中国の不動産大手、中国恒大集団の資金繰りへの懸念が広がり、中国各地の関係先で抗議行動も繰り広げられた。恒大集団が破綻すれば中国経済に大きな影響を与えるとの懸念から、一部では「中国版リーマン・ショック」という言葉も使われている。

◇不動産バブルで急成長

 恒大集団は中国最大級の民間企業。1996年に広東省広州で創業したあと、不動産バブルを背景に急成長し、280以上の都市に1300件以上の不動産事業を展開したことも。2020年12月期決算の売上高は5072億元(8兆5871億円程度)。

 創業者の許家印(Xu Jiayin)会長(1958年生まれ)は、米フォーブス誌が2017年11月に発表した「中国の富豪400人」ランキングのトップに立った。2019年の長者番付では世界22位。中国の国政助言機関、中国人民政治協商会議(政協)のメンバーでもあり、今年7月に開かれた中国共産党創立100周年記念式典でも接待を受け、中国のビジネスマンを象徴するような存在だった。

 近年は多角化を進め、映画制作のほか、観光業、インターネット関連サービス、保険、ヘルスケアなど幅広く事業を展開している。スポーツではサッカーチームの広州FCを運営していることで有名だ。電気自動車(EV)への野心も強く、2019年には巨額の負債を抱えながらも「恒大新能源汽車集団」を立ち上げた。

◇関連施設でデモ「カネを返せ!」

 恒大集団は過去、国内不動産市場の活況を追い風に土地を買い集めて開発を繰り返すという強気の投資を続けてきた。これに事業の拡大路線も加わって借り入れへの依存度の高さが目立ち、以前から経営問題が指摘されてきた。2020年9月の段階で「恒大集団が広東省政府に支援を求める請願書を出した」と一部で報じられたこともあった。

 結局、負債は膨れ上がり、6月末の時点で総額1兆9665億元(33兆3304億円程度)、うち取引先に支払うべき代金などが9629億元(16兆3143億円程度)と半分近くを占める。自己資本は4110億元(6兆9660億円程度)にとどまり、負債比率は478%となる。

 資金繰りに窮して工事が止まった恒大の不動産は中国各地に点在する。大手地方銀行からは預金を凍結され、関連会社からは代金支払いを求める提訴を起こされる。恒大は財務の健全化を図るため資金集めに奔走し、8月には「恒大新能源汽車集団」や、不動産管理の「恒大物業集団」に関する資産の一部を売却する考えを示した。

 さらに今月13日夜になって恒大は緊急声明を出して「会社は未曽有の苦境に直面しているが、考えつくすべての手段で正常な経営を回復する」との姿勢を強調した。それでも、否定的な報道は止まらなかった。

 中国のインターネット上には、各地で起きた抗議行動の動画や写真がアップされている。四川省成都にあるとみられる恒大関連施設には数十人が押し寄せ、それぞれ「私が汗水たらして稼いだカネを返せ!」というプラカードを掲げながら、一斉に中国の国歌を歌っている。広東省深圳にある恒大本社前でも投資家約100人が押しかけ、騒然とした。

「私が汗水たらして稼いだカネを返せ!」というプラカードを掲げながら抗議する市民ら=網易新聞の動画よりキャプチャー
「私が汗水たらして稼いだカネを返せ!」というプラカードを掲げながら抗議する市民ら=網易新聞の動画よりキャプチャー

◇「実績のある方法を組み合わせた措置」

 恒大は国内で約20万人の直接雇用、約380万人の間接雇用を創出しているといわれ、破綻すれば社会に与える影響は大きい。下請け各社が代金を回収できない事態も相次ぎ、倒産の連鎖を引き起こす恐れもある。同業他社への影響も必至だ。

 中国の経済成長の主な原動力となってきた不動産業が衰退すれば、経済成長を押し下げる恐れもある。こうした懸念から、中国人民銀行などは8月、恒大集団の幹部に異例の指示を出し、債務リスクの解消や、不動産市場と金融の安定維持につとめるよう求めた。

 恒大の破綻がどこまで中国経済にダメージを与えるのか。多くの専門家が分析し、見方が割れる。リーマンブラザーズが2008年9月15日に経営破綻したことに端を発し、連鎖的に世界規模の金融危機が発生した「リーマン・ショック」のような事態を警戒する声も一部には上がっている。

 ただ、一方で「個別企業の問題にとどまり、影響は限定的」「過度に警戒する必要はない」という見方も根強い。

 香港の有力英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは専門記者の意見を載せ、「リーマン・ショックのようにはならない」として次のように指摘する。

「銀行、個人投資家、さらには地方自治体にまで衝撃が及ぶ可能性があり、中国政府は恒大集団の完全な破綻は避けたいと考えているはずだ。同社は直ちに崩れ落ちるのではなく、ゆっくりと燃え尽きることになる。最終的な解決策は、債務の借り換え(ロールオーバー)や最も弱い立場にある人々への緊急支援など、実績のある方法を組み合わせるものになるだろう。もちろん、こうした事態を招いた中心人物に、必ずその責任は取らせる」