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オランダのレフェリーが優しくなった!? 板倉滉、激しい守備でも『14ヶ月間ゼロ』の記録とは

中田徹サッカーライター
その年に亡くなったファンを年末の試合で偲ぶ。フローニンゲンの伝統だ 【中田徹】

■「監督の修正によって、フローニンゲンは試合のペースを取れた」(板倉)

 好調フローニンゲンは12月23日のヘラクレス戦を0対1で落としてしまい、オランダリーグの連勝は4でストップした。今年最後の試合を白星で締めくくることができず、CB板倉滉は悔しがった。

 それでも、今季のフローニンゲンの健闘は光る。GKパット、3バックの板倉、ダマース、ファン・ヒントゥム、守備的MFマトゥシワを軸としたディフェンスはリーグ屈指の堅さを誇り、耐えて勝つスタイルを確立させた。その結果、14節を終えた時点でフローニンゲンは6位。ここまで稼いだ勝ち点は26を数える。昨季(2019−20シーズン)で9位だったフローニンゲンの勝ち点が33(消化試合は26)。その数字にあと少しで追いつく。

 フローニンゲンの好調の秘訣はなんだろうか? 板倉は言う。

「チームがやろうとしていることの意志が統一できている。監督に選手全員がしっかりついていけているところが、今の好調の要因じゃないかと思います」

 監督を務めるのは38歳の若き指揮官、デニー・バイスだ。試合中はテクニカルエリアに立ち続け、吠えるようにチームを鼓舞し続け、盛んに選手の名前を叫んで修正を促す。その指示が結構的確で、MFを数メートル敵陣に押し上げさせることによって相手のマークも動かし、ピッチの中央にスペースを作ったりしている。

 デュエルに消極的だと烈火のように怒るバイス監督だが、戦術のプランがハマらないと「自分が悪かった」と選手に謝る素直さも持ち合わせている。彼は決して『ホーラント・スホール(オランダ派)』と呼ばれる攻撃サッカーの信奉者ではないか、『結果を出せる若手監督』として国内で注目を集め始めている。

「監督がしっかり修正を入れてくるので、選手はしっかり聞いて行動に移す。そうすることによって、うちのチームはペースを取れてきたというのが、前半戦に何度もありました」

■板倉が挙げた3つの課題

 ここで、板倉にここまでの今季を振り返ってもらった。

「チームとしては、プレーオフ圏内(リーグ4位から7位までのチームが、カンファレンスカップ出場権をかけて戦う)にいることはポジティブに捉えていいと思います。また、前半戦を戦う中で、選手全員が『もっとやれる』という自信をつけることができました。

僕個人としては、目標にしていた全試合出場を達成、しかもフル出場を継続中です。そこは良かった」

 板倉が今後の課題として挙げたのは『空中戦でも地上戦でも絶対に負けないデュエルの強さ』『自分が最後尾にいれば絶対にやられないという存在感』『ゴール』だった。特に得点することに関しては、これまで幾度も惜しいシーンがあったが、オランダ3年目にしてまだノーゴール。今回のヘラクレス戦でも「僕をフリーにするために、チームとして作り込んでました」というコーナーキックからジャストミートのボレーシュートを放ったが、ゴールを奪うことができなかった。

「点を取れてないというのがね、結構悔しいんですよ。後半戦はもっと狙っていかないと……。いや、ずっと狙っているんですけれど(苦笑)。引き続き、貪欲にゴールを狙って、どこかで早く一本決めたいです」

■イエローカード0枚の秘訣

 オランダでは、スライディングタックルが板倉の代名詞になっている。右足を伸ばしインサイドで相手シュートをブロックしたり、アウトフロントで相手のボールを掻き出したり、ドリブルをストップしたり、何度も板倉はスライディングタックルでチームを救ってきた。しかし、そのタックルは常にフェアーだ。今季、板倉はイエローカードを一枚ももらってない。

 実は、ヘラクレス戦の終盤、空中戦の競り合いで、板倉の膝が相手の後頭部に入ってしまい、痛めつけてしまった。

「故意じゃなかったんですが、『イエローカードが出るかな』と思いましたけれど、出なかったのでゼロで行けましたね」

 私は「ああいうところでイエローカードが出ないのは、普段の行いも大事なんですか?」と板倉に訊ねてみた。

「そうですね。オランダの審判は案外、俺に優しいんで」

――審判の優しさが伝わってきますか?

「たまに伝わりますよ。(レギュラーになった)1年目は舐められているから、ちょっと文句を言いにいっただけでイエローカードもらったりしてたじゃないですか。『ホワイ?(なんで?)』って審判に言っただけでイエロー出されましたからね」

 昨季の板倉は開幕戦の対エメンで正確なスライディングタックルを決めたかと思いきや、ファールでPKを取られ、さらにイエローカードももらってしまった。そして、わずか9節までの間に4枚のイエローカードを受け、出場停止にリーチがかかった。それから14ヶ月、オランダ人のレフェリーは一度も板倉にカードを出してない。

「徐々に審判も俺のことを知ってきてくれました」

――そういうのって実は大事なんですね

「そう、なんだかんだ言って大事なんですよね。結局、審判も人間なんで。だから、そういう審判との関係というのも今季、イエローカードがゼロの要因になっているのかなと思います」

サッカーライター

1966年生まれ。サッカー好きが高じて、駐在先のオランダでサッカーライターに転じる。一ヶ月、3000km以上の距離を車で駆け抜け取材し、サッカー・スポーツ媒体に寄稿している。

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