Yahoo!ニュース

EXILE ATSUSHI、安室奈美恵、そして矢沢永吉。“キャプテン”がスターから愛される理由

中西正男芸能記者
多くのトップアーティストから慕われる“キャプテン”こと佐野健二さん

 ハワイのバンド「Kalapana」のメンバーで「EXILE」などの音楽ディレクター、バンドマスターも務め“キャプテン”の愛称で知られるベーシスト・佐野健二さん(67)。4月30日からのツアー「EXILE ATSUSHI LIVE TOUR 2023 "Heart to Heart" Season 2」にも出演しますが、これまで矢沢永吉さん、安室奈美恵さんらから厚い信頼を置かれてきました。縁をつむぐ生き方。そして、時間を共にしてきたスターに共通するものとは。

2時間で人生が変わった

 67歳になって「EXILE」とかLDHの若いメンバーから“キャプテン”なんて呼んでもらってね、どこまでも幸せ者だなと思います。ホンマに。

 なぜキャプテンなのか。よく言っているのは「EXILE」にはHIROという素晴らしいリーダーがいる。そこに、いきなり歳を取ったオッサンが2004年頃から加わることになった。一応、最年長だし、かといって「佐野さん」というのも堅苦しい。じゃ、リーダーではないのでキャプテンにしようかと。そこから、そう呼んでもらうようになっていったんです。

 そもそも、音楽の世界を意識したのは小学4年の頃でした。地元の神戸でアメリカンスクールに通っていた時、学校の先輩と「ビートルズ」の映画を見に行ったんです。

 それまで野球一筋だった僕がガツンと食らいました。「世の中に、こんなカッコいい人や音楽があるんや」と。衝撃を受けました。翌日には親父にエレキをねだって買ってもらって。映画の2時間で人生が変わりました。ま、太古の昔の話ですけど(笑)。

 野球は続けつつ、そこにバンド活動という新たな軸が加わりました。中学、高校と野球に打ち込みつつ音楽もやる。ラジオを駆使して海外の音楽も聞きまくる。そんな日々でした。

 そして、昔からあこがれていたメジャーリーガーへの夢をかなえるべく、アメリカの名門大学に入ったんです。高校時代はセカンドで打率も4割打っていたんで、自信はあったんですけど、さすがに本場は違いました。

 エエ格好して「どうせアメリカに行くなら一番のところに行く」と意気込んでいったものの、本当に一番強すぎて僕なんか出る幕がない(笑)。60人くらいの部員全員がメジャーを目指すようなところで、大学オールスターチームみたいなところでしたから。2メートルくらいのピッチャーが「どこまで落ちるんや…」というカーブを投げてくる。「なんじゃこりゃ」と。

 2年で泣く泣く野球をやめるということになったんですけど、バンドは続けていて。メンバーがハワイの人間で、その縁もあって「Kalapana」に入ることになったんです。

縁をつかみ取る力

 まさかアメリカで音楽をやるなんて思いもしなかったですけど、僕は基本的にポジティブに考えるんでしょうね。

 下積みと呼ばれるような時代、ボウリング場の片隅みたいなクラブで何十人のお客さんの前で演奏していた時も、つらいという気持ちではなく、楽しく前向きにやってました。少しでも喜んでくれる人がいたらうれしいと思って。

 若いヤツらにも言うんですけど、実はチャンスは飛び交っている。「オレはチャンスに恵まれなかった」みたいなことを言ってるオッチャンもいたりしますけど、それは自分を磨いてなかったからだと僕は思います。

 どこにいても、くさることなく前向きに腕を磨く。そうすればチャンスは自ずと巡ってくるし、自分自身でも「これがチャンスや!」と分かるはずなんです。エエ格好するわけじゃないんですけど、本当にそう思います。

 「Kalapana」の活動を始めてからも、日本のアーティストのプロデュースもやっていたら、ジェイ・グレイドンというとんでもないプロデューサーから世界ツアーや日本での活動を勧められました。身に余る光栄でもありましたけど、そこに乗らせてもらって今日に至るというところです。

 それこそね、こんなん自分で言うのはアレなんですけど、そうやって良いご縁をいただける何かがあるとするならば、感謝の心だと思います。

 実際、今年で68歳になりますけど、キャプテンなんていってくれて、ATSUSHIとかEXILEとツアーをやって、こんなしあわせなオッサンおらへんと心底思いますもん(笑)。

 だから常に笑顔にもなります。ちょっとでも見てくださった方が良かったと思ってもらえたら何よりうれしいですね。それが本当に一番うれしいことです。

 だから、せめてね、下の人らには自分が20年かかって学んだことを伝える。それは心がけています。教えられても簡単なことではないんですけど、もしそれを3年、4年で習得できたら、あと16年ほど他のことに使えるわけですから。せめて、それくらいはやらせてもらおうと考えています。

トップの共通点

 その結果、ATSUSHIもだし、矢沢永吉さんもだし、とても親しくさせてもらっていて。ATSUSHIなんかは僕よりずっと年下ですけど、心底すごいと思います。

 いろいろな人と一緒にやらせてもらってきましたけど、多くの人を惹きつけるスターに共通することは「ブレないこと」です。自分がやっていることを信じて、そこを突き進む。この強さをみんな持っていると僕は感じています。信念の力がすごい。

 カッコいいとか、歌がうまいとか、基本的にはそんな人間ばっかり来る世界ですから。それだけでは、ある程度のところまでしかいけません。そこから突き抜けてトップにまで行くために必要なものは信念です。何があってもやり抜くんだという気持ち。これはね、共通する部分です。

 本当にね、刺激に満ちた日々を送らせてもらっているので、これがどんどん楽しくなってきてるんですよね。50代の頃は「やるのは60歳までかな…」と考えてたんですけど、60歳になったら「65歳までかな」と。実際に65歳になったら「70歳までは」と思ってるんです(笑)。まだまだやる気はマンマンです。

 ただ、ステージをご覧になってるお客さんで「うわ、あのオッチャン、大丈夫か?」と思う方が一人でもいらっしゃったら、もう続けるべきではないと思っています。

 ちゃんと皆さんにストレートに喜んでもらえるフィジカルとメンタルがキープできているということが大前提です。そのためには体も保っておかないといけないし、節制もすべきなんですけどね。

 ただね、これは悪いクセで…。お酒を飲みだすと、ついつい、調子こいてしまうんです(笑)。若いヤツらと行ったらナンボでも飲んでしまいますしね。

「なんや、お前ら飲んでへんやんか!」

「いやいや、キャプテンこそ」

「そんなことないわ!いくらでも飲むがな!」

…いつもこんな感じで(笑)。ただ、それによって生まれる結束や勢いもあると思いますし、ま、アホなことも適宜やりつつ、走れるところまで走り続けたいと思っています。

(撮影・中西正男)

■佐野健二(さの・けんじ)

1955年8月6日生まれ。兵庫県出身。アメリカで過ごした大学時代をきっかけに86年にハワイのバンド「Kalapana」のメンバーになる。90年代、日本での音楽活動も本格化させ「EXILE」をはじめ、中山美穂、安室奈美恵、矢沢永吉らの音楽活動をサポートしてきた。愛称は「キャプテン」。4月30日の山梨県立県民文化ホールからスタートするツアー「EXILE ATSUSHI LIVE TOUR 2023 "Heart to Heart" Season 2」にも参加する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

中西正男のここだけの話~直接見たこと聞いたことだけ伝えます~

税込330円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

中西正男の最近の記事