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世界遺産とモダンな湾岸都市「ハンブルク」へ 2024年必見スポットを一足先にご紹介

シュピッツナーゲル典子在独ジャーナリスト
赤レンガ倉庫街にて (c)norikospitznagel

ドイツ北部の湾岸都市ハンブルクの赤レンガ倉庫街とチリハウスを含むコントーアハウス地区は2015年、世界遺産に登録されました。街の歴史ある建造物を保護しつつ、一方でエルベ川沿いの新しい都市空間「ハーフェンシティ」の開発が進んでいます。

地元のニーズとグローバルな要求を等しく組み合わせた野心的な総合都市開発として、ハンブルクはヨーロッパを超えた新しい基準を打ち立てようとしています。

今回は、ハーフェンシテイ、エルプフィルハーモニーコンサートホールとクルーズパレード、コンサート会場としても人気のサッカースタジアムHSVなど、何度訪問しても新しい発見のある必見スポットをご紹介します。(画像はすべて筆者撮影)

なおハンブルクの魅力は以前も紹介しました。参考までにご覧ください。

欧州最大規模のウォーターフロント地域「ハーフェンシティ」へ

ハンブルクはヨーロッパで最も重要な港のひとつですが、最も近い海岸から110キロも離れているのは不思議です。ですが、エルベ川から北海までの区間は非常に広く、深いため、大型船も入港できます。ハンザ同盟への加盟が、欧州で最も大きな港のひとつへと成長するきっかけとなりました。

その恵まれた立地のおかげで、今日でも港は街の経済の原動力であり、コンテナ船やクルーズ船がその主役となっています。

赤レンガ倉庫街から南東に位置するエルベ川沿いの「ハーフェンシティ」へ向かいました。157ヘクタールという広大な敷地に、労働、生活、教育、文化、レジャー、観光、小売などさまざまな用途を組み合わせたウォーターフロント地域として注目を集めている「新しいダウンタウン」です。2003年より建設が始まり、完成は2025年の予定です。

生活と仕事の融合を目指すハーフェンシティは、オフィスタワーと住宅、伝統的な船着き場とクルーズターミナル、大学、エルプフィルハーモニーコンサートホールなど、様々な用途を組み合わせた、海洋的なセンスを備えた活気ある都市として誕生しました。

ハーフェンシティは、ウォーターフロントにおける他の多くの大規模都市開発プロジェクトとは異なっています。

特に中心部という立地条件と、常に向上し続ける高い品質基準に加え、特別な都市コンセプト、エコロジカルな持続可能性の大幅な向上、質の高い公共空間と経済的持続可能性の要素に支えられた集中的な社会的ミックスなどが特徴で、海洋的なセンスを備えた活気ある都市の誕生です。

土地と水との密接な相互作用もユニークな点ですが、気になるのは水害です。ハーフェンシティは水が遮断されていない代わりにエリア全体が海抜8~9メートルまで高くなっているので、洪水の危険性もなく安心です。

このコンセプトはかつての港と工業地帯に新たな特徴的な地形を与え、水へのアクセスと典型的な港湾環境を維持すると同時に、洪水防止を確保しています。

エルプフィルハーモニー

ハーフェンシティ最西端に建つ「エルプフィルハーモニー(通称エルフィー)」は、スイスの建築家「ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron)」によって設計され、2017年1月11日にオープンしました。大小2つのコンサートホール、スタジオ、ウェスティンホテル、コンドミニアム(住居)が入る26階建ての複合施設です。

8階の展望テラス「プラザ」から眺望を楽しむ人たちが中ほどに見えます
8階の展望テラス「プラザ」から眺望を楽しむ人たちが中ほどに見えます

建物は、上部と下部に完全に分離したデザインを採用しているのが特徴です。波をイメージし曲面ガラスを駆使した上部のモダンデザインと下部の赤レンガ外壁ファサードの対比が印象的です。

ちなみに建物8階までの下部は、1963~1966年に建設され茶葉やコーヒーなどの貿易品貯蔵に使われたカイシュパイヒャー A(KAISPEICHER A)という古いレンガ作りの倉庫外壁のみをそのまま活かして使っています。

建物へのメイン・アクセスは、長さ80メートルの少しカーブしたエスカレーターと、短い直線のエスカレーターで形成されており、これらのエスカレーターは地上階と、かつてのカイスパイヒャーAの屋根の高さにある展望テラス「プラザ」を結んでいます。

ハーフェンシティの中心部建造物には、赤レンガが使われているのも特徴
ハーフェンシティの中心部建造物には、赤レンガが使われているのも特徴

8階に位置するプラザでは展望テラス(高さ37メートル) の外周を歩くことができます。プラザ展望テラスは無料で誰でも自由に入れますが、入場制限があり、入口では長蛇の列が続いていました。プラザから眺めるハンブルクの街並みやエルベ川に広がる港の絶景は圧巻で、待ち時間も忘れてしまうほどです。

ちなみに正式オープン前の2016年11月から毎日最大16,000人のゲストがプラザを訪問し、2019年6月には1000万人の来場者に到達したそうで、今も街の新たな観光スポットとして注目を集めています。

大ホール入口
大ホール入口

プラザからは、大小2つのコンサートホールへ階段でアクセスできます。コンサートホール内はメディア関係者でも撮影禁止でした。そのため内部の様子をお届けすることができないのが残念です。

大ホールの設計は、建築家ハンス・シャロウンによるベルリン・フィルハーモニーの「ブドウ畑建築」(1957年)に遡るそうです。大ホールは中央に少しずれて配置され、ブドウ畑のように上へ上へと連なる各階層が舞台を取り囲むように配置されています。指揮台から30メートル以上離れた席はなく、ホールの高さは25メートルだとガイドさんが教えてくれました。

2年ごとに開催のクルーズディズハンブルク

訪問時、ラッキーなことに湾岸都市ならではのイベント「ハンブルク・クルーズディズ」が開催(9月上旬)されていました。

青いイルミネーションにうっとり
青いイルミネーションにうっとり

イベントの目的は、ハンブルク港に複数のクルーズ船が寄港し、参加する船会社やクルーズ主催者は、自社の船や旅行コンセプトを紹介することだそう。イルミネーションに彩られた港での船のパレードなど、エルベ川に多くの観客を集めるハイライトとなる支援プログラムとともに開催されています。

アーティスト、ミヒャエル・バッツ氏による「ブルー・ポート」ライト・ショーは、「ブルー・ゴール」ライト・アート・プロジェクトと同様に、同イベントの期間中、港の様々な建物やオブジェを照らすハイライト。船の中から眺める花火がブルーライトとマッチして幻想的でした。

ハンブルクのクルーズ・ディズは、2008年夏に初めて開催された、この街の民族祭で、クルーズ業界のプロモーション・イベントでした。2015年以降、クルーズ業界の見本市であるシートレード・ヨーロッパとなり、2年に1度開催されます。次回は2025年9月12日から14日の開催予定です。

ザンクトパウリ・エルベ・トンネル(通称・旧エルべ・トンネル)

旧エルベ・トンネルは港湾労働者や造船所労働者の通路として建設されました
旧エルベ・トンネルは港湾労働者や造船所労働者の通路として建設されました

1911年に開通したザンクトパウリ・エルベ・トンネル・通称旧エルべ・トンネルは、港湾労働者や造船所労働者のために、ラントゥングスブリュッケンとシュタインヴェルダーを結ぶ連絡通路として建設されました。

当初は技術的な革新でしたが、1970年代に「新」エルべ・トンネルが開通し、港に新しい橋が架けられると、トンネルは観光名所となりました。サイクリストと歩行者は、全長426メートルのトンネル内を24時間無料で横断できます。旧エルベ・トンネルは2003年以来、建造物文化財として登録されています。

このトンネル内は、サイドランプの光が、アーチ型とタイル張りのトンネルに特別な雰囲気を醸し出しています。少しでも歩いて、トンネル内の様子を体感するだけでも感動するに違いありません。

大都市の地下にあるトンネルですが、大都市中心部と言えば土地を色々な形で再利用する駐車場や不足する住宅など再建アイデアが色々あると思います。ですがこのトンネルは市民の足。これまでトンネルを再建するという意見は上がっていたようですが、市民の反対で、破壊されることを逃れたのです。

旧エルベ・トンネルには徒歩、あるいはエレベーターでアクセスできます
旧エルベ・トンネルには徒歩、あるいはエレベーターでアクセスできます

必ずしも近代的で時間の短縮できる建物や道路が便利とは限りませんし、歴史あるトンネルを補修しつつ利用することは持続可能な都市づくりにつながります。

サッカー、コンサート会場として人気のスタジアム「ハンブルガーSV」へ 

HSVスタジアムにて・サッカーだけでなくコンサート会場としても人気
HSVスタジアムにて・サッカーだけでなくコンサート会場としても人気

2024年欧州サッカー選手権会場の一つがハンブルクのサッカースタジアム「ハンブルガーSV(通称HSV)」です。コンサートやその他のイベントも開催されていますので、サッカーファンでなくても、見学する価値のあるスタジアムです。

HSVのホームスタジアムは、アルトネア・フォルクス公園のバーレンフェルト地区にあります。1953年にオープンし、1998年から2000年にかけて純粋なサッカースタジアムに改築されました。

ブンデスリーガHSVで活躍した元サッカー選手ベルント・ヴェーマイヤーHSV副社長が出迎えてくれました
ブンデスリーガHSVで活躍した元サッカー選手ベルント・ヴェーマイヤーHSV副社長が出迎えてくれました

早速スタッフがルートに沿って、スタジアムの内部を案内してくれるツアーで普段は入ることができない記者会見室、メディア用コメンタリーBOX席、アウェイ用ロッカールーム、選手入場トンネルなどを見学しました。見学はオンラインで予約をすれば、イベントのない限り見学できます。

記者会見場も見学
記者会見場も見学

スタジアムの観客席57,000席のうち、立見席が10,000席、ビジネス席が3,620席、ボックス席が711席、車椅子対応席が120席あるそうです。座席のみが必要な国際試合では、立見席の下に隠れている折りたたみ席が使用され、スタジアムの収容人数は51,500人となります。

300年の歴史あるフィッシュマルクト(魚市場)へ

滞在最後の日曜日の朝、暗闇の中、思い切ってホテルからタクシーでフィッシュマルクトへ行ってみました。1703年以来、あらゆるものがここで取引されたそうです。

この市場は、伝説的な存在。ハンブルクで日曜日を過ごすなら是非行きたい必見スポット。毎週日曜日には7万人もの観光客が訪れているそうです。

早朝5時(冬季7時)から始まり9時30分までには終わってしまうので、少し早起きする必要はありますが、行く価値のある場所です。

ここでは果物、野菜、植物が魚と一緒に売られてきました。日曜日にもかかわらず、市場が開いているのは、朝教会に行く前に新鮮な魚を領主の台所に届けなければならなかったからとか。

果物スタンドも人気です
果物スタンドも人気です

魚だけでなく、青果店やソーセージ、パンや生花にとほぼなんでもありの市場です。たたき売りのスタンドもあり、露店主と地元の人とのやり取りを見るだけでも楽しいこと間違いなし。

生魚やスモークされたものなど普通のスーパーでは見たことのない新鮮な魚も売られています。朝食としてフィッシュサンドをほおばっている人がたくさんいました。ハンブルクロゴの入ったTシャツやお土産も売っています。

日曜日の早朝?時間を忘れてしまいそうな熱気溢れるホール内にて
日曜日の早朝?時間を忘れてしまいそうな熱気溢れるホール内にて

かつて魚の競売が行われていた大ホールから、ライブミュージックが聞こえてきました。内部はビアホールになっていて、朝からビールを飲む人がいました。音楽に合わせて歌っている人、踊っている人、雰囲気を楽しんでいる人などそれぞれが日曜日の早朝を楽しんでいる光景はとても印象的でした。

ハンブルクの名物と言えばフランツブロートヒェン。クロワッサンをぺちゃんこにしたような平たい形の菓子パンでシナモンシュガーが入っています。

今回あちこちで食べましたが、フィッシュマルクトで見つけたパン屋さんのスタンドで買ったものが、一番美味しかったです。外側はカリっとして噛むともちっとした食感でコーヒーにピッタリでした。

ハンブルクは、ドイツ第2規模の都市で、生活満足度は国内で二番目に高い州です。近年ほぼ一貫して人口が増加しており、現在約185万人(2021年12月31日現在)。

ハンブルク市民の平均年齢は約42.3歳で、全国平均(44.6歳)を大きく下回り、活気あふれる街です。是非一度、刻々と変化するエネルギッシュな街ハンブルクへ行ってみませんか。

在独ジャーナリスト

ビジネス、社会・医療・教育・書籍業界・文化や旅をテーマに欧州の情報を発信中。TV 番組制作や独市場調査のリサーチ・コーディネート、展覧会や都市計画視察の企画及び通訳を手がける。ドイツ文化事典(丸善出版)国際ジャーナリスト連盟会員

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