
火災気象通報
気象庁では、市町村長が発令する火災警報の基礎資料として、気象の状況が火災の予防上危険と認められるときに、都道府県知事に対して火災気象通報を行っています。
火災気象通報を行う基準は、その地域ごとに、実効湿度、最小湿度、風速により決められています。
実効湿度は、木材(生木ではない例えば柱)の乾燥度を表するもので、当日の平均湿度と前日の用いて計算されます。平均湿度が低い日が続く場合は、実効湿度がどんどん低くなります。例えば、前日の実効湿度が50%、当日の平均湿度が0%なら、実効湿度は35%となり、翌日も平均湿度が0%なら実効湿度は約25%となります。
当日の実効湿度=0.3×(当日の平均湿度)+0.7×(前日の実効湿度)
桜の開花はニュースでよく報じられますので、このニュースが流れたら、山火事の危険性が高くなっていると、山に入るときには、今一度の再確認が必要です。