ご存じですね?「チャイナ・エア」と「エア・チャイナ」の大違い

台湾「チャイナエアライン」の航空機(同社HPからキャプチャー)

 台湾の航空会社「中華航空(チャイナエアライン)」の名称変更を求める声が台湾内で高まり、論争が起きている。新型コロナウイルスの感染が拡大する各国に台湾は医療用品の寄付を続ける。ただ、その多くを運ぶ中華航空の機体に「チャイナ」の文字が入っているため、到着先では「中国からの支援」と勘違いされる例が増え、台湾住民は不満を募らせている。

◇中華航空と中国国際航空

 中華航空は1959年に創立された台湾を代表する航空会社。同社ホームページによると、3月31日現在、航空機88(旅客機70、貨物機18)を保有し、29の国・地域の160都市を結んでいる。英語表記が「チャイナエアライン」のため、中国の航空会社である「中国国際航空(エアチャイナ)」と混同されることが多い。

 中華航空は、集団感染が確認され横浜港に停泊していたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の台湾乗客らを連れ戻したり、台湾で生産されたマスクを各国に輸送したりするなど、重要な役割を担った。だが、相手国の空港に到着した機体の「CHINA」の文字を見た人たちが、台湾ではなく、中国の航空機と誤認する例が絶えなかった。このため「タイワン・エアライン」などへの変更を求める意見が持ち上がっていた。

 台湾の蘇貞昌・行政院長(首相)は4月14日、チャイナエアラインの名称が多くの混乱を引き起こしていると指摘したうえ、輸送する物資に台湾の旗や「Taiwan Can Help」という文字を記すよう同社に要請したと述べた。林佳竜交通相は、改名について「開放的な態度」を表明する一方、台湾社会のコンセンサスが必要だとした。

 交通部(交通省)は、社名変更の場合、登録や各種契約・文書の変更、機体の塗装などで「少なくとも11億台湾ドル(約40億円)がかかる」と見積もっている。

 さらに懸念されるのが中国からの圧力だ。

 台湾は現在、中国側の反対によって、航空の安全確保を図るための国際機関である国際民間航空機関(ICAO)から排除され、航空業務における国際協力の面で不自由を強いられている。この状況のなかで、仮に社名や機体に「台湾」の文字が入ることになれば、中国はさらに態度を硬化させて各国に圧力をかけ、中華航空が各地の空港の発着枠を引き継ぐことが難しくなるとの指摘がある。

 このため、対中融和路線の野党・国民党は「改名されれば、中国との関係は元に戻れなくなる」と警戒している。

 4月24日の自由時報(電子版)によると、チャイナエアラインはこのほど、大株主と名称変更について協議し、いったんは機体に『台湾元素』という文字を追加するということで認識の一致をみたという。

◇たびたび論議

 中華航空の名称変更は過去にも持ち上がったことがある。

 独立志向を強めた民進党の陳水扁氏は総統時代(2000~08年)、国際社会で存在感を増す中国に対抗するため、内部の団結を強める「台湾化路線」を取った。

 中国を「領土」の範囲に含む現行の「中華民国憲法」を「台湾新憲法」に上書きし、「台湾」名義での国連やその他の国際組織に加盟申請する▽公営企業名からも「中国」という単語を外して「台湾」を付ける――などの運動を試みた経緯がある。

 その間、「台湾独立」支持派の政党メンバーら1万5000人以上が2002年5月、「中華民国の名称は国際社会で中国と混同されやすい」として、「台湾国」もしくは「台湾共和国」に改めるよう求めて台北市内をデモ行進したこともあった。

 こうした動きは中国だけでなく、米国からも警戒された。

 この時期にも中華航空を「台湾航空」に改名するという案が浮上。しかし、中華航空側は「改名すれば中国の反発を招き、ドル箱の台湾―香港路線が運航できなくなる」と難色を示していた。

「台湾」表記はパスポートについても取りざたされている。海外在住台湾人の46団体は4月15日、現行のパスポートの英語表記のうち、「REPUBLIC OF CHINA」を削除して「TAIWAN」だけにするよう求める声明を発表している。

 ちなみに、航空会社の名称変更は、日本では「東亜国内航空」(TDA)が1988年4月1日、「日本エアシステム」(JAS)=2004年に日本航空と合併=となった例がある。

 88年秋のソウル五輪を見据えて、同年2月の日韓航空交渉で東亜国内航空の東京―ソウル間の新規乗り入れが決まった。東亜国内航空としては初の海外路線だったため、「国内」の名称がそぐわなくなることから名称変更に踏み切った。また、日本に植民地支配された韓国の国民感情に配慮して、太平洋戦争時に使われた「大東亜共栄圏」を連想させる単語を外したのではないかという説もある。