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愛人を公言する“けもの道”。結成30年の「2丁拳銃」が歩む今と、見据えるゴール

中西正男芸能記者
30周年を迎えた「2丁拳銃」の小堀裕之さん(左)と川谷修士さん

結成30周年を迎えた漫才コンビ「2丁拳銃」。ツッコミの川谷修士さん(49)は妻で放送作家の野々村友紀子さんとの絶妙なバランスで注目を集め、ボケの小堀裕之さん(49)は愛人の存在を公言する“ヘドロパパ”キャラを歩んでいます。時間を積み重ねる中で醸成されたオンリーワンの道。その中で今考えること、目指すものとは。

怒られる意味

小堀:30周年の今年も、100分ノンストップの漫才を披露するイベント「百式」を東京と大阪でさせてもらいます。

この節目でも感じてますけど、やっぱり漫才とは切っても切れない縁がある。僕らのこれまでを考えると、そういうことになるんだろうなと思います。

1993年に地元・大阪で活動を始めて、2000年に東京に出てきました。03年にコンビ結成10年のラストイヤーで「M-1グランプリ」の決勝に出ました。

そこから11年後の14年に「THE MANZAI」で決勝進出。そして、今年また芸歴16年以上の中堅を対象にした漫才の賞レース「THE SECOND」が始まりました。

ほぼ10年刻みで漫才に強く向き合うことになるというか、結局、その流れの中にいるんやなと痛感しています。

特に、今はもう芸歴的に寄席ではトリを取ることも増えてきて、絶対にスベったらアカン立場になっています。となると、やるネタも定まってくる。

コンビとして停滞というわけではないけど、なかなか新たなことに踏み出しにくいところで、自分らにも参加資格のある漫才の賞レースができたわけですからね。本当に漫才との縁を感じます。と言いつつ、僕は漫才以外にだいぶ“浮気”してきましたけど(笑)。

修士:確かに、30年、漫才を軸にやってきました。それと、ここまで続けてこられたのは、皆さんからたくさん怒られたから。そして、これは良いのか悪いのか、怒られたことをまだ乗り越えられていない。その思いがあるから、今も続いているんだと思います。

怒るのはもちろん怒るほうも大変なことで、怒るためには相手をしっかり見ておかないといけない。見続けた上で「ここはおかしいんじゃないか」を言うわけですからね。怒られるということ自体が、非常にありがたいことだと心底思います。

先輩からもたくさん怒ってもらいましたし、同期の小籔(千豊)にも、これでもかと怒られてきました。でも、それが原動力になる。その積み重ねの30年だったとも思います。

小堀:特に、小籔からは“逃げ道のない正論”というか、返しようのない言葉で怒られますからね(笑)。

近いところだと、去年しっかり怒られました。僕が何人も愛人を作って、家にお金をほとんど入れていないみたいな記事を小籔が見て、居酒屋さんで怒られました。

「遊ぶのはかまへんけど、今、ヨメさんにポンと100万円渡せるんか?」

自分の軸になるような仕事を成立させられているのか。人生において、何が一番大切な核の部分なのか。何をするのが芸人としての本分なのか。いろいろなメッセージが入った言葉だったと思いますし、それを言ってくれることが貴重なことだなとさすがに思いました。

モンスター

修士:僕に対しては小籔から「お前が甘やかすから、あんなモンスターができてしまったんや」とよく言われもします。

確かに、このご時世に“愛人”というワードが当たり前のように出てくる存在というのは、理解を超えているというか。そこは相方ながら強く思います。こちらもその都度、注意はしてきたんですけど、それでも甘かったのか。まさかの形で今に至ってますもんね。事実として。

小堀:自分で言うのもアレなんですけど、何なんでしょうね。包み隠さず言っていても、炎上もしない。

そもそも、そこまで僕が注目されていないのか、話がウソだと思われているのか。実際に女性を連れて歩いていたら「うわ、ホンマにいたんや」とびっくりされるようなこともありますしね。

一方でオイタがあったら、大きく報じられる芸人仲間もいます。この差は何なのか。どんな“ものさし”で世の中が動いているのかなとも思います。他人事みたいに言うわけではないんですけど。

修士:僕は相方ですから、どんな流れになっても、それはそういうものなので迷惑がかかってもいいんです。

ただ、相方のヨメに余波がいくとか、周りの方に迷惑がかかるというのだけは避けるべきだとは思っているんですけどね。

我が相方ながら、なんという形で今の世の中に存在しているんだとは思いますけど、先ほどの小籔や先輩方の言葉を借りると「お前が作った」とも言われます。ただ、自分でも相方を見て「なんやこれは」と思いますし、僕一人で作れるような代物でもない(笑)。それも思うことではあるんですけどね。

小堀:いろいろありますけど、やっぱり僕らにとっての軸は漫才です。何があっても、劇場に見に来てもらったら「さすが」と思ってもらう。それが芸人が見せる一つの正解だとも思いますし。

まずは少しでも早く「THE SECOND」で優勝する。そして、勝負のための漫才ではなく、ゆっくり漫才がやりたいですね。

今はリングに上がることを前提に「勝つための武器を作る」ような漫才重視に僕らもなってますけど、そうではない形に早く移行したいです。

ただ、リングがあるのに上がらないのも違いますしね。逃げたと思われるのも心外ですし。戦う場があるなら戦う。そして、結果を出す。ここに目を背けるとダメなんだとも思います。

修士:立派なことを言ってますけど、もうね、小堀君の体の衰えが最近は恐ろしいですから。漫才をしっかりやるためにも、そこはきっちりとキープしておいてほしいですけどね。

手の震えも激しいですし。この前、大喜利企画に小堀君が出たんですけど、手が震えるからフリップに書く文字が小刻みにブレてるんですよ。どんなにキレキレの答えを書いたとしても、書体で入ってこないと(笑)。

せめて、笑いの邪魔にならないくらいブレをなくす。もしくは、そのフォントで書いたほうが面白い答えを考えるか(笑)。

歳をとればとるほど味が出てくるのも漫才だと思うんです。「ザ・ぼんち」のお二人も、今、すさまじいまでに面白いですもんね。

できるだけ長くやって、あのようなレベルを目指してみたい。本当にそう思いますし、まずは相方に元気でいてもらう。そこをキープしつつ、積み重ねを続けていきたいと思います。

(撮影・中西正男)

■2丁拳銃(にちょうけんじゅう)

1974年1月9日生まれで奈良県出身の小堀裕之と、74年5月17日生まれで兵庫県出身の川谷修士が93年にコンビ結成。若手の頃からアイドル的な人気を誇り音楽活動も展開。2000年に東京に進出する。03年には「M-1グランプリ」で決勝進出(4位)。日本テレビ系「人生が変わる1分間の深イイ話」で小堀が家族を顧みない“ヘドロパパ”として紹介され、修士の妻・野々村友紀子に説教される流れが話題となる。ABCお笑い新人グランプリ優秀新人賞、NHK新人演芸大賞(演芸部門)大賞、上方漫才大賞新人奨励賞など受賞多数。ライフワーク的に開催している100分間ノンストップで漫才をするイベント「百式」を今年も開催。11月18日には東京・ルミネtheよしもとで、同26日には大阪・なんばグランド花月で行う。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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