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綻び始めたトランプの共和党:陰謀論者のグリーン議員と大統領弾劾支持のチェイニー議員を巡る内部抗争

中岡望ジャーナリスト
下院で委員会除籍処分を受けたQAnon支持者のグリーン議員(写真:ロイター/アフロ)

■トランプ支持派とトランプ批判派の“代理戦争”

 二人の下院議員の処遇を巡って共和党は混乱している。二人の下院議員を巡る争いは、トランプ前大統領支持派と批判派の“代理戦争”の様相を示している。それは同時にポスト・トランプの共和党の未来を占う争いでもある。二人の議員とは、QAnonの支持者で陰謀論を支持し、拡散してきた新人議員マージョリー・テイラー・グリーン議員と、下院共和党のナンバー3の要職にありながらトランプ大統領弾劾決議に賛成票を投じたリズ・チェイニー議員である。

 まずグリーン議員を巡る亀裂から話を始めよう。民主党が多数派を占める下院のワッサーマン・シュルツ議員が、議員として不適切な行動を取ったとしてグリーン議員を2つの委員会の委員を除名する「決議案(H.RES.72)」を提出した。2ページの決議には、「下院規則23条第1項」に規定された「議員は常に下院にふさわしい行動を取らなければならない」という項目に従い、「グリーン議員は彼女が取った行動に照らして委員会の職務から除外されるべきである」と書かれている。

 これに対してグリーン議員は「自分の行動は議員になる前のもので、決議の対象にはならない」と反論した。また決議採択前に本会議で行った演説で、「自分が行った奇妙で一貫性の欠ける発言の多くを撤回する」と、譲歩する発言を行った。そして「自分は2018年にQAnonと決別した」とも述べた。ただ最後に「議員たちが私を十字架に掛けようとするのであれば、重大な問題を引き起こすだろう」と、同僚の議員たちを挑発している。多くの議員は議会でのグリーン議員の発言を謝罪とは受け取らなかった。

 もうひとつの亀裂は、チェイニー議員がトランプ大統領弾劾決議に賛成したことで、トランプ支持派が激怒したことで生まれた。チェイニー議員は「トランプ弾劾決議に賛成したのは、自分の良心に従って行動しただけだ。憲法に従って行動を取った」と自らの正当性を主張し、トランプ支持派の批判を退けた。だがトランプ支持派は強硬で、チェイニー議員を党の要職から罷免すべきだと要求し、共和党議員総会の採決に持ち込まれた。

QAnonを支持するグリーン議員

 グリーン議員は陰謀論やQAnonの支持者で、民主党幹部の暗殺を促すような過激な発言を行っていたことが相次いで暴露された。グリーン議員は、ジョージア州第24選挙区で初当選したが、当初は泡沫候補と見られていた。だが選挙では共和党予備選挙を勝ち抜いて決選投票まで持ち込み、57%の票を獲得して共和党の正式な候補者に指名された。本選挙では22万9827票(74.7%)を獲得し、民主党候補に大勝した。グリーン議員は熱狂的なトランプ支持者で、トランプ大統領は彼女を「共和党の将来を担う人物」と称賛していた。グリーン議員は「大統領選挙は盗まれた」と主張していた。12月14日に発表した声明に「広範な選挙不正や、州外からの投票、郵便投票、死んだ人間の投票、紛失した票の突然の発見がなければ、トランプ大統領はジョージア州で大勝していたことは皆が知っている」と主張していた。1月6日の連邦議会による大統領選挙結果の認証に際して反対票を投じている。

 グリーン議員はQAnonの支持者で、様々な陰謀論を拡散している人物として知られている。新人議員として登院するとすぐに、バイデン大統領を弾劾に掛けるべきだと主張するなど、その過激な発言が注目されていた。その反動もあり、リベラルなメディアはグリーン議員の過去のフェイスブックでの発言を掘り出し、激しい批判を行った。

 特に問題となったのは、CNNが2018年と2019年にフェイスブックに同議員がナンシー・ペロシ下院議長など民主党の要職にある議員の“暗殺”を主張していたことを明らかにした。さらに民主党の急進派のアレキサンドリア・オカシオ・コルレツ議員などが並んで写ったポスターに銃口を突き付けている写真も明らかにされた。

 その後も、相次いで陰謀論拡散の事実が暴露された。たとえば、昨年、ガンで死亡した最高裁のギンズバーグ判事は影武者だったという荒唐無稽な陰謀論も拡散したりしていた。ギンズバーグ判事はリベラル派の判事で、極右やQAnonの攻撃の対象になっていた。9/11でテロリストが国防総省を攻撃したというのは“でっち上げ”であるとか、2017年にラスベガスで起こった58名の射殺事件はリベラル派が憲法修正第2条の銃の保有権を廃棄するために仕組んだもの、すなわち銃規制を強化させることを目的にリベラル派が仕組んだ作戦ということだと主張した。これは“false flag conspiracy theory (偽旗作戦陰謀論)”と呼ばれている。

 2016年の大統領選挙中にもヒラリー・クリントン大統領候補など民主党のリベラル派は少女を誘拐し、若返りのために少女の生き血を吸っているとか、人身売買を行っているという“ピザゲート”と呼ばれる偽情報を拡散した。カリフォルニアの大山火事はユダヤ人の銀行家が衛星を使ってレーザービームで引き起こしたものであるとも主張。QAnonは、こうしたことはすべてリベラル派が構成する“影の政府”が企んだことだと主張している。あるアメリカ人記者は「グリーン議員が拡散した根拠のない陰謀論はあまりにも多すぎて列挙できないほどだ」と嘆いていた。

共和党幹部から出始めたグリーン議員批判

 こうしたメディアのグリーン議員攻撃に対して共和党指導部も何等かの対応を取らざるを得なくなった。特に民主党幹部の暗殺や民主党議員に対する威嚇行為が暴露されたため、共和党首脳部もグリーン議員の発言を無視できなくなった。最初に反応したのは、上院のミッチ・マコーネル共和党院内総務である。同氏は声明を発表し、グリーン議員が主張する「狂人の嘘と陰謀論は共和党にとって“ガン”である」と厳しく批判した。さらに「9/11にペンタゴンを攻撃した飛行機はなかったとか、高校での恐るべき銃撃は事前に仕組まれていたとか、クリントン政権がケネディ・ジュニアの飛行機を墜落させたことはなかった」と、グリーン議員の陰謀論を一蹴した。

 これに対してグリーン議員は「共和党にとって本当の“ガン”は、優雅に負けることしか考えていない軟弱な共和党だ」と反論。さらに声明を発表して、「すべては私に対する攻撃である。攻撃はすべて嘘である。私に対するすべての中傷は国の内外で私の支持基盤を強化するだろう。なぜなら人々は真実を知っており、嘘に辟易しているからだ」と、対決姿勢を露わにしていた。

 下院総会での決議投票の前に共和党のケヴィン・マッカーシー下院院内総務はグリーン議員と密かに会い、グリーン議員に過去の発言を正式に謝罪し、自ら委員会を辞任するように求めた。それによって民主党に決議の取り下げを求めるというのが、マッカーシー院内総務の計画であった。だがグリーン議員は公式な謝罪も辞任もしないと拒否している。

 マッカーシー院内総務は事態を収めようと奔走する。そして次のような声明をだした。「マージョリー・タイラー・グリーンが行った学校での乱射事件、政治的暴力、反ユダヤ主義の陰謀論は、下院共和党の価値観あるいは信念を代表するものではない。私はこうした発言を断固批判する。下院は、昨年、QAnonを非難する決議を行っており、現在でも批判することに変わりはない」、「私はマージョリーに会ったとき、このことをはっきりさせた。また議会のメンバーとして、彼女が私人として示していた基準よりもはるかに高い基準を維持する責任があることも明確に伝えた」、「私はマージョリーの発言が多くの人に深い傷を与えたと理解している。私は民主党のホイヤー院内総務に頭を冷まして、懸案に取り組む道を提案した」と、事態の鎮静化を図った。だが、マッカーシー院内総務の働きかけも功を奏することはなく、下院で決議の採決が行われた。

なぜ共和党の多数は決議案に反対したのか

 投票は2月3日に行われた。決議は230対199で可決され、グリーン議員は予算委員会と教育労働委員会の委員のポストを剥奪された。この票決で決議に賛成票を投じた共和党議員は11名いた。この数字が多いのか、少ないのか判断は難しい。ただ共和党関係者は「多くの共和党議員は決議に反対票を投じるだろう」と事前に予測していた。その理由として、「共和党議員は何が正しいか知っている。しかし最終的に多くの議員はドナルド・トランプと彼の支持基盤を恐れている」と、反対投票を行った理由を説明している(「Under Pressure to Rebuke Their Own G.O.P. Leaders Face a Critical Test」『ニューヨークタイムズ』2月2日)。ただトランプ前大統領が在任中なら決して11名の離反は起こらなかっただろう。

 グリーン議員は同僚議員に対して「自分はトランプ前大統領と常に連絡を取り合っている」とか、「トランプ前大統領の指示を得た」と語っていた。真偽のほどは分からないが、トランプ前大統領と近い存在であると訴えることは、効果があった。トランプ前大統領の共和党に対する影響力は依然として強い。マッカーシー院内総務は、トランプ大統領は暴徒の議会乱入に責任があると語っていた。だが舌の根も乾かないうちに、トランプ前大統領が住むフロリダに向かい、謝罪を行っている。

■大統領弾劾決議賛成でトランプ支持派を怒らせたチェイニー議員

 他方、チェイニー議員は下院のトランプ大統領弾劾決議に賛成したことでトランプ支持派の議員を怒らせた。下院で提出されたトランプ大統領弾劾決議に賛成票を投じた共和党議員はチェイニー議員を含めて10名いた。チェイニー議員は「トランプ大統領がアメリカの選挙制度を深刻なまでに破壊した」と考えていた(”Liz Cheney Chooses Her Own Path, and It’s a Perilous One”, 『ニューヨークタイムズ』2月3日)。

 チェイニー議員の要職解任を巡ってトランプ派議員とトランプ批判派議員が激突することになる。『ニューヨークタイムズ』は「トランプ大統領がアメリカの選挙制度を深刻なまでに破壊したことに対する嫌悪感を多くの共和党議員が共有していると確信しているという考えを反映したものだ」と解説している(”Liz Cheney Chooses Her Own Path, and It’s a Perilous One”, 2月3日)。

 チェイニー議員はブッシュ政権の時のディック・チェイニー副大統領の娘である。いわば伝統的な共和党の主流にいる人物でもある。共和党のエリートであり、それだけトランプ支持派の共和党議員の攻撃を受けやすい立場にあった。

 この争いはトランプ支持派とトランプ批判派の“代理戦争”の様相を示していた。トランプ後の共和党の報告を知るうえで極めて重要な出来事でもある。共和党内のトランプ派議員は、“敵を利する行為”であるとチェイニー議員を激しく批判した。その急先鋒に立ったのは「Freedom Caucus(自由議員団)」と呼ばれるトランプ支持派のグループであった。同議員は下院共和党指導部のナンバー3の地位(共和党会議議長)にあり、批判派議員は同議員を指導部からの排除を求めた。オハイオ選出のジム・ジョーダン議員は「チェイニー議員は圧倒的に弾劾に反対した共和党を代表する立場にない」という声明を出している。トランプ派議員は支持者を動員して議会の外で集会を開き、数百人の参加者は「No More Cheney」とチェイニー議員を攻撃した。

 チェイニー議員の解任を求めるトランプ派に対し、マッカーシー院内総務は「私は同議員がその地位に留まることを望んでいる」と擁護に回った。また元共和党会議議長を務めたことのあるキャシー・ロジェ―ス議員も「今、指導部を変更する時ではない」と間接的にチェイニー議員を支持する意向を示した。

 2月3日に行われた秘密会議でマッカーシー院内総務は、チェイニー議員支持を支持する印象的な演説を行ったと伝えられている。投票が行われ、解任反対が145票、賛成が61票で、圧倒的差で解任提案は否決された。賛成票が61票に留まったということは、多くの共和党はチェイニー議員を懲罰することに躊躇したといえる。トランプ支持派の敗北である。言い換えれば、共和党内には多数の“隠れ穏健派”や“隠れトランプ批判派”が存在していることを示唆している。

チェイニー議員がトランプ前大統領と陰謀論を公然と批判

 チェイニー議員は日曜日(7日)のFox Newsに出演し、「共和党の人々は間違っている。彼らは首都ワシントンで起こった事態の背後にBlack Lives MatterやAntifaが存在していると信じている。それは真実ではない」とトランプ派議員とQAnonの陰謀論を否定する発言を行っている。さらに「トランプ大統領は何カ月もの間、選挙が盗まれたとうい意見を拡散している。それは嘘である。人々は、そのことを理解しなければならない」と厳しい言葉でトランプ前大統領を批判した。トランプ前大統領が在任中なら考えられない発言である。「我が共和国にとって最大の脅威は、憲法よりも自分の利益を優先し、国家の利益よりも自分の利益を優先する大統領である」とも発言している。

地元ワイオミング州共和党のチェイニー議員批判

 だがチェイニー議員の地元のワイオミング州の共和党組織は逆の判断を下した。同州は圧倒的にトランプ支持の州であり、大統領選挙でトランプ大統領は70%の票を獲得している。ただ同州ではチェイニー一家は尊敬されている。地元に強固な支持基盤を持つことが、チェイニー議員が独自の道を歩む背景にあった。ただ州共和党はトランプ支持派が多数を占めている。74名で構成される州共和党中央委員会に同議員の辞任を求め譴責決議が提出された。譴責案には、チェイニー議員の即時辞任を求める文章が含まれている。さらにチェイニー議員は「有権者の信頼を損ない、ワイオミング州の大多数を誠実に代表することなく、党を代表する義務を無視した」と、極めて厳しい口調で批判している。同時にワシントンの暴動は「BLMやAntifaが扇動した」という陰謀論を支持する内容まで盛り込まれている。

 チェイニー議員は州共和党の中央委員会に出席せず、声明を発表した。その中で同議員は「私がトランプ大統領弾劾決議に賛成票を投じたのは、私は憲法に宣誓したことから止むにやまれず取った行動である。ワイオミングの市民は、私の憲法への宣誓が政治や党派に屈したものでないことを知っている」と、自らの行動の正当性を訴えた。

 ワイオミング州共和党中央委員会のチェイニー議員譴責決議の投票は7日に行われる。本記事を執筆時点では投票結果は分からない。ただ事の推移を見る限り、譴責決議は採択される可能性が強い。譴責決議に反対する委員は74名のうち8名に留まるとの報道もある。譴責問題で話は終わらない。2年後の中間選挙の共和党予備選挙で再選を求めるチェイニー議員に対して対抗馬を立てる動きがでている。トランプ支持派の反対派潰しは徹底している。

反対派追い落としの常套手段

 トランプ支持派の共和党の地方組織は反トランプ派の議員や知事などを相手に相次いで譴責決議を提案している。南カロライナ州の共和党は、チェイニー議員同様にトランプ弾劾決議に賛成したとして、トム・ライス議員に対する譴責決議を提出している。アリゾナ州の共和党もドウグ・デュシー知事、ジェフ・フレーク前上院議員、故ジョン・マケイン上院議員の妻のシンデフィ・マケインをトランプ大統領に反対したとして譴責決議を提案している。

 多くの共和党議員、特に2年毎に選挙が行われる下院議員は常にトランプ前大統領の影に怯えている。在任中からトランプ前大統領は自分に反対する議員を対象に徹底的にツイッターを使って個人攻撃を行い、選挙では豊富な資金を背景に対抗馬を出し、共和党から排除しようとしてきた。トランプ支持派の草の根グループは同調し、共和党予備選挙で対立候補を擁立し、選挙では支持者を動員して対抗馬が指名を受けるように動いた。

共和党の将来はどうなるか

 日本人になかなか理解できないのは、なぜトランプ前大統領が保守層に根強い人気を持ち続けているかである。間もなくトランプ前大統領の2度目の弾劾裁判が始まる。ギャラップ調査(「Americans’ Views of Impeachment, Trump’s Record on Issue」2月8日)によれば、弾劾賛成は全体の回答者の52%、反対は45%であった。弾劾賛成派が圧倒的多数というわけではない。党派別では、その違いが鮮明に出てくる。民主党支持者のうち89%が弾劾賛成であるが、共和党支持者ではわずか7%に過ぎない。共和党支持者の88%がトランプ前大統領の弾劾に反対している。ついでに指摘しておくが、共和党支持者の70%以上が今でも「選挙は盗まれた」と信じている。

 個別政策でも、トランプ大統領、オバマ大統領、ブッシュ大統領の実績比較でみると、国防軍事、エネルギー、経済、税制、テロ対策、犯罪などの分野で最も成果を上げた大統領はトランプ大統領である。オバマ大統領は教育、環境、医療の分野で最も高い評価を得ている。ブッシュ大統領は人種関係のひとつの分野だけである。日本から見ていると意外な結果である。

 現在でもトランプ前大統領は共和党に対して隠然たる影響力を持っている。共和党は「トランプの党」と言っても過言ではない(「House Dems move to yoke GOP to QAnon」『Politico』2021年2月2日)。また言い換えれば、「ポピュリストの党」ともいえる。ワシントンのエリートに反感を抱く白人労働者やエバンジェリカル、ティー・パーティ派がトランプ前大統領の重要な支持基盤となっている。これは“トランプ連合”と言われている。

伝統的な保守主義の共和党は既に消滅している。さらに言えば、共和党は「カルト政党」になっているとの指摘もある(「The Republican Party Is Dead. It’s the Trump Cult Now」『The New Republic』2020年11月16日)。

 共和党は今後もトランプ前大統領の陰で存在し続けるのだろうか。今回の共和党内のトランプ支持派とトランプ批判派の対立がどうなるかで、共和党の将来は決まるだろう。トランプ前大統領は自ら第3の政党を設立するとの見方も出ている。共和党のトランプ支持派がトランプ前大統領に寄り添おうとしても、トランプ前大統領が拒否するかもしれない。トランプ支持層が離反すれば、共和党の弱体化は避けられないだろう。

民主党の深謀遠慮の戦略

 この機会を利用しようと戦略を練っているのが民主党である。先に指摘した『The New Republic』の記事は、タイトルが示すように共和党とQAnonを一体化させることで民主党は選挙で勝利することを画策している。今回のグリーン議員に対する排除決議を強行したのは、共和党議員に対する踏み絵でもあった。選挙民に共和党は「QAnonの党」であると印象付ける作戦である。既に民主党はQAnonに近い共和党議員をターゲットにテレビ・コマーシャルでQAnon派の議員だと非難する広告を流している。共和党議員はジレンマに直面している。共和党の予備選挙で勝利するには草の根のトランプ支持層の支持が絶対に必要である。だがトランプ前大統領の支持基盤に依拠しすぎると、本選挙で厳しい選挙を強いられることになる。

 トランプ前大統領が去り、野党になった共和党に最初の亀裂が生じた。この亀裂が拡大するのだろうか。新しい共和党再生への歩みが始まるのだろうか。民主党も2年後までにバイデン大統領の政策が奏功しなかったら、中間選挙で敗北する可能性は十分にある。アメリカ政治の混迷は当分続きそうである。

ジャーナリスト

1971年国際基督教大学卒業、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)、東洋経済新報社編集委員を経て、フリー・ジャーナリスト。アメリカの政治、経済、文化問題について執筆。80~81年のフルブライト・ジャーナリスト。ハーバード大学ケネディ政治大学院研究員、ハワイの東西センター・ジェファーソン・フェロー、ワシントン大学(セントルイス)客員教授。東洋英和女学院大教授、同副学長を経て現職。国際基督教大、日本女子大、武蔵大、成蹊大非常勤講師。アメリカ政治思想、日米経済論、マクロ経済、金融論を担当。著書に『アメリカ保守革命』(中央公論新社)など。contact:nakaoka@pep.ne.jp

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