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【世界遺産】 ドイツ北部の最も古い港町ブレーメンからブレーマーハーフェンへ 3/3

シュピッツナーゲル典子在独ジャーナリスト
ヴェーザー川港湾にて

コロナ禍2年目の冬到来。この時期の風物詩クリスマスマーケットは、例年以上に輝きがまぶしいこの頃です。今回は、世界遺産とメルヘン街道終点として知られる街ブレーメンからブレーマーハーフェンへ向かいました。

州都ブレーメンからおよそ50km北部の北海に注ぐウェーザー川河口にある港町ブレーマーハーフェンは、北海への玄関口。欧州最大のコンテナターミナルがあり、近年人気の高い豪華客船寄港地としても知られます。

ブレーメン中央駅から電車で約40分、ブレーマーハーフェン駅に到着です。港周辺を散策しながら、ドイツ船舶博物館、クリマハウス、ドイツ移民博物館を巡りました。(写真はすべて筆者撮影)

ドイツ船舶博物館 

博物館前にて
博物館前にて

館内に入ってすぐ、ホールに展示されている巨大な難破船が目に入ります。同館のハイライト、ブレーマーコッゲ号です。中世の貿易船として世界で最も保存状態のよい長さ20m以上、幅8m弱の堂々たる木製の船です。

コッゲ号 
コッゲ号 

1962年、北海へ注ぐヴェーザー川港湾区域で偶然発見されたこの遺物は、ハンザ同盟時代の貨物船であることが判明し、国際的なセンセーションを巻き起こしました。そしてコッゲ号の発見が同館の建設に繋がったそうです。

3階からコッゲ号内部を見学
3階からコッゲ号内部を見学

600年もの長い間水中に沈んでいた船の各部分を精巧に引き揚げ、保存するのは困難を極めた作業で、難破船は発見から約40年後(2000年)に一般公開されることになりました。

展示では、1380年に沈没した船の船内生活、建造、今日の文化について詳しく知ることができます。

館内ではハンザ同盟の最盛期、中世の海運、船上生活、海賊との戦いなど幅広く紹介していますが、一方でコッゲ号にはいまだ多くの疑問が残っているそうです。

3階展示フロアにて
3階展示フロアにて

中世の船はどのように造られ、どのような運命をたどったのか。ハンザ同盟の商人たちの船は、北大西洋をも航行したのだろうか、それとも沿岸にとどまったのだろうかなど、コッゲ号は今もエキサイティングな研究対象となっています。

これらの研究は、ライプニッツ協会人文科学チームの研究者が調査を続けています。人間と海の関係は、どのような生態学的、経済的、技術的、社会的状況に影響を受けてきたのか。さまざまな分野の問題に取り組んでいるそうです。

気候について考えるクリマハウス

カメラに収まりきらないほど大型楕円形のクリマハウス外観
カメラに収まりきらないほど大型楕円形のクリマハウス外観

港湾でひときわ目立つ建物ブレーマーハーフェン気候館(以下クリマハウス)は、気候をテーマに特化した体験型施設です。

2009年開館のクリマハウス入口にて
2009年開館のクリマハウス入口にて

気候、気候変動、気象に関する知識と経験のユニークな世界であり、気候体験のパイオニア的ミュージアムです。経度8度に沿って世界を旅し、地球の気候帯をエキサイティングで印象的な方法で体験することができます。

ブレーマーハーフェンから旅が始まります
ブレーマーハーフェンから旅が始まります

南極ルームにて
南極ルームにて

5つの大陸と9つの場所を巡る旅では、汗をかいたり、凍えたり、驚いたり、笑ったり、そして何よりも、世界中の人々と出会い、彼らの日常生活や、気候が彼らの生活にどのような影響を与えているのかをビデオや展示で教えてくれます。

サモアにて
サモアにて

館内は、西アフリカのサハラ砂漠地帯やサモア、南極などの気候を体感する「旅」、大気中の要素と気象の関係や気候の歴史を学ぶ「概説」、環境会議や二酸化炭素ターミナルで私たちが地球のために今出来る事を考える「新たな道」、地球誕生の歴史、人類が引き起こした気候変動や今後の行方を紐解く「展望」の4つの展示ゾーンをはじめ、古代、水族館、お天気スタジオを提供し、地球上の気候と変化をわかりやすく説明しています。

ドイツ移民博物館

移民博物館全景
移民博物館全景

1830年以降、ブレーマーハーフェンはヨーロッパ大陸で最大の移民港として発展し、720万人以上の人々が世界の別の場所で新しい生活を始めるために船に乗り込みました。

出国の様子
出国の様子

その歴史を辿る体験型ミュージアム「ドイツ移民博物館」は、2005年にオープン。館内の展示は、出国時の様子と新天地に到着した入国後の様子の二つをテーマとしています。

ここでは入場券が乗車券となっています。自分も移民の一人となり、乗船するところから始まります。

狭い部屋で談話する乗客
狭い部屋で談話する乗客

第一部では新大陸でのより良い生活を求めてヨーロッパ各地から集まった移民の足跡をたどります。

足を踏み入れると、そこは19世紀後半の乗船待合室。そして、待合室を出ると、そこは埠頭でした。ちなみに当時のドイツ人の主な移住先は、米国、カナダ、アルゼンチン、ブラジル、オーストラリアだったそうです。

1等室客用のレストランにて
1等室客用のレストランにて

ブレーマーハーフェンの埠頭からエリス島を経て、19世紀から20世紀にかけてニューヨークの真ん中で典型的な移民が暮らしていた場所まで、感動的な歴史の旅を通して、最も多様な移民たちの実話を知ることができます。

いよいよ米国に到着です
いよいよ米国に到着です

第二部では、移民が人々や社会をどのように変えていくのかを体験できます。例えば、アメリカでの入国審査などを追体験できる展示も見ごたえがあります。社会生活の場で、移住をめぐる対立を肌で感じることもできます。

移民情報コーナーにて
移民情報コーナーにて

300年間にわたるドイツ人の海外移住に関する情報が集積されているコーナーでは、実際の移住者の夢や希望、悩みを、彼ら自身のレポートや思い出の品を通して生き生きと伝えています。

入国者を迎える人達の様子
入国者を迎える人達の様子

入場券と一緒に配布されたカードには、一人の移民ドイツ人女性の名前がありました。彼女の背景を情報コーナーで探ってみました。まるで自分が彼女の身内になったかのようで、興味津々。

博物館訪問客としてだけでなく、自分が移民船舶号に乗り、出国の体験をすることができたこの博物館を後にしながら、改めて移民、そして今大きな問題となっている難民の状況を考えさせられた瞬間でした。

港町のクリスマスマーケット

ブレーマーハーフェンのクリスマス・ワールドでは毎年、街の中心部が雰囲気のあるクリスマスの世界に変わり、たくさんのアトラクションが登場します。

今年の目玉は、市内中心部テオドール・ホイス・プラッツに設置された高さ30mを超える大観覧車で、光り輝く市街地を一望することができることです。

マーケットの一角にはドイツの子供達に人気のある童話をテーマにした展示小屋がありました。「ヘンゼルとグレーテル」や「マックスとモリッツ」「カエルの王様」などが実際に登場し、子供達は毎日おとぎ話を聞くことができるのです。

午前中は雲一つない晴天だったのですが、夕方から大雨となりました。しばし待っても雨はひどくなるばかり。クリスマスマーケットを早めに引き上げました。

ご存知の方も多いかと思いますが、クリスマスマーケットはドイツが発祥の地です。来年は中止されることなく、各地で開催されることを祈るばかりです。 

在独ジャーナリスト

ビジネス、社会・医療・教育・書籍業界・文化や旅をテーマに欧州の情報を発信中。TV 番組制作や独市場調査のリサーチ・コーディネート、展覧会や都市計画視察の企画及び通訳を手がける。ドイツ文化事典(丸善出版)国際ジャーナリスト連盟会員

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