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子ども同伴歓迎のおしゃれカフェは郊外に

中村智彦神戸国際大学経済学部教授
(写真:アフロ)

郊外に増える「お子様歓迎」おしゃれカフェ

 「おしゃれなカフェに行きたいけれど、子どもたちと一緒では」

 そんな風に思うママたち、パパたちは多いだろう。大都市中心部に数多くあるおしゃれなカフェでは、なかなか子連れでは行きにくい。

 そうなるとファミレスという選択肢もあるが、「結構高くつくし、そうそう長居もしていられない雰囲気」という声が多い。

 そんなママたち、パパたちに人気が出ているのが、郊外に増えている「お子様歓迎」おしゃれカフェだ。

 こうした郊外型のカフェは、地元住民だけではなく、新しい観光スポットとしても機能しており、地域経済の活性化策の一つとしても考えられるだろう。今回は、その事例を見て考えてみたい。

気軽に楽しめるパン作りが人気

 広島空港は、広島市内から40分ほどの丘の上にある。「えっ、高架鉄道?」と途中に見えるとても高い赤く塗られた橋げたのようなものは、航空機の誘導灯だ。

 坂道を上がり切ったところにあるのが、広島空港だ。子どもたちと離発着する航空機を見物するのも楽しいが、この空港には子ども連れに人気のカフェがある。

 空港ターミナルから駐車場を挟んだ小山にあるのが、「くりーむパン」で有名な八天堂の工場とカフェだ。なんとこの「くりーむパン」の人気が首都圏で高まったことから、空輸しやすいということもあって広島空港の臨空工業団地に2013年に稼働した工場で、一般の工場見学を受け入れている。

 その工場に隣接した空港を見通せる丘の上に2016年8月にオープンしたのが、「八天堂カフェリエ」だ。丘の上にかわいい庭園があり、同社の企業内保育所の建物も雰囲気を高めている。メルヘンチックな雰囲気が作り出されている。

 焼き立てのパンを売る売店と広々して解放感のあるカフェ、そして、ここの特徴であるパン作りの体験工房がある。同社の名物である「くりーむパン」を自分で作る体験コースや、15分でできるパン作り体験コースなど、子どもから大人まで楽しめるコースが用意されている。

 店員の人たちも明るく、楽し気な雰囲気だ。ランチやスイーツをカフェで楽しみ、売店で焼き立てのパンを買って、楽しそうにパン作りをしている人たちを見ていると、子どもでなくともパン作りをしてみたくなる。

保育所も景観の一つ~八天堂(筆者撮影)
保育所も景観の一つ~八天堂(筆者撮影)

焼き立てチーズケーキをその場で

 大阪北部の丘陵地帯を切り開いて街づくりが進められた彩都ニュータウン。大阪千里の万博公園から、車で10分程度。国際文化公園都市モノレールなら、万博記念公園駅から彩都西駅まで8分。思いの外、近いが丘陵地帯で大阪の街が眼下に広がるのを見ることができる。

 戸建ての瀟洒な住宅や高層マンション、駅前のスーパーなど新しく開かれた街だ。ここ数年でおしゃれなカフェやスイーツショップが開業しているエリアでもある。

 そんな中でも人気の店が、2015年に開店した「りくろーおじさんの店彩都の森店」だ。ウリはやはり焼き立てのチーズケーキだが、この店舗はケーキやというよりも、郊外型の焼き立てパンの店だ。

 大阪市内を一望できる展望テラスや、店内の子供の喜ぶおとぎの国のようなインテリアやお絵描きコーナーなども人気だ。チーズケーキやパンを店内で食べることができるのだが、ここはコーヒーや紅茶が無料でサービスされている。これらは朝八時から開店しているため、出勤や通学途中の人たちにも人気がある。

 さらに、「コドモキッチン」ではバースデーケーキなどを自分で作ったり、飾り付けたりできるサービスがあり、こちらも家族連れに人気だ。分譲が進む新しいニュータウンの若い家族が多い地域らしい雰囲気のカフェだ。

新しい街並みにふさわしい店舗~りくろーおじさん(筆者撮影)
新しい街並みにふさわしい店舗~りくろーおじさん(筆者撮影)

たまごやのやっているカフェ

 広々とした敷地におしゃれなカフェと卵をテーマにした雑貨やスイーツなどを楽しめる

ショップが、山形県の米沢駅から車で20分程度。山間の温泉地として有名な小野川温泉に向かう途中に、おしゃれな建物が建っている。

 2012年に開店したウフウフガーデンは、鶏卵を販売する株式会社山田鶏卵が経営し、「卵」がウリである。建築専門雑誌にも取り上げられた個性的な建物。カフェレストランでは、新鮮な卵を使ったスイーツが人気だが、売店では50個も入った卵の詰め合わせを買い求める人が多い。

 さらに、2016年 7月に隣接する場所に、広いガーデンと卵をテーマとした雑貨などのショップがあるウフウフファームが開店した。広々とした空の広い場所には、大きなニワトリのオブジェが置かれ、子供たちが走り回っている。

 ゆったりとくつろげるウフウフガーデンと、カジュアルな感じでスイーツなどを楽しめるウフウフファームと、幅広い世代が楽しめるようになっている。

 地元客だけではなく、米沢や赤湯温泉などへの観光客も立ち寄りやすい立地であることも人気を生んでいる。広い敷地を利用して、イベントなども行われている。

広々した敷地は子どもにも人気~ウフウフファーム(筆者撮影)
広々した敷地は子どもにも人気~ウフウフファーム(筆者撮影)

若い世代を中心に幅広い世代に人気のある郊外型カフェ

 

 こうした郊外型のカフェは、全国で増えつつある。都市中心部から、車で30分から1時間のところに立地し、駐車場と、幼稚園から小学生くらいの子どもでも楽しめる内容になっている。少子化の中で、こうした子連れ向けの店舗は逆行しているように思えるが、都市郊外にはまだまだ30歳代を中心としたファミリー層が手ごろな価格で購入できるマンションや戸建て住宅に居住するケースが多い。

 「休日に家族で、ちょっとおしゃれな店でゆっくりしたいという時に、ファミレスでは価格が高いし、かといってショッピングセンターのフードコートでは、あまりおしゃれじゃないから。」「子どもたちはすぐ飽きて、帰りたがるが、子ども用の遊具や庭が用意されており、その分、親たちはゆっくりお茶ができる。」こうしたカフェをよく訪れるという30歳代の主婦たちは、そのように言う。

 ファミレスや、チェーン店のカフェなどが多い中で、それぞれの地域の特徴ある商品や素材を扱う一方で、子ども連れが気軽に訪れることができるカフェが出てきている。少子化で、子ども向け、家族向けの商業は縮小するように見えるが、意外なところに商機があることを示しているようだ。

 

神戸国際大学経済学部教授

1964年生まれ。上智大学を卒業後、タイ国際航空、PHP総合研究所を経て、大阪府立産業開発研究所国際調査室研究員として勤務。2000年に名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程を修了(学術博士号取得)。その後、日本福祉大学経済学部助教授を経て、神戸国際大学経済学部教授。関西大学商学部非常勤講師、愛知工科大学非常勤講師、総務省地域力創造アドバイザー、山形県川西町総合計画アドバイザー、山形県地域コミュニティ支援アドバイザー、向日市ふるさと創生計画委員会委員長などの役職を務める。営業、総務、経理、海外駐在を経験、公務員時代に経済調査を担当。企業経営者や自治体へのアドバイス、プロジェクトの運営を担う。

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