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「THE W 2023」で一番得をしたのは誰なのか。

中西正男芸能記者
(写真:アフロ)

女芸人ナンバーワン決定戦「THE W 2023」を制したのは「紅しょうが」でした。

ネタの出来、華、やり切る力。きちんと強い選手が勝った。そんな結果だと心底思います。

お二人の功績が何ら濁ることでもない。ここから相応の光が当たることになりますし、新たなスターが生まれることは好ましいばかりのことです。

ただ、この戦いで「紅しょうが」以外に得をした。勝利という光の当たり方ではないが、しっかりと光を放った。そんな存在があるとすると「ハイツ友の会」だと思います。

自己主張の強い陶芸家とそれを言葉の切れ味で切り崩していくライターさんのコント。センスしかない流れでした。

空気や声のトーンが揺るがない平坦な世界にワードセンスでアクセントをつけていく。関西では独特の存在感で注目もされているコンビですが、僕が開催しているイベント「中西正男の僕でよければお聞きします」にも出演してもらいました。その後に、LINEヤフー拙連載でもインタビューをしましたが、イベント、そして取材と2時間ほどしゃべっていても、一切空気が揺るがない。それをやり切る圧倒的な度胸を見ました。

男女問わず、売れている多くの芸人さんに共通している要素は“怖さ”だと思っています。最後は何をしてでも笑いを取る。何かあれば、何をするか分からない。そんな狂気に裏打ちされた怖さが色気になっていく。

ビートたけしさん、松本人志さん、太田光さん、千原ジュニアさん、小籔千豊さん、有吉弘行さん…。売れている人の目には怖さと狂気があります。女性の芸人さんでも、上沼恵美子さん、友近さん、そして、今回の出場者でもあるがすでに地位を確立しているゆりやんレトリィバァさんの目にもその光が宿っています。

その光があるのが「ハイツ友の会」。これは他の出場者の方々との大きな違いであり、その空気を大きな場で見せることができた意味は甚大だと感じました。

そして、この日、大きな得をゲットしたのは、司会の山里亮太さんだったと思います。「フットボールアワー」の後藤輝基さんが体調不良のため、急きょピンチヒッターで登場。

そんな中で、漫才、コント、ピン芸と芸の幅も多岐に渡り、キャリアも、実績も、腕前も千差万別の出場者全員を尊重しつつ、的確にイジって、エンターテインメントに昇華させる。しかも、それを生放送で時間を見ながらやり切る。

「ハイツ友の会」の西野さんが「紅しょうが」の稲田さんの私服を絶妙な刃でイジる。少し分かりづらさもあった言葉遣いを端的に翻訳しつつ「エールの交換とさせていただきます」と素っ頓狂な収め方でポップに締めくくる。

敗者のコメントを求められたゆりやんさんが顔面を生地に押し当てて、独特の感情表現をした際にも「何かへのオマージュだったんでしょうか」と必要最小限の言葉数で後味爽やかな笑いに転化させる。

ハイスパートな磁場で場を盛り上げ、敗者の弁で「また優勝狙って来てやる」と案外真っ当なコメントを叫んだあぁ~しらきさんに対しては「すごく真っすぐなコメントをいただきました」と時空のズレを調整しながら笑いを生む。

達者だからこそ、突然の流れでオファーが来る。達者だからこそ、達者に全うする。当然のことではあるのかもしれませんが、それをやり切る姿に、改めてポテンシャルの奥行きが透けて見えた気がしました。

ただ、言うまでもなく、主役は出場者の皆さん。山里さん、もしくは後藤さんが何をしたところで印象に残らない大会。そんな3時間が生まれた時に「THE W」は、また次のステージに行くのだと思います。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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