Yahoo!ニュース

上田綺世、小川航基の”ハーフナー超え”に期待 オランダ現地誌のシーズン展望

中田徹サッカーライター
小川航基はNECの要注目選手(フットボール・インターナショナル シーズンガイド)

■パイオニア望月達也に再び脚光

 オランダのサッカー専門誌『フットボール・インターナショナル』最新号は、日本人選手の情報で盛りだくさんだ。8月9日発売の通常号では「日本のトップストライカーたちは、望月の足跡をたどる」という記事を掲載した。

『望月』とはオランダのハーレム、テルスター、日本ではJSLのヤマハ発動機でプレーしたMF望月達也のこと。第59回全国高校サッカー選手権で清水東の一員として準優勝したレフティは、翌年の国立競技場(記憶が曖昧だが武南対韮崎の決勝戦。もしくは天皇杯決勝戦、日本鋼管対読売クラブのどちらか。冬晴れの午後だった)で来日中のペレ氏に激励されてオランダへ飛んだ。

『フットボール・インターナショナル』誌は「1982年、19歳の望月達也がハーレムに入団し、日本人として初めてのエールディビジプレーヤーになった。しかし、ハーレムでの2シーズンで3試合103分間の出場に留まり、成功したとは言えなかった」と振り返る。

「それからおよそ20年後、望月に続くエールディビジ・プレーヤーがオランダにやってきた。それが2001年、フェイエノールトに入団した小野伸二。以降、2008-09シーズンを除き、日本人選手は常にエールディビジでプレーしている」

■飛び抜けたスタッツを誇るハーフナー

『フットボール・インターナショナル』誌が指摘するのは「オランダでプレーする日本人には、真のゴールゲッターが少なかった。シーズン2桁ゴールを記録したのはハーフナー・マイクだけ」ということ。スタッツはこうだ。

2015-16 ハーフナー・マイク(ADOデン・ハーグ)16ゴール

2012-13 ハーフナー・マイク(フィテッセ)11ゴール

2013-14 ハーフナー・マイク(フィテッセ)10ゴール

2017-18 堂安律(フローニンゲン)9ゴール

2016-17 ハーフナー・マイク(ADOデン・ハーグ)9ゴール

 昨季J2で26ゴールを量産し得点王に輝いた小川航基がNECに、ベルギーリーグで22ゴールを挙げた上田綺世がフェイエノールトに加入することで「今季はこれまでと違った傾向が見られるかもしれない」と『フットボール・インターナショナル』誌は結論づけている。

■小川と斉藤が「今季チームの注目選手」に

 通常号に並行して刊行された『フットボール・インターナショナル/オランダリーグシーズンガイド』ではNECの注目選手として小川航基がセレクトされている。題して「世紀のタレントがその価値を示す年」。

「25歳の小川は堂安律(フライブルク)、冨安健洋(アーセナル)と同世代。小川自身も早くヨーロッパでプレーしたいと願っていたが、結果が伴わず日本に居続けた。しかし(ジュビロ磐田から)横浜FCへの移籍が彼を救った。昨季、小川はJ2で26ゴールを決めて得点王に輝いたのだ。昇格1年目の今季、横浜FCは苦戦しているのが、そのなかで彼は6ゴールを決めている。このストライカーはランニング、ヘディング、スピード、味方とのコンビネーションに秀でている」

スパルタの注目選手 斉藤光毅(フットボール・インターナショナル シーズンガイドより)
スパルタの注目選手 斉藤光毅(フットボール・インターナショナル シーズンガイドより)

 もう一人、注目選手としてフォーカスされているのが斉藤光毅(スパルタ)。記事のタイトルは「1m70cmの巨大なアトラクション」だ。

「斉藤はフォーレンダム戦で途中出場し、デビューマッチでいきなり2アシストを記録すると、瞬く間にサポーターの人気者になった。しかし、最初の半年はフィジカルが今一つでレギュラーの座をつかめなかった。ワールドカップ中断中に斉藤は課題を克服し、後半戦は主力として活躍。7ゴールの中にはものすごく美しい得点が複数あった。彼のドリブルは相手にとってコンスタントに脅威となった。斉藤は相手を左右に揺さぶり、他の選手には見えない解決策をとることができる。試合途中でベンチに下がる時、斉藤はピッチに向かってお辞儀する。スパルタは今季も斉藤をロンメル(ベルギー)から借り受ける。そのことはエールディビジにとっても良いことだ。小さな日本人は本当のアトラクションなのだ」

 そして同誌は「ゴール+アシスト」のスタッツを添える。

2015-16 ハーフナー・マイク(ADOデン・ハーグ)19(16G+3A)

2009-10 本田圭佑 (VVV) 13(6G+7A)

2022-23 斉藤光毅(スパルタ)12(7G+5A)

2003-04 小野伸二(フェイエノールト)12(2G10A)

2017-18 堂安律 (フローニンゲン)12(9G3A)

2022-23 菅原由勢(AZ)11(3G8A)

「斉藤光毅はオランダデビューイヤーで小野伸二、堂安律のスタッツに並んだ。彼らより良いスタッツを残したのはハーフナー・マイクと本田圭佑だけだ」

 右サイドバックの菅原由勢が5位に付けるのも特筆される。

 ミオ・バックハウス(日本名:長田澪)はフォーレンダムのGKとして正位置をつかんだと報道されている。オランダの全国紙に問い合わせたところ「私たちは彼のことをドイツ人としてカウントしています」という答えが返ってきた。彼のことを私は二重国籍者として追いたいと思う。

2023-24シーズン オランダ・エールディビジ日本人選手一覧(8月10日時点)

菅原由勢(AZ)

上田綺世(フェイエノールト)

小川航基(NEC)

斉藤光毅(スパルタ)

ミオ・バックハウス(フォーレンダム)

サッカーライター

1966年生まれ。サッカー好きが高じて、駐在先のオランダでサッカーライターに転じる。一ヶ月、3000km以上の距離を車で駆け抜け取材し、サッカー・スポーツ媒体に寄稿している。

中田徹の最近の記事