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米国をサル呼ばわりして「夢から覚めよ!」――近ごろ気になる中国の言葉づかい

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
米国批判の論文を読み上げるキャスター=CCTVウェブサイトよりキャプチャー

 新型コロナウイルス感染拡大に絡んだ責任論と、香港での国家安全法導入に対する批判により苦境に立たされる中国が、国際世論に神経を尖らせている。中国批判を繰り返す米国を「テナガザルたち」と表現して挑発する一方、関係改善の途上にある日本に対しては厳しい論調を差し控えている。日米関係にくさびを打ち込み、日本を引き寄せたいという思惑が見え隠れする。

◇「米国よ、間違いを繰り返すな」

 中国中央テレビ(CCTV)の番組で5月26日、キャスターによって「国際鋭評――米国“テナガザルたち”が香港問題でまだ夢を見ている」と題する論文の抜粋が読み上げられた。

 そこでは「香港は中国の特別行政区の一つである」と改めて宣言し、「中国は国家の範囲内において、香港に国家安全の法制度と執行メカニズムを整えると決定した。これは至極当然のことである」と強調している。

 論文は米国に関連して「同時多発テロ(2001年)で大きな損失を被った米国には、国家安全に関連した身に染みる苦痛というものがあり、それゆえ隙のない法体系の整備を続けてきた」と指摘。これを前提にして「どうして中国・香港が国家安全を守るといえば、ポンペオ(米国務長官)らは焦るのか」と疑問を呈した。ここには“他の国が国家安全の対策を講じる際、米国は神経を使っていないのに”との不満がにじみ出ている。

 この論文では、ポンペオ氏を名指ししている。香港への国家安全法導入を「一方的かつ恣意的に香港に強制する行為」などと非難しているためだ。

「ポンペオに代表される米国の政治屋が香港関連の国家安全立法に激しく反応したのは、香港に口出しする機会を失い、『香港カード』を使って中国の夢をけん制することができなくなるからだ」

「米国政治屋のパフォーマンスは、彼らが心から香港のことを考えてやっているわけではなく、逆に香港の混乱を心待ちにし、火事場泥棒を働くことを企んでいる」

 香港は『一国二制度』によって、中国の一部であると同時に、高度な自治、資本主義的な制度が認められている。論評では「『一国二制度』は確固不動の方針である」と表明しつつも、「中国は一貫して香港情勢へのいかなる外部勢力の干渉に反対している」との立場を鮮明にしている。

 そのうえで「米国“テナガザルたち”を一刻も早く夢から目覚めさせ、情勢を誤って判断させたり、間違いを繰り返させたりするようなことがあってはならない」と締めくくっている。

◇「日本はオーストラリアのマネはするな」

 米国との対立が激しさを増す一方で、中国は、米国の同盟国でありながらも関係改善が進む日本に対しては神経を使っている様子がうかがえる。

 安倍晋三首相が5月25日の記者会見で、新型コロナウイルス対策をめぐる米中対立について問われ、「新型コロナは中国から世界に広がったというのは事実である」との認識を示した。

 これに対し、中国外務省の趙立堅副報道局長は翌26日の定例記者会見で「我々はウイルスの発生源を政治問題化したり(中国に)汚名をかぶせたりするのに断固反対する」と表明。政治的なものを科学的判断に優先させるべきではなく、団結し、協力していくことが感染症に勝利する最も有力な武器である――と訴えかけた。

 中国共産党機関紙・人民日報系「環球時報」(電子版)も同日付で「日本は(中国に対する国際調査を要求する)オーストラリアではない。相対的に中立であることが理性的な選択だ」とする論評を掲載した。

 その中で安倍首相の発言について「米国人の耳と感情をより考慮した。だが、同時に中国人を過度に刺激するのも避けたいようで、特に新型コロナウイルスについて話す時、首相はウイルスが中国から世界に『広がった』というような漠然とした言葉を使い、中国で発生したとは強調しなかった」と評価した。

 さらに「日本は米国の同盟国であり、日米同盟は日本外交の基軸とされている。中米間(米中間)に紛争があると、米国は日本に圧力をかけるため、日本の態度がワシントンの路線を離れるのは困難だ」と理解を示した。

 そのうえで、オーストラリアを引き合いに出して「中日関係(日中関係)が正常化の状態にあるなかでは、日本は中米間の中立性を維持するよう努めるべきであり、オーストラリアのように公然と米国側に並ぶようなマネはすべきでない。これが日本政府の中日関係における責任ある態度だ」と呼びかけた。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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