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「ライセンス」藤原が明かす「電車に乗れなかった」過去

中西正男芸能記者
仕事への思いをストレートに語った「ライセンス」の藤原一裕

 7月12日に立ち上げたYouTubeチャンネル「フジワランド」が急上昇部門1位を獲得した「ライセンス」の藤原一裕さん(42)。これまでは特技のドローンに特化したチャンネルを展開してきましたが、様々な企画に体当たりで挑む内容にリニューアルし一気に注目度がアップしました。新たな一歩を踏み出す中、新型コロナウイルス禍で受けた衝撃、漫才への思い、そして、苛烈な過去などを赤裸々に語りました。

ドローンからフジワランドへ

 コロナによる自粛期間に入る少し前から「ドローン藤原チャンネル」という、ドローンに特化したYouTubeチャンネルを立ち上げてはいたんです。

 1年ほど前に、テレビ番組の企画でドローンを練習することがあって、そこから1年かけてアマチュア無線と、第三級陸上特殊無線技士という免許を取りました。準備万端整えて、この春からドローンのYouTubeでやっていこうと思っていたら、コロナが広がったこともあり、完全に止まってしまいまして。

 撤退するならば早い方がいいと思って、芸人としては後輩にあたるけど、ユーチューバーとしては先輩のカジサック(キングコング・梶原雄太)に話を聞きました。その結果、僕があらゆることに体当たりでチャレンジする内容にリニューアルして、チャンネル名も「フジワランド」に変えて7月12日から再出発したんです。

 YouTubeに関して、カジサックから聞いたロジックは目からウロコでした。分かっていたつもりではあったんですけど、まず「YouTubeとテレビは全く違う」ということを多角的に叩き込まれました。

 僕のことを手伝ってくださるディレクターさんも基本的にはテレビをやってらっしゃる方なので、カジサックの話を聞いて、一緒に驚いてましたね。これまで持っていたテレビの感覚をいったん横に置いて、YouTube用の感覚をゼロから作る。それをしないと、確実に失敗すると思いました。

 まず大きなところで言うと、テレビってコマーシャルが入るから、どうしても答えを引っ張るんです。「続きはCMの後に!」みたいな感じで。逆に、YouTubeは答えを先に見せてるんです。なんだったら、サムネイルで答えを言ってから、その答え合わせをしていくみたいな流れです。この感覚の違いは分かっているようで、分かっていなかったものでした。

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これまでとこれから

 それと、コロナで心底感じたのは劇場への思いでした。吉本興業の特徴としてよく言われるのが、全国にたくさんの劇場があるということ。もし、テレビに出られなくなったとしても、劇場は絶対になくならない。これまで、そう信じてたんです。でも、その劇場ですら、開けられない日が来ることがあるんだと…。この感覚は衝撃的でした。

 それだけに、先月19日から劇場が部分的に再開されて、久しぶりに漫才をやった時はとにかく楽しかったですね。最初は客席の12%ほどしかお客さんを入れずにやってましたけど、それでも楽しかった!「オレ、お笑いが好きなんやな」と思いました。

 もちろん、平坦な道ばかりではなく、東京で仕事をやりだしてから、電車に乗れなくなったなんて時期もありました。強迫観念というか、電車の中に閉じ込められているような気がして。だから、いつでも次の駅で降りられる各駅停車にしか乗れなかったんです。病院に行くのも怖くて、お医者さんにも診てもらってなかったんですけど、精神的に、相当追い込まれていたんだと思います。

 そんな中、ある先輩の話を聞いて、一気に視界が開けたこともありました。その先輩は大きな番組をされていたんですけど、その視聴率が悪くなってきた。ある日、ご一緒している時に先輩がおっしゃったんです。「番組の数字が悪いとか言われてるけど、そんなん、どこ吹く風や」と。フリスク食べながら(笑)。

 それを聞いた瞬間、何なんでしょうね、自分の中で感覚がガラッと変わったというか、こんな考え方もあるんやと。「どこ吹く風でもエエんや」という感覚になったんです。そして、翌日から普通に電車に乗れるようになりました。

 人間、結局気持ちなんでしょうね。気持ちに生かされているというか。気持ちが動くことで、体も左右されるというか。それで言うと、今は舞台に立てて、YouTubeも含めいろいろなこともさせてもらい、本当に楽しくさせてもらっています。

 誰でもそうなのかもしれませんけど、僕はそこの要素がすごく強いのかもしれません。気持ちと体が結びつきやすいというか。すぐに電車にも乗れるようになったのは、それが良い形で出たパターンだったと思いますしね。これからは、それが悪い方に出て、ウソみたいな詐欺に引っ掛かったりせんように気を付けたいと思います(笑)。

(撮影・中西正男)

■藤原一裕(ふじわら・かずひろ)

1977年9月20日生まれ。奈良県出身。吉本興業所属。96年、高校の同級生だった井本貴史とお笑いコンビ「ライセンス」を結成。コンビとしてNHK上方漫才コンテスト優秀賞などを受賞。2001年に拠点を大阪から東京に移す。06年には「M-1グランプリ」で決勝に進出。「吉本男前ランキング」で3年連続1位になり、11年には殿堂入りを果たす。14年に結婚、17年には長女が誕生した。日本テレビ「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」、読売テレビ「かんさい情報ネットten.」などに出演。YouTubeチャンネル「ドローン藤原チャンネル」を7月12日からリニューアル。ドローンにとどまらず、様々な企画に体当たりで挑戦する「フジワランド」として再出発した。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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