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AZの右サイドで機能する菅原由勢 「僕のフリーランニングはチームの強み」

中田徹サッカーライター
AZのスタジアム正面にかかる看板 【中田徹】

■トゥエンテ戦で今季初ゴール。ウィーレム2戦でも得点に絡んだ菅原

 12月に入り、AZの右サイドバック、菅原由勢の調子が上がってきた。12月13日のトゥエンテ戦(3対1でAZの勝利)では、オランダ代表候補のGKドロメルの肩口を破る強烈なシュートをゴールネットに突き刺し、20日のウィーレム2戦(5対3でAZの勝利)では粘り強い守備から相手ボールを奪い、MFステングスのゴールの起点となった。

 試合を重ねるにつれて、菅原とチームが噛み合って機能するようになってきた。以前は、最後尾からのビルドアップが左へ偏っていたが、今は菅原のところでボールの落ち着きどころが生まれたり、攻撃のスイッチが入ったりしている。

 菅原は前方のフリーマンを見つけて、簡単に縦パスや斜めの楔をグラウンダーで入れるのもうまい。ウィーレム2戦では、ストライカーのボアドゥに左足で丁寧に楔を入れてから一次攻撃の起点となり、その流れから二次攻撃の起点を作ってステングスのゴールに絡んだ。

■「ユキ、ブラボー!」

 菅原が自分のプレーをピッチの上で表現できるようになったのは、右CBハジディアコスからパスが来るようになり、試合中のプレー関与が増えたからではないだろうか。少し前までハジディアコスは、なかなか菅原へのパスコースを見つけられず、ボールを左足に持ち替えてから窮屈そうに菅原にパスを出していた。菅原は振り返る。

「センターバックがボールを持ちすぎてからパスを俺に出すから、自分のところが“ハメどころ(相手にとってボールの奪うポイント)”になってました。だから(ハジディアコスに)『もっとシンプルに、早めにボールを出して欲しい』という要求をしました」

 しかし、菅原自身にも問題はあった。

「僕自身、過去の数試合を振り返って『相手にハメられるようなポジションを取っていたのも、原因の一つかな』と思ってました。そこでウィーレム2戦の後半はちょっと高めのポジションを取るようにしたら、相手のサイドハーフが僕に釣られて、味方のウイングにスペースが生まれました。その結果、後半は右サイドでいい関係が築けてガンガン行けました」

 84分にはこんなシーンもあった。ハジディアコスがボールを持ってルックアップしながら、パスの出しどころを探していた。このとき、菅原が縦にフリーランニングし、MFエフイェンのためにスペースを作った。エフイェンがパスを受けた後、菅原は動き直して、再び縦に走ってスルーパスを受けた後、鋭いクロスを入れた。この一連のプレーが終わった直後、ハジディアコスが「ユキ、ブラボー!」とスタジアム中に響き渡る大声で菅原を讃えた。

「後半は特に意図的に僕のポジショニングで相手を混乱させることができました。僕のフリーランニングによってスペースを作れるというのもチームの強み。チームの印象として、フリーランニングする選手が僕ぐらいしかいない」

 クラブチャンネルの『AZ TV』で披露したように、英語が上達したことも菅原のプレーが向上した一因だろう。

「まだ(英語の)改善点はありますが、監督やチームメートとよく話すようにして、コミュニケーションを取ってます。そうしたことも、僕にボールが出てくるようになった理由の一つだと思います」

 スタートダッシュに失敗したAZだが、5位フローニンゲンと勝ち点3差の7位まで順位を上げてきた。しかもAZは消化試合が他の上位チームより一つ少ない。序盤戦で出遅れた菅原もまた、チームとともに勢いを増していきたい。

サッカーライター

1966年生まれ。サッカー好きが高じて、駐在先のオランダでサッカーライターに転じる。一ヶ月、3000km以上の距離を車で駆け抜け取材し、サッカー・スポーツ媒体に寄稿している。

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