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「隆はすごいなぁ」。藤井隆が語る父への最後の親孝行

中西正男芸能記者
今の思いを語る藤井隆さん(全ての撮影・倉増崇史)

今春からABCテレビ・テレビ朝日系「新婚さんいらっしゃい!」の司会を務めている藤井隆さん(50)。50年以上番組を盛り上げてきた桂文枝さんからバトンを受ける形となりましたが、これまで胸の内を明かすことなく大役と向き合ってきました。「正確にお伝えできればいいんですけど…」と丁寧に今の思いを言葉に置き換えていきました。

とにかく楽しい

 もっと気を遣ったり、疲れたりするものなのかなとも思っていたんですけど、とにかく楽しい。それが今の正直な思いです。

 最初にお話をいただいた時は「どなたかがお断りになったのかな?」と思いました。そしてびっくりもしました。「まさか、僕ですか」と。新人のフレッシュ感もなければ、司会者としての安定感もないので「僕で大丈夫ですか?」と。

 あとね、どう言ったらいいのか。これは本当にうまく伝わればなと思うんですけど、決して後ろ向きなことはなくて「あまりにも大きな番組だから」という思いがあったのも事実です。

 「新婚さん―」は、ずっと文枝師匠と山瀬まみさんが司会の番組だと思っていたので、司会者を替えてさらに続けるという判断をしたことに驚きました。司会のお二人の存在がとても大きく他の司会者じゃ認めていただけないかもしれない。最初はそう思いましたけど、今は「続ける」と決めた番組スタッフの皆さんについていき、教えていただこうと。

 急に図々しくなりますが、自分からやりたいと立候補したわけではないので(笑)。ダメでもともとの気持ちで始めることができたのが正直なところです。

 それに番組の主役は自分ではなく、出てくださる新婚さん。自分がなにか大きなプレッシャーを感じる方がおこがましいと思いました。精一杯やってダメなら次の方にまた変わるかと。「『新婚さん−』はやっぱり文枝師匠と山瀬さんじゃなきゃダメだった」という解釈で、とにかく全力でやっています。

 一緒に司会を務める井上咲楽さんからも力をもらっています。年齢は倍以上違いますけど、咲楽さんの頑張ろうという姿勢を見て自分も真面目に向き合おうと思いました。スタジオで横にいる咲楽さんが素直な感性で立ち向かっている姿を見ると新鮮な気持ちになれるので、緊張感を持って新婚さんとお話ができます。

 そして、これもきちんと正確にお伝えしたいんですけど、文枝師匠にご挨拶にあがった時にネクタイをいただきました。

 これって本当に感覚的なことなんですけど「さぁ、行ってらっしゃい」というやさしい空気で送り出してくださったなと。オシャレで楽しい番組のムードを手渡していただけた気持ちになりました。

 自分が20代の頃、新喜劇の超若手だった頃から文枝師匠にはお世話になってきました。

 番組に呼んでいただいてロケに行かせてもらったり、「しましまんず」の藤井輝雄お兄さんと“藤井同士”で相撲をとったり(笑)。本当にいろいろな機会を与えていただきました。その方から、やさしく、やさしく背中を押していただく。文枝師匠の“オシャレさ”を強く、強く感じました。

「おめでとう」という言葉

 大きな一歩を踏み出した今年、年齢的にも新たな年代に突入しました。自分の年齢が50だなんて、これはもうね、ひきます(笑)。ありきたりですが、中身だけが年齢に追いついてなくて笑ってしまいます。

 ただ、今回「新婚さん―」の司会をする情報が出た時に、本当にたくさんの方から「おめでとう」と連絡をいただいたんです。思い返せば、仕事で「おめでとう」と声をかけていただけたのはNHK紅白歌合戦や朝ドラに出していただいた若い時だったので、50歳になってまたこうして「おめでとう」と言っていただける仕事をやらせていただけることに感謝しています。改めて特別な番組であることを痛感しました。

 新型コロナの影響で「不要」という言葉と向き合うことになり、皆さんと同様に自分の仕事についていろいろと考えないといけなくなりました。稽古だけして本番が出来なかった舞台もありました。仲間が出演する舞台が途中で公演中止になったと聞いたりして「どうしたものか」と…。

 必要か不必要かの答えは出ないままですが、今、「新婚さん―」という新しい仕事が始まって、毎週日曜日のお昼過ぎに咲楽さんとテレビに顔を出させていただけてとても光栄に思っています。

亡き父の言葉

 この春に父が亡くなりました。一年ほど前に手術をして、それから入院したり退院したりしていました。父はこれまで僕の仕事にそんなに興味はなくて、テレビがついている時に僕が出ていたら見るぐらいでした。

 そんな父が手術も重なり体力的に大変そうな頃に「新婚さんー」のことを新聞で知ったらしく「隆が司会するの?」と聞いてきたんです。「ありがたいことに、そうやねん」と答えると「隆はすごいことをするんやなぁ」と喜んでくれました。

 父と仕事について話すことなんてこれまでほぼなかったので、そんなに楽しみにしてくれるんだと。それから「絶対に見る」と放送を楽しみにしてくれていて、初回の放送を見てから亡くなりました。

 亡くなる数日前に話したのですが、父なりに浮き沈みのある僕の仕事をずっと心配していたようです。僕自身はこれからも変わらず安心させてあげられる職業ではないですが、それでも最後に父を喜ばせてあげられたのは「新婚さん―」のおかげなので、本当に感謝しています。

 ひとりでも多くの方に楽しんでいただけるように、新婚さんが出演してみたいと思っていただけるよう収録に励んで番組に恩返ししたいです。

 自分にとって「新婚さん―」とは?ですか。ん~、これはね、まだまだ分からないですね。考えといたらよかったですね(笑)。

 答えはわからないですが、これからいろんな新婚さんと出会えるのを楽しみにして、咲楽さん、スタッフの皆さんと楽しい番組づくりを目指します。それしかないと考えています。

■藤井隆(ふじい・たかし)

1972年3月10日生まれ。大阪府豊中市出身。高校卒業後、サラリーマンをしながら、92年にはMBSテレビ「テレビのツボ」でテレビデビュー。94年からは吉本新喜劇をホームグランドに活動を始める。同期はたむらけんじ、ケンドーコバヤシ、中川家、陣内智則ら。2000年には「ナンダカンダ」で歌手デビューし、同年の「NHK紅白歌合戦」にも出場する。今春から桂文枝からバトンを受けABCテレビ「新婚さんいらっしゃい!」の司会を担当している。音楽活動も精力的に行っており、5月11日には全面プロデュースした「フットボールアワー」後藤輝基のカバーアルバム「マカロワ」がリリースされた。9月8日にはビルボードライブ大阪で、同15日にはビルボードライブ横浜で「マカロワ」リリース記念ライブ「SLENDERIE RECORD Presents後藤輝基LIVE マカロワ」が行われる。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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