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布マスク数種作ってみた・見た目と使用感は?「たたむ・1回縫う」方法も

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
立体タイプ。ゴムひもは売り切れで、切った古タイツを利用 なかのかおり作成・撮影

政府配布の布マスクが届き始めた。様々な意見があるものの、外出時のエチケットとして必要なマスク。使い捨てマスクはなかなか手に入らず、不安にかられてドラッグストアに並ぶ人も多かった。そんな中、「貴重なマスクは必要な人に回してもらい、日常生活で使うぶんは自分たちで作ろう」という動きが盛んになっている。縫い物が苦手な人には、「ハンカチをたたむだけ」「1回縫うだけ」のレシピもある。筆者も、様々なタイプを作ってみた。

〇常時マスクを着用してきた実感

筆者はのどが弱く、一年中、マスクを使用している。夏場は、エアコンがのどに厳しいので、就寝時もマスクをする。冬場はインフルエンザの予防接種をした上で、マスクを着用してきた。

そんなわけで、使い捨てマスクはある程度、備蓄してあった。ところが新型コロナウイルスの感染が拡大するにつれ、手に入らなくなり、使い捨てマスクをソフト洗いした。繰り返すとよれっとしてくるし、備蓄を使いきるのも心配で、布マスクを作ってみることにした。

マスクについての報道を見ると、「マスクは予防効果がない」といった専門家の意見もあった。筆者としては、マスクをしていればのどが保湿され、していない時に出歩くとイガイガが残るという実感がある。知人の医師に、ざっくばらんな意見を聞いてみたところ、以下の通りだった。

●気づかず感染している可能性もある。他人にうつさないために有効

●ウイルスがすりぬけずに、表面に付着する形でおさまる確率を上げる

●鼻や口を触ることを防ぐ

●鼻や口の粘膜を健常に保ち、ウイルスを排除する力を保つ

→あるなら、した方がいい、ないなら代用品を。医療従事者にとってのマスクは、意味が違う。

厚生労働省のサイト「布マスクの全戸配布に関するQ&A」にも同様の記述があり、散歩していてもスーパーに行っても、マスクをしていないと周囲に不安感を与えてしまうので、一般の人が日常的に使用するのに、布マスクがあればプラスになると思った。

〇子ども用マスクから試作

3月初め、手持ちの通学グッズの本にのっていた、子ども用のマスクを縫ってみた。はぎれを袋状にして、左右にバイアステープを縫い付け、100円ショップで買った長いヘアゴムを切り、ヘアピンを使って通した。

ハンカチを使った「縫わないマスク」も、インターネットで見ていくつか試した。授乳・赤ちゃんの入浴時に使った、小さめの白いガーゼハンカチをクローゼットから出してきた。三つ折りにして、内側を安全ピンでとめて、切ったヘアゴムや、パンツ用の白い平らなゴムを合わせるだけ。

分解して洗濯しやすいし、小学生の娘の感想によれば、最初に縫ったマスクより、肌触りがよいという。でも、安全ピンが気になった(子ども用のマスクについては、別の機会に紹介したい)。

〇「ハンカチたたむだけ」も便利

大人用では、ハンカチメーカー「川辺」の「ハンカチマスクの作り方」を実行した。たたむと布が重なるので、初めは息苦しさを感じた。輪になって売っているヘアゴムをそのまま使うときついという声もあった。

だが、ハンカチの大きさや、たたみ方で、調節できるようになった。顔に合わせて上下にずらし、鼻のあたりは薄くして、就寝時のマスクとして利用している。ハンカチがそのまま使えて洗いやすく、ヘアゴムとハンカチを持っていれば、外出時にもすぐできるのがいい。いただきもので使っていないハンカチは、どんな世帯にもあるのではないかと思う。

少し手を加えて、ハンカチを重ねてひも通し用に両端を折り込み、2か所だけ手縫いするマスクをいくつか作った。布が重なるため、洗った後の干し方は工夫がいる。ガーゼハンカチのほか、手持ちの手ぬぐいハンカチも使用した。

縫ってみた子ども用(上)と、大人用プリーツタイプのマスク なかのかおり作成・撮影
縫ってみた子ども用(上)と、大人用プリーツタイプのマスク なかのかおり作成・撮影

〇プリーツタイプをミシンで

インターネットで、様々な型紙や作り方が見られるようになっている。まず、プリーツタイプを作ってみた。

布は、自宅にあった綿のはぎれを発掘した。表は白っぽい色が土台の柄物を選び、裏布はクリーム色の無地にした。作り始めは、「衛生品だから、清潔感のある色柄がいいかも」と思っていた。ひもは、パンツゴムやヘアゴムを切ったものを使った。

ダウンロードした型紙を切り取り、布にあてて待ち針でとめ、そのままはさみで切る。手縫いでも十分だと思うが、ミシンだと縫い目が頑丈になり、すぐできた。

プリーツは、使い捨てマスクを参考にして折りたたみ、待ち針で止めて縫った。プリーツたたみの部分は、裁縫に慣れていない人には、少し手間かもしれない。見た目は小さいけれど、着用すると鼻からあごまですっぽり入った。大きめが好きな人は、男性用の型紙を使うといいと思う。

〇フィット感のある立体タイプ

次に、立体タイプを作った(タイトル下の写真)。ミシンをかける回数は増えるが、縫っていくだけだ。着用してみると、立体タイプが一番、顔にフィットする感じがした。

筆者の場合、老眼がきつかったものの、縫い物に慣れていたため、ミシンで作るタイプは一つ30分ほどで完成した。縫い物が得意な人は、売れるレベルの布マスクを作っているし、「玉どめと糸通ししかできなかったけれど、手縫いでマスク作りにはまっている」という人もいる。

マスクぐらいの大きさなら、形がすぐ見えてくるので、工作のようなおもしろさがあり、好きなデザインを選べる。衛生面を考えて、ひと手間加え、キッチンペーパーをはさむポケット付きの作り方もあった。

参考にあげると、おなじみの手芸店「ユザワヤ」のサイトでも、いくつかのタイプの作り方が紹介されている。

布マスクの洗い方に関しても、様々な意見がある。気になる人は、経済産業省や「花王」サイトなどで、推奨の洗い方を見られる。筆者の場合、自宅周辺で使用した布マスクは、ソフト洗い用の洗剤で洗っている。

〇「ハンカチたたみ1回縫う」も簡単

他に、縫い物が苦手な人や子どもにも作れて、使いやすいと思ったのは、「ハンカチをたたんで、端を1回だけ縫い、ひもを通す」ものだった(伊藤まさこさん「ハンカチでマスクを作ろう。」ほぼ日)。

縫う部分が少ないので、手縫いで気軽にできるし、ひも通しの道具がなくても大丈夫だ。ほどけば、ハンカチに戻せる。小学生の娘にも、縫うことができた。輪になっているため、顔に合わせてずらしてもばらけず、洗った後も乾きやすい。

そしてマスク作りのラストには、立体タイプを追加した。流行りの黒マスクを見ているうちに、「派手な柄もいいのでは」と思うようになり、自宅にある布の中で、はっきりしたリバティプリントを使った。

4月には100円ショップやスーパーでヘアゴム・パンツゴムが売り切れていた。古タイツをひもにする、という情報を知り、試してみた。

古タイツを1.5センチ幅ぐらいに切って、引っ張ると、くるんとまるまってほつれない。ヘアゴムやパンツゴムより、ほどよく伸びる。ひもは、人によって快適な長さや強度がそれぞれなので、長めにとって、結び目を表に出しておくと、すぐ調節できる。

これで手作り布マスクは、子ども用と合わせて10点以上になった。古タイツを利用したひもと、ハンカチの組み合わせでもできるので、毎日、洗える。

〇広がる可能性…新しい文化に

休校、緊急事態宣言と、めまぐるしい変化があったこの1か月半の間に、布マスク作りの試みが広がっている。リサーチすると、全国各地で、様々な分野のプロがクリエイトしている。

主体は水着・下着・染物・ニット・絹織物のメーカーや、障害者が働く福祉事業所など、多様だ。スポーツチームのロゴや、キャラクターグッズの布を使った商品もある。

さらには、ハンカチをおくだけのフレームや、布を挟むだけのクリップも販売されている。スカーフを口元にぐるぐる巻いている人も見かけた。工夫次第で、可能性が広がるものだ。

休校中の子どもが挑戦したり、老舗すき焼き店の従業員が縫って寄付をしたり、新しい行動や交流のきっかけにもなっているようだ。トライする著名人も多く、落語家の林家たい平さん、パリ在住の作家・辻仁成さんも、ブログでマスク作りの報告をしている。

どんな人にとっても、先が見えず、緊張する毎日が続く。在宅ワークや家事をしている大人も子どもも、ストレスがたまっている。自粛する中で、医療や生活必需品のために働いている人たちに感謝しつつ、できる人は縫い物に没頭したり、企画を考えたりすると、いっときでも前向きになれるかもしれない。新しいファッション・文化の一つとして、創造を楽しめるのではないかと思う。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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