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「小1の壁」居場所がない!を解決する?学童保育ってこんなところ

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
英語教育がメインの学童保育も人気だ(写真:Paylessimages/イメージマート)

新入学の季節が近づいてきた。コロナ禍で在宅ワークの家庭が増えたものの、出勤や集中する時間が必要な保護者もいて、小学生の居場所に悩む。3か月の休校期間にゲームやYouTube漬けになった子も多く、留守番中の事件・事故、虐待の増加も報道され、改めて子供の居場所は大事だと思う。近年は、公立の学童保育が満員で入れない地域もあり、入れてもコロナ禍では利用の自粛を求められた。民間の学童保育は、学びのプログラムや送迎サービスがあり、コロナ禍も休まず対応してきた。公立と民間、それぞれの学童保育の現場について紹介する。

●アクティビティも多かった公立

 保育園は、長期休みがない。先生や友達に囲まれ、食事が出て、1日を通して安心して過ごせる。そんな生活に慣れている新小1の働く親は、これからの時期、春休みと入学後の居場所に悩む。筆者は、保育園で土曜・延長保育も利用し、娘も保育園が大好きだったので、早く終わってしまう学校に入る時は心配があった。1年生のうちは、公立の学童保育に入れて、娘にとって大切な居場所になっていた。

 学校が終わると公立学童保育に移動し、おやつを食べ、宿題をする。他に、遊んだり、工作をしたり、ダンスサークルに参加したり、アクティビティは多かった。夏休みや土日も、ダンス発表会や保護者会などイベントがあり、振り返れば盛りだくさんで忙しかった。夏休みは、保護者会が有料でお弁当を出す。コロナ禍では、簡素化された部分はあるようだ。

●2年生は「不承諾」友達どうし分断

 筆者はワンオペの時期もあり、公立学童保育を心の支えにしていた。自分が体調が悪くても、迎えに駆け込んだ。先生たちとコミュニケーションを取り、そういう状況が伝わっていると思っていたし、利用率も高かった。ところが、2年生になる際に役所から「不承諾通知」が来た。

 当時は、取材や出張・打ち合わせも多く、大学院に通い、研究活動も決まり、会社を退職後のキャリアを継続していた。もろもろの書類を提出した際、「在宅でできる仕事でしょう」「ちゃんとした仕事なの?」という反応をされた。ワンオペ状態であり、身内の支援がないという現状は考慮されない。特に母親はエッセンシャルワークでないと、認められない雰囲気が、公立保育園や学童保育にはある。

 筆者が自営だから落ちた、と思っていたけれど、たくさんのフルタイム共働き家庭が不承諾になっていた。一番の原因は、越境してくる子も多く新1年生だけでいっぱいになってしまったこと。だが、モヤモヤもあった。2年生以上で、ひとり親や病気など事情のある家庭のほか、わずかに入れた家庭の状況を聞くと、1年生の時の利用率がそれほど高くないとか、人手に困っていないとか…。

 待機順位や、入れない理由を問い合わせた家庭もあった。結局、どういう基準で選んだか不透明なまま、友達どうしは分断され、不承諾の保護者は疑心暗鬼になった。それから何人かは、クラブ活動や友達と過ごすことを選び、何人かは、学校内の預かりに移った。

子供だけで遊べる場も少ない
子供だけで遊べる場も少ない写真:アフロ

●遊んでばかりでいいの?

 民間学童保育は、こういう行き場のない家庭の受け皿になる。周囲でも、週に何回か、民間学童保育に行く子がいた。民間学童保育は、費用は高く、週に5日行ったら、月に5万~10万円ほどかかるところも。それでも「保育園に代わる安全な場所が得られて、習い事まであるなら」と出費を惜しまない親がいる。特に都市部で民間学童が人気で、そこには背景がある。地方出身だったり、高齢出産で祖父母も高齢だったり。コロナ禍に、高齢の身内には頼めなくなった家庭も多い。

 公立の学童保育は定員がいっぱいで入れない、もしくは詰め込みで環境がよくないという課題はあり、厚生労働省の基準によって指導員の研修や質を上げる工夫はしている。ただ国が「遊びと生活の場」と定めるように、もともとは「何かを高める場」としてあるのではない。

 公立学童保育で「学校の宿題をやろう」という時間はあるものの、必ずやる子ばかりではない。Aさんは「学童での勉強は自主的なもの。お姉ちゃんはやるけど1年生の息子には期待していません」。3児の母・Bさんは「長男は学童で宿題をやってこないから、帰宅して母親が見る」。

 学校では1日に4~5時間の授業があって何かを学んでいる。でも、夏休みや春休みは全く授業がなくなってしまう。コロナ禍の休校中もそうだった。「公立学童に入れたら安心だけど、遊んでばかりでいいの?」と感じる親もいる。コロナ禍で休校中、「ゲームやYouTube漬けで困る」と嘆く声をあちこちで聞いた。

 民間学童保育は、ピアノ・絵画・サイエンスなどオプションの習い事、夜遅くまでの預かり、学校や自宅・習い事への送迎、夕食といった至れり尽くせりのサービスが用意されている。特に、英語やプログラミングは、小学校での必修化に向け、いち早く乗り出していた。

●居場所の確保だけでなく「刺激を」

 Cさんは、息子が1年生のころ、英語やプログラミングができる民間学童保育と、公立の学童保育を併用していた。2年生以降は公立学童保育に入れないかもしれないので、居場所を見つけておくためだった。

 でも「公立の学童保育より、遅くまで預かってもらえる民間学童保育が必要」というわけではない。Cさんの子は毎日、とりあえず公立学童保育に行く。週に2日、民間学童保育から迎えの車が来て、プログラムが終わったら7時ごろに学校近くまで車で送られてくるのを、親が迎えていた。「公立学童保育で遊ぶだけではなく、何か刺激を与えたい」という理由だった。

 娘も、1年生の時に、その民間学童保育を訪ねて英語とプログラミングを体験した。アメリカンな内装にノリノリの音楽が流れ、社長からカラーコピーした英語の教科書を見せられた。プログラミングは、娘が以前に幼児教室で体験した簡単なものとは違って、専任の先生もついて本格的。筆者にはとてもわからないし、娘も難しいという。体力のある男子たちは、英語の歌に合わせて体を動かし、ゲーム感覚でタブレットに触れるプログラミングに目を輝かせていた。

 社長に何気なく聞いてみると、近くの人口が増えているエリアでもう1件、民間学童保育を始めるという。やはり「学童」はビジネスなんだ…。頭がくらくらした。良かれと思って紹介してくれたママたちには「学校が終わって、ここに来てプログラムをこなすのは刺激が強すぎるかな。体力のある子にはいいかもね」と説明し、我が家は撤退した。

●オールイングリッシュも人気

 他に「オールイングリッシュ」の民間学童保育も人気だ。スタッフとの会話はすべて英語でレッスンプログラムもある。預かってくれて、英語を仕込んでもらえるならという親心はわかる気がした。娘が1年生の時、学校の友達が通っている英語の学童保育を見学した。

 車送迎で、外遊びできる公園のそば。先生も正職員が多いという。外国人の先生や非正規スタッフは定着しないので、その点は安心だと思った。英語を自然に身につけるためメソッドがあるようだった。送迎車もドライバープラス、もう1人スタッフがいる。各地に支店があり、運営母体も大きい。

 レッスンを体験した娘も楽しそう。でも初めての学校生活に疲れている1年生が、車で来て「ノージャパニーズ」で夜まではつらいのでは? と感じた。いまどきの公立小学校では1年生から英語の授業があって、娘もイギリス人の先生に教わった言葉を復唱している。確かに筆者も英語教育には興味がある。

 オ―ルイングリッシュの民間学童保育に通わせているママたちに聞いてみた。実は行っている子のうち、何人かは辞めたがっているという。Dさんに「親自身の、英語をどうしてもやらせたいという強い思いが必要です」と言われ、それはそうだと納得した。若い世代の親は、我が子が将来、海外の大学で学ぶにも就職するにも、英語ができなければ不利になると考えているのだろう。

(講談社現代ビジネスに掲載した記事を再構成。後編では、民間学童保育を選ぶ際の注意点と、コロナ禍に気を付けたいことを紹介します)

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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