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「子供用マスク」探し求め…手作り・冷感素材・アベノマスクのリメイクも

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
ドイツでも夏休み後に学校が再開。多様なマスクをつける子供たち(写真:ロイター/アフロ)

新型コロナウイルスの影響で、一時は子供用マスクも店頭からなくなった。「ないなら作ろう」と、何種類かのマスクを作ってみた。その後、形も素材も多様なマスクが、手ごろな価格で売られるようになり、いくつか試して、暑さ対策や使用感を考えた。選択肢が増えたのはいいが、肌荒れや洗濯の悩みが生まれ、「マスク選びに疲れた」という家庭も少なくない。この半年の変化を振り返る。

〇変化の早い生活と共に

突然の休校になったのが3月。4月には緊急事態宣言が出され、自粛生活を送り、6月にまた世の中が動き出し…変化の早い生活も6か月が過ぎた。

マスクの使い方も、変化してきた。2月には、「マスク売り切れ」という報道が相次いだ。4月にリサーチした際は、水着生地や織物を生かしてマスク製造に乗り出したり、福祉事業所で縫ったり、各地で新しいムーブメントが起きていた。手作りマスクも流行し、筆者がプリーツタイプ・立体タイプなど数種のマスクを試作してまとめた記事は、多数の閲覧があり、関心の高さに驚いた(→「布マスク数種作ってみた・見た目と使用感は?「たたむ・1回縫う」方法も」)。

現在は、公共の場所でマスク着用を求められることが多く、飛沫防止やマナーとして一般的になり、デザインや素材・色柄も個人の好みで選んでいる。9月初め、ドラッグストアやスーパーに行くと、使い捨て・洗えるタイプなど、何かしらのマスクは手ごろな値段で買えるようだ。

一般の人が使うマスクの効果に関しては、専門家の間でも、様々な意見がある。素材によっても違うし、子供については、「何歳以下はしなくてよい」とか、「学校ではマスクが必要だけれど、熱中症にならないように外す」とか、呼びかけられている。この記事では、効果の検証が目的ではなく、一般的に手に入る子供用マスクを10種類以上、使ってみた体験を報告し、マスク選びに悩む家庭の例を紹介する。

初めての手作り。綿のはぎれを袋にして、両端にバイアステープを縫い付け、ヘアゴムを入れた。下は大人用のプリーツタイプ なかのかおり作成・撮影
初めての手作り。綿のはぎれを袋にして、両端にバイアステープを縫い付け、ヘアゴムを入れた。下は大人用のプリーツタイプ なかのかおり作成・撮影

〇手持ちのはぎれ・ハンカチで

今年2月までは、買い置きしてあった子供用の使い捨てマスクを大事に使っていた。だんだん、大人用よりも手に入らなくなり、ないなら作ろうと3月初め、子供用のマスクを縫ってみた。通学グッズの本を参考に、綿のはぎれを袋状にして、両端にバイアステープを縫い付け、100円ショップで買った長いヘアゴムを切り、ヘアピンを使って通した。プリーツでも立体でもなく平らで、子供にはちょうどよかった。

ハンカチを使った「縫わないマスク」も、インターネットで見かけて試した。授乳や赤ちゃんの入浴時に使った、小さめの白いガーゼハンカチがあったので出してきた。三つ折りにして、内側を安全ピンでとめ、切ったヘアゴムや、パンツ用の白い平らなゴムを合わせるだけ。分解して洗濯しやすいし、小学生の娘の感想によれば、最初に縫った綿のマスクより、肌触りがよいという。

でも、安全ピンが気になったため、同じ大きさのガーゼハンカチをたたみ、両端を三つ折りにして縫ってみた。肌触りがよく、5月の休校中までは、よく使った。三つ折り部分が厚ぼったく、かなり顔をおおうので、暑い日につけたまま外で遊んでいたら、体調が悪くなってしまった。6月に学校が始まってからは、涼しい日につけて行った。

複数作ったのは、赤ちゃん用ガーゼハンカチをたたんで両端を縫い、パンツゴムを入れたもの なかのかおり作成・撮影
複数作ったのは、赤ちゃん用ガーゼハンカチをたたんで両端を縫い、パンツゴムを入れたもの なかのかおり作成・撮影

〇子供の手作り・支給マスクリメイク

休校中、小学生の娘も、1回縫うだけのマスク作りに挑戦した。一つは、小さめのハンカチをたたんで端を1回縫って輪にし、ヘアゴムを通すもの(写真上)。もう一つは、よく見かける立体タイプで、「自衛隊 地本式」の型紙を縮小した。Tシャツを切りっぱなしで縫うだけだ。娘の着られなくなったレギンスを切って、真ん中を縫った(同下)。本来は布2枚を重ねるものだが、暑さを考えて1枚で作った。

一回縫うだけなら、小学生でも作れる なかのかおり撮影
一回縫うだけなら、小学生でも作れる なかのかおり撮影

5月半ば、政府支給の布マスク(アベノマスク)が届いた。ありがたくいただいたものの、大人には小さく、子供には大きい。何より、何重にもなっていて暑い。両端の縫い目をほどいて、開くと、大きな一枚布だった。それを半分に切ってたたみ、プリーツタイプの子供用マスクに縫い直した。ひもはそのまま利用した。検索すると、他の布と組み合わせたり、デコレーションしたり、切り取って立体タイプを縫ったり、様々なリメイクが紹介されていた。

政府支給の布マスク(写真上)を洗ってほどき、半分に切って縫ったプリーツタイプの子供用マスク(同下) なかのかおり作成・撮影
政府支給の布マスク(写真上)を洗ってほどき、半分に切って縫ったプリーツタイプの子供用マスク(同下) なかのかおり作成・撮影

その後、学校でも2枚、アベノマスクをもらった。リメイクする気力がわかず、涼しくなったら使ってみようか、必要なところに寄付しようか、考えている。

〇流通するも…暑さ対策は

6月以降は、街なかで子供用マスクが手ごろな値段で買えるようになった。100円ショップや商店街で売っていて、ソフト洗いしてから使っている。素材にこだわる人にはNGかもしれないが、洗い替えや予備でランドセルに入れておくものも含めて数がいるし、使い心地を試すにはちょうどいい。

素材にこだわらなければ、商店街や100円ショップでも買える なかのかおり撮影
素材にこだわらなければ、商店街や100円ショップでも買える なかのかおり撮影

さらに、「涼しい」「冷感」などとうたったマスクも、次々に生まれた。7月には、そうした素材だというマスクを何種類か試した。筆者自身、「汗がスッと蒸発する」ように感じるものもあったが、布で顔をおおうので、やはり暑い。使い捨ての不織布よりは涼しいけれど、「通気性がよい、または暑くないマスクって、本来の機能はどうかな」「熱中症は怖い」というジレンマがある。

ユニクロのエアリズムマスクは、6月の発売日に行列ができて、しばらく売り切れていた。7月に立ち寄ったユニクロの店舗にはたくさんあり、子供用のSサイズも購入した。見た目はしっかりしていて、顔に接するエアリズムの生地はさらさら。3枚で千円程度だ。

筆者がМサイズを使った感覚だと、3枚重ねだけに、息苦しさもあった。事前に、高性能の素材だけれど「夏用ではない」とアナウンスされていた。涼しくなったら使おうと思っている。早くも、新しいバージョンが発売されたそうだ。

発売からしばらくして買えた、子供用のエアリズムマスク なかのかおり撮影
発売からしばらくして買えた、子供用のエアリズムマスク なかのかおり撮影

最初に縫った綿のマスクは、暑くなってくると使い捨ての不織布より涼しそうで、学校でよく使う。アベノマスクのリメイクは、薄手で肌触りもいい。布の立体タイプも、使い捨てマスクよりは暑くない。

学校生活では、体育や給食を除いてはマスクをつけているという。文部科学省の対策マニュアルは8月、マスクは「常時着用」から「身体的距離が十分取れない時は着用」と見直した。熱中症対策を考え、「気温・湿度や暑さ指数が高い日はマスクを外す」ことも加えられた。8月の短い夏休みの間、娘が学童保育代わりの公的な預かりに行く時は、「玄関についたら、マスクをつける」と先生と約束し、守っていた。

9月になっても暑さが続き、マスクをして外を歩くと汗びっしょり。公共の場で子供がマスクをしていなければ、不快に思ったり、注意したりする大人もいる。学校では、狭い教室に30人以上。エアコンと換気をしていて、教室はそれほど暑くないという。寒くなれば、マスクが鼻やのどの保湿になる実感があると思うが…。

〇肌荒れ・洗濯の悩みも

子育て家庭では、「マスク選びに疲れた」との声を聞くようになった。「マスクをつけなければ」と頑張りすぎ、鼻周りが荒れて皮膚科を受診した子もいる。

何人かの母親からは、「手洗いが大変すぎる」「使い捨てを何種類か使っていて、どのマスクを基本にすればいいか、わからない」との嘆きがあった。確かに、機能や肌触りや、いろいろ考えて試していくと、きりがない。とりあえず子供用に、エアリズムを用意したという。涼しいかもしれない、洗濯機で洗える、というところにある程度、納得したのではないかと思う。

学校再開のころ、マスクと熱中症対策をどうするか、心配がつのった。何人か、子育て中の医療関係者に聞いてみた。「麻とか、素材を考えてみては」「ゴムの長さを調整できるようにすると、息苦しさも減る」といった素材面の工夫のほか、「室内は、しっかり冷房してマスク。学校の行き帰りは外して、距離をキープして、私語禁止」という行動面のアドバイスがあった。実際、これらの対策を少しずつ取り入れ、つけ外ししながら乗り切ってきた、というところだろうか。

子供が小さいうちは、つけたり外したりの判断が難しいし、外すとなくすという問題もある。これからの秋冬、また来年の暑い季節に向け、コロナにまつわる状況がどうなるかわからないが、大人が見守り、一緒に試行錯誤しながら、マスクと付き合っていくことになりそうだ。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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