海外と比較して気付いた「日本の公教育は水準が高い」 ただ、多様性理解には課題も  小島慶子さんと語る

(写真:ペイレスイメージズ/アフロ)

夫が会社を辞めたことを機にオーストラリアに移住し、一家の大黒柱として日本との行き来をして「出稼ぎ」する小島慶子さん。2017年から駐在妻としてシンガポールに住むことになり、リモートで仕事をするジャーナリストの中野円佳が対談。海外と比較して感じる日本の教育のメリット・デメリットについて聞きました。

※2018年夏に実施、海外×キャリア×ママサロンで配信したトークイベントを再編集したもので、BLOGOSからの転載です。(から続く)

小島:息子たちは小2と小5まで日本で地元の公立の区立の小学校に通っていたんですけど、オーストラリアに来て、日本の教育のレベルの高さは実感しました。二人とも公立の小学校のごく普通の子だったんですよね。進研ゼミの教材なんて平均点98点とか、みんな親に手伝ってもらってるんじゃないかと思うくらい高いですけど、普通に50点とか。にもかかわらず、オーストラリアに行くと、まず算数の天才が引っ越してきたっていう感じでざわついていたらしいんですよね。

中野:それはいいような悪いような‥‥でも自己肯定感的にはいいですよね。

小島:最初IEC(非英語スピーカーのための専用プログラム、インテンシブ・イングリッシュ・センター)で2年目からは地元の公立中学校、小学校に入ったんですけど、「すっごい数学できるやつが来た!」みたいになって、彼らとしてもすごく安心できたみたいです。あと、体育も、私たちマットの耳はしまうとか、今日よーいどんだけで60分勉強しますとかって、細かく習うじゃないですか。

オーストラリアでは「はい走りますよ、どうぞ」という感じで裸足で走るのもありだし、コースアウトしてもこっぴどく叱られないし、けっこうゆるいんですよね。そこで、息子たちが走ると、「すっごい足速いやつがやってきた」「めっちゃリレー上手なんだけど」とかってなるんですよ。つくづく日本の教育はよくできていると思いました。

同調圧力や多様性のなさは課題

小島:ただそれが行き過ぎてしまっていたり、不必要な同調圧力とか、そういうところは改善の余地があるのではないかと思います。例えば、発達障害って日本ではネガティヴなイメージで学習支援も不十分だけど、長男が通っている公立のハイスクールでは発達障害が日本に比べるともっと身近な存在なんですね。

発達障害を持つ子どもたちは期末試験の時間を15分多くもらえるんですよね。1分だけでもいいし、15分フルに使ってもいいし、それで他の人と同じように成績がつくんです。そんなの不公平だとか言う親もおらず、「あいつ発達障害持ち」とかからかうこともなく、日常の風景として、「目が悪い子ってメガネかけてるよねー」的な感じでなじんでるんですよね。

発達障害というのは1つの多様性の例ですけど、日本ではまだ多様な学びに制度がついていけてないように思います。色々動きは進んではいますが、まだ浸透していませんし。友人が発達障害の子の学習支援をしているんですけど、普通の公立の学校だと、発達障害の子はただ置いて行かれるだけ。ところが、彼らに合った方法で教えると、すごくのびたりするんだそうです。公教育の標準装備としてそういう配慮があるといいですよね。

各国の歴史を学ぶことの重要性を実感 

中野:アジア人というマイノリティとして過ごすうえでは、お子さんには、どのようなことを伝えていますか?

小島:オーストラリアではアジア人は多数派ではないです。アジア人の中では中国の人が多くて、インド、ベトナム、タイなどいろいろ。特に中国系、インド系は教育熱心な家庭が多い印象ですね。日本人は少ないので、マイノリティの中のマイノリティという感覚です。

オーストラリアは1972年まで白豪主義という白人優位の国だったんですが、地理的に見ても欧米から遠いですし、かつての宗主国イギリスの勢いもいつまでも頼れないですから、73年以降はアジアと一緒に生きていくという多文化政策に切り替えている。多様性を尊重してみんなでやっていきましょうと謳っているので、日常生活であからさまな人種差別はないですけど、先住民との和解の問題や、中国との外交上の問題など、課題はいろいろあります。かつて日本が経済成長していた頃、、日豪の交流は盛んでした。私の世代では学校の外国語で日本語を習った人も多くて、親日家は多いです。

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息子たちには、歴史をきちんと勉強しなさい、と話しています。歴史というのはひとつの事実をAという国から見たとき、Bという国から見たとき、全く違う評価になるので、それも含めて勉強しなさい、と。将来あなたが、お友達とか一緒になった人と歴史の話になった時に、もう過去の不幸を繰り返さずにすむような関係を僕とあなたの間では作りましょうという話ができる人になりなさい、と。日豪はかつて敵国同士だったし、日中間にも不幸な過去があります。中国系の人がたくさんいる豪州で、日本人が生きていく上では歴史を知っておくことはとても大事です。何もオーストラリアで生きていくのに限らず、そうですよね。

あとは「バンブー・シーリング」、竹の天井という言葉について。オーストラリア社会では、アジア人はある一定以上のポジションにはなかなかつけない、というんです。だからアジア系の住民は、教育熱心なんでしょうね。マイノリティはうんと優秀ではないと競争には勝てない、という事実もあることも息子には言っています。

中野:シンガポールのいいなと思うところは、インド系の方も西洋系の方も多く、やはり多様なところ。私の息子も最初にはじめて海外に来て街中を歩いていたときは、肌の色自体が違うということに驚き、少し抵抗感がありそうでしたが、ローカルの幼稚園に通ってだんだんこの子はどこから来たとか、この子はシンガポール生まれだけどおばあちゃんはこの国にいるみたいなことを聞くと、世界地図とか歴史にも興味を持ち始めますよね。

小島:目に見えるって、意識しやすいからいいですよね。見た目や言葉や習慣が違う人を目にする機会が多ければ、多様性を肌で感じやすい。でも、実はここにいるみんなも同じように見えてすごく多様なんですよね。たまたましゃべっている言葉が同じで、見た目も髪も目の色も似ているから同じだと思ってしまいますけど。たぶん多様性に寛容であることって、身近なところでの「違い」に丁寧に向き合うことなのだと思います。

(了)

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