ラグビー日本代表から「龍馬伝」「陸王」「24 JAPAN」。天野慶久を衝き動かす渡辺謙の背中

テレビ朝日「24 JAPAN」に出演中の天野慶久

 唐沢寿明さん主演のテレビ朝日「24 JAPAN」でSP・金田一忠役を演じている天野慶久さん(48)。明治大学、サントリーなどでラグビーのスター選手として活躍し、2010年にNHK大河ドラマ「龍馬伝」で俳優デビューしました。その後も、TBS「ノーサイド・ゲーム」「陸王」など話題作に立て続けに出演し実績を重ねてきましたが、指針としているのは渡辺謙さんの背中だと言います。

渡辺謙という指針

 今回「24 JAPAN」ではSPを演じているんですけど、これまでも、いろいろなお仕事をさせていただきましたし、いろいろな現場に行かせてもらいました。

 私自身の力というよりも、周りの方々の努力でその場で立たせてもらっているところが多々あるんですけど、それぞれに思い出と思い入れがあります。

 どの現場も、どの出会いも、感謝するばかりなんですけど、特に映画「ラストサムライ」にあこがれていた私からすると、渡辺謙さんとご一緒させてもらえたのは大きな経験だったなと。

 初めてご一緒したのはNHKのドラマ「負けて、勝つ 〜戦後を創った男・吉田茂〜」。そこから去年放送されたテレビ朝日「逃亡者」でもご一緒させてもらいました。

 事務所が一緒ということもあり、謙さんはゴルフをされるので、その相手というか、一緒にまわるメンバーとして時々お供させてもらうことはあったんです。ただ、日ごろから頻繁に食事に行くとか、そういうことは恐れ多くて。そういうお付き合いだったんですけど、去年のお正月明けに連絡をいただいたんです。「家に来てくれないか」と。

 てっきり、またゴルフのお誘いかと思ってたんですけど(笑)、実は、思いもよらない展開になりまして。

 去年、謙さんが舞台「ピサロ」に主演されるというお話があったんですが、そこに向けて台本の本読みを一緒にしてくれと。

 2月の途中からけいこが始まる流れだったので、それまでの1~2カ月。謙さんのおうちに泊まり込んだり、通ったりしながら、濃密な時間を過ごさせてもらいました。ご自宅はもちろん、近くのトレーニング場で一緒にランニングマシンをしながらだとか、とにかくずっとセリフの相手を務めさせてもらったんです。

 マネージャーさんがついていることもありましたけど、基本的には、謙さんと僕だけ。その中で、謙さんが演じるピサロ以外の全ての役を私一人で読んでいくんです。

 最初はとにかくセリフを入れたいから、抑揚も要らないのでフラットにセリフを言ってくれと。ただ、そこから読み合わせが進んでいくと、謙さんの中のイメージも膨らんでいって「この男はこういう感じでやってくれないか」と言われるようにもなりまして。

 もちろん、僕が全ての役を完璧になんてできないんですけど、凄まじいまでに、こちらの力量も問われるシチュエーションになっていきました。

 あくまでも、謙さんのけいこなんですけど、それと同時に、僕にとっても、この上ない“スーパー特訓”にもなりまして。

 本当にありがたいばかりですけど。相手を務めさせてもらう中で、句読点の意味だとか、セリフで相手に伝えるということだとか、あらゆることを教えていただきました。

 完全にゴルフのお誘いだと思っていたところから、まさかの日々を過ごさせてもらいました(笑)。

 それまでも、ゴルフの時は謙さんのおうちに泊めてもらったりもしてたんですけど、海外のミュージカル出演前の時期に泊めてもらったこともありました。

 朝7時ごろからゴルフに行くんですけど、朝5時ごろからオンラインでロサンゼルスとやりとりをしながら、舞台のセリフを全編フルボリュームで通して、劇中の曲も全力で歌われるんです。

 それを終えてから「行こうか」とゴルフに向かう。毎日のように、そのルーティンをやってらっしゃるんです。否応なく、プロフェッショナルの意味を思い知りました。

ラグビーの意味

 少しでも謙さんの域に近づけるように頑張らないといけないんですけど、この仕事をやる上で、自分が打ち込んできたラグビーで培った精神が役立っているとは感じています。

 特に、明治ラグビー部には“前へ”という精神が受け継がれています。これは、正面からぶつかっていき最短距離でトライをとるという物理的なこともそうですが、肉体的に精神的にも苦しい時に逃げずに戦えということです。これは私の人生哲学になりました。

 私がこの仕事を始めたのが36歳。今の所属事務所の会長にお声がけをいただいたのがきっかけでした。やらないで後悔するよりも、やって後悔した方がいい。そんな思いで一歩を踏み出したんですけど、スタートとして決して早くないです。そして、本当に正直な話、現場のみんながみんなウエルカムではないのも分かっていました。

 でも、踏み込んだ以上は前を向いて進むしかない。そこでチャレンジする気持ち、前へ進み続ける気持ちはラグビーで備わっていたものだったのかなと思っています。

 この仕事を始める前に、演技学校に通って技術の基本の部分はそこで学ばせてはもらいました。とはいえ、現場での空気は現場に入らないと分からないので、いざ本当にお仕事をするとなると、戸惑うことだらけでした。

 私が生まれて初めて本番で言ったセリフが大河ドラマ「龍馬伝」で福山雅治さんに対しての「坂本龍馬じゃ!」だったんですけど、今考えると、そのシチュエーションで、よくすんなり言えたなとは思います(笑)。

 そこで皆さんに言っていただいたのが「お前は物怖じしないよな」ということでした。これは、その後もいろいろな現場で言っていただいて、人間関係を築くきっかけにもなる言葉になっていきました。

 正直に言うと、物怖じはしてるんですよ(笑)。でも、それを見せても仕方がないし、その場に立ったなら、もう覚悟を決めてやるしかない。

 若い頃から国立競技場6万人の前で試合をさせてもらってきたので、そうやって“腹を決める場数”は重ねてきたつもりではあったので、そんな根性が知らず知らずのうちに養われてきたのかもしれませんね。

 そんなこんなで、おかげさまで10年以上、なんとか、今の仕事をやらせていただくことができました。

 今48歳です。「もう48歳」ととるか「まだ48歳」ととるか。ただ、僕は人の魅力は“挑戦し続ける姿勢”にあると思っているんです。可能性があるならば、そこに向かって走り続ける。そうありたいと考えています。

 それでいうと、ラグビーで海外に行っていた時期もありますもので、英語も多少はやってきたつもりですし、いつか海外の作品に携わることができればなとは思っています。

 とはいえ、謙さんの姿を見ていると、これは半端なことではないというのも痛感しますけど(笑)、だからこそチャレンジしてみたい。そう思う自分が、しっかりといるんです。

(撮影・中西正男)

■天野慶久(あまの・よしひさ)

1972年11月22日生まれ。東京都出身。国学院久我山高校で全国高等学校ラグビーフットボール大会ベスト8。明治大学在学中は全国大学ラグビーフットボール選手権大会で優勝2回、準優勝1回の成績を残す。大学卒業後はサントリーでプレー。日本代表にも選出される。サントリー退社後はスポーツ関連事業を展開する一方、2010年からケイダッシュに所属し、NHK大河ドラマ「龍馬伝」で俳優デビューを果たす。その後、NHK「負けて、勝つ 〜戦後を創った男・吉田茂〜」、TBS「天皇の料理番」、TBS「陸王」、NHK大河ドラマ「西郷どん」、TBS「ノーサイド・ゲーム」、TBS「義母と娘のブルース」、テレビ朝日「逃亡者」など話題のドラマに多数出演。現在放送中のテレビ朝日「24 JAPAN」ではSPの金田一忠役を演じている。

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。noteで「全てはラジオのために」(note.com/masaonakanishi)も執筆中。

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