中国がついに抜いた“伝家の宝刀”――「北京冬季五輪パラをボイコットなら制裁する」

北京冬季大会のムードを盛り上げる組織委員会のウェブサイト=筆者キャプチャー

 中国当局による人権抑圧を理由に、2022年の北京冬季五輪・パラリンピックをボイコットすべきだという声が人権団体から次々に上がっている。これに対し、中国側は共産党機関紙・人民日報系「環球時報」を使って「ボイコットするなら中国は強力な制裁を加える」との論評を出し、ボイコットに向けた動きに強く反応している。

◇「開催国変更」の訴えも

 北京冬季五輪パラ開幕1年前となった今月4日、世界各地の人権団体180以上が共同でボイコットを呼びかける書簡を発表した。

「中国の人権侵害に反対の意思を示す役割を担うのは各国の政府である。各国がボイコットしなければ、中国共産党の独裁政治を支持し、人権問題を黙認していることを示すことになる」

 米連邦議会でも2日、共和党の上院議員7人が中国での開催に反対する決議案を提出した。そこには「中国政府が宗教や言論などをめぐる基本的な人権状況を大幅に改善させない限り、国際オリンピック委員会(IOC)は来年の開催国を再検討する必要がある」と記されている。

 バイデン米大統領も10日、就任後初めて中国の習近平国家主席と電話で会談した際、経済面における中国の威圧的・不公正な行為▽香港への統制強化▽新疆ウイグル自治区での人権侵害▽台湾への対応――を挙げて「独断的な行為を強めている」と懸念を表明し、中国に圧力をかけている。

 過去のボイコット劇は、1980年のモスクワ夏季大会と84年のロサンゼルス夏季大会が記憶に新しい。

 モスクワ大会では、当時のカーター米大統領がソ連のアフガニスタン侵攻に抗議して西側諸国にボイコットを呼びかけ、日本やカナダ、西ドイツ(当時)などが追随した。逆にロス大会では、事実上の報復としてソ連や東側諸国の大部分の選手がボイコットしている。

 両大会とも中ソ対立のさなかに開催されたため、中国はモスクワ大会には不参加だったが、ロス大会には米国と歩調を合わせる形で参加している。

 過去、ボイコットによって、準備を進めてきた多くの選手たちが夢の実現を断念せざるを得なくなった。このため、平和の祭典である五輪パラに政治問題を持ち込むことへの批判は根強い。また1年後に迫った大会を別の場所に移すのは現実的でないうえ、ボイコットによって中国側が抗議の声に耳を傾けるか、その確証もない。

◇「ボイコットは支持を得られず」

 こうした事情を見通しているかのように、環球時報は7日、「ボイコットを扇動する勢力の思い通りになるはずがない」との論評を掲載した。

 論評は「いま、ボイコット政策を押し出している国は一つもない。関連議案の作成を推し進めるほどの十分な権限を持った議会もない」と指摘したうえ「(180の団体の)ほとんどが新疆やチベットの独立運動団体や香港関連した組織、あるいはそれらの関連団体であり、寄せ集めの烏合の衆である」と切り捨てている。

 そのうえで「中国はスポーツ大国であると同時に経済大国でもあり、その政治的影響力は日々高まっている。もし、どこかの国が過激派勢力によってボイコットに向けた現実的行動を強要されれば、北京は必ず激しい報復をするだろう。報復のための資源と手段を、北京が欠いているということは、決してない」と警告している。

 また、環球時報の名物編集長である胡錫進氏も同じ日、自身の中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」への投稿で「ボイコットは広範囲の支持を得られず、IOCや選手たちも反対するだろう」と書き込み、環球時報と同様、「中国は制裁を加える」と威嚇した。

 環球時報は中国共産党の“本音”を語っている媒体として知られ、中国当局が正面から表現できない立場を代弁することが多い。