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旅の記念に「無効」のスタンプ - 使い終わった切符を記念にしよう

中村智彦神戸国際大学経済学部教授
山形新幹線「とれいゆ つばさ」

 八月もあと一週間ほどで終わり。これから、子どもたちの夏休み最後の旅行とか、お盆に出勤した代わりのお休みで旅行などに出かける方も多いでしょう。今回は、地方色を思い出にする、ちょっとおもしろい旅の記念を提案します。

 

上手な切符の買い方

 

 まず、上手な切符の買い方です。JRの乗車券は、100キロメートルまでの場合と同一の大都市近郊区間内の発着だと有効期限は1日だけで、途中下車はできません。ところが、101キロメートルを超えると、距離に応じて有効期限が長くなります。200キロメートルまでだと2日、201キロメートルから400キロメートルまでだと3日という具合です。

 

 途中下車というのは、途中の駅で新幹線や特急を降りて、駅の外にいったん出ることを言います。例えば、仙台駅から大阪駅(大阪市内)までですと、有効期限が片道だと6日間、往復だと12日間もあります。仙台駅から新幹線に乗り、宇都宮駅で下車して、駅の外に出て餃子を食べ、また駅に戻って新幹線に乗ることが可能です。さらに、東京駅や名古屋駅など、どの駅でも途中下車できます。【注】

 途中下車できる切符は、自動改札機を通しても、ちゃんと返却してくれますから(通過できない場合もあります)、忘れないように持っていきましょう。さて、楽しいのは自動改札ではなく有人改札で途中下車の扱いをしてもらった時です。券面に駅のスタンプを押してくれるのですが、それが色や形がいろいろあるのです。旅行を進めて、途中下車駅が増えると、券面が、使い古して各国のホテルのステッカーがたくさん貼られたトランクのようになってきます。自分の足跡がついているようで、おもしろいです。

いろいろな駅の途中下車スタンプが楽しい
いろいろな駅の途中下車スタンプが楽しい

 

記念に切符をもらおう

 

 「せっかくたくさん途中下車スタンプをもらっても、最後には回収されてしまうじゃないか」と思われている方も多いでしょう。実は、使用済みになった切符は、改札口で駅員さんに「持って帰りたいのですが」とお願いすると、無効印(スタンプ)を押し、再使用できないように穴を開けて渡してくれます。

 

 子どもの初めての一人旅の記念や、家族旅行の記念などにもらって帰って、アルバムに貼ると良い思い出になります。実は、最近では、会社の出張の際に証明として使用済みの切符を持って帰ってくる人も多くなっているらしく、そう珍しいことではなくなっています。恥ずかしがらずに、駅員さんに頼んでみましょう。

 

実は楽しい無効スタンプ

 

 記念に切符を貰う時に、無効スタンプが押されることはすでに書きました。普通は、「無効」とか「使用済」、「乗車記念」といった事務的なスタンプです。なかには、「ありがとうございました。乗車記念(使用済み)」というものもありますが、いずれにしてもあまりおもしろいものではありません。

 

 ところが無効スタンプにも、駅の記念スタンプのように駅によって様々なデザインのものがあるのです。全ての駅にある訳ではなく、常時あるとは限りませんが、旅行の記念にはぴったりです。

 

 仕事で使用済みの持って帰る人も多いので、駅員さんに一声かけてみると駅オリジナルの無効スタンプを押してくれるかも知れません。

特色ある無効スタンプ印のいろいろ

 JR東海の新幹線の駅では、N700系がデザインされた無効スタンプです。子どもだけではなく、大人も欲しいデザインですが、なかなか大人には押してくれません。駅員さんに聞いてみると、やはり「お仕事の証明としてお使いになる場合には、通常の方が良いでしょうし、特にご指定がなければ事務的なものを押しています」という回答でした。

 

JR東海道新幹線の無効印
JR東海道新幹線の無効印

 JR九州では、桜の形をしたものが複数の駅で使われています。JR北海道では、北海道の地図を図案化したものです。

JR北海道の無効印
JR北海道の無効印
JR九州の無効印
JR九州の無効印

 

 地方の町おこしが図案になっている例もあります。

 福山通運のトラックの後ろに「ばらのまち福山」というステッカーが貼ってあるのを見たことはありませんか。第二次世界大戦後の復興の象徴として、福山市は市を挙げて「ばらのまち」で地域の活性化に取り組んできました。そこで、無効印も新幹線とバラの花が図案化されています。

 最近では、「ばらのまち福山」の知名度も上がり、5月に開催される「福山ばら祭」には多くの人が訪れるようになっています。

JR福山駅の無効印
JR福山駅の無効印

 山形駅は、やっぱり、さくらんぼ。実際には、さくらんぼのシーズンは6月上旬 から7月上旬のわずか一か月足らずなのですが、山形のイメージを代表しています。

JR山形駅の無効印
JR山形駅の無効印

 遠くに旅行しなくとも、近郊の駅でも特色ある無効スタンプがある場合もあります。9月には、都市緑化フェアが開催される八王子。八王子駅の無効スタンプは、E233系電車が図案化されており、以前から鉄道ファンに人気があります。

JR八王子駅の無効印
JR八王子駅の無効印

 無効スタンプにも期間限定のものもあります。

 2014年に東京駅100周年を記念した無効スタンプです。いろいろなイベントの時に、無効スタンプも作ってくれると、利用者にとっては良い記念になりそうですが、駅員さんの手間が大変ですね。

 無効スタンプには、地域の名所や旧跡、名物などがデザインされたものがあります。切符には、乗車した区間や列車が記録されていますし、そこに各地域の無効スタンプが押されていると、後々、よい思い出になります。ぜひ、試してみてください。

2014年東京駅100周年記念の無効スタンプ
2014年東京駅100周年記念の無効スタンプ

 

【注】券面に「~市内」とか「東京都区内」と書かれている切符は、その範囲内の駅で降りるとそこまでしか使えません。仮に新大阪駅から新宿までの切符を買うと、券面には「新大阪駅⇒東京都区内」と印刷されています。この場合は、もし東京駅で駅の外に出れば、そこで旅行は終了です。東京駅から新宿駅までは、乗車する際に改めて切符を購入しなくてはいけません。

 

神戸国際大学経済学部教授

1964年生まれ。上智大学を卒業後、タイ国際航空、PHP総合研究所を経て、大阪府立産業開発研究所国際調査室研究員として勤務。2000年に名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程を修了(学術博士号取得)。その後、日本福祉大学経済学部助教授を経て、神戸国際大学経済学部教授。関西大学商学部非常勤講師、愛知工科大学非常勤講師、総務省地域力創造アドバイザー、山形県川西町総合計画アドバイザー、山形県地域コミュニティ支援アドバイザー、向日市ふるさと創生計画委員会委員長などの役職を務める。営業、総務、経理、海外駐在を経験、公務員時代に経済調査を担当。企業経営者や自治体へのアドバイス、プロジェクトの運営を担う。

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