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日本は今も安心、安全な国? 中国人観光客が東京の飲食店で目にした「信じられない」光景

中島恵ジャーナリスト
(写真:イメージマート)

急速に回復している訪日外国人観光客数。香港や台湾からと比べると少ないが、中国人観光客も徐々に戻りつつある。

彼らにとって、日本での楽しみは食事やショッピングだが、日本の高いサービスや「おもてなし」に対する期待も高い。だが、私は彼らの口から「日本のサービスの劣化」について、驚くべき話を耳にした。

あるラーメン店での出来事

ある中国人は中国のある大学の日本語学科出身だ。この人を含め、同級生はみんな日本が好きで、日本語が堪能な人が多い。

コロナ禍前の2019年、「数年ぶりの同級会は東京で開催しよう」という話になり、中国各地や日本、欧米に散らばって働いている仲間が、東京都内の飲食店に集合した。

そこで、みんなの口をついて出たのが、日本のサービスに関する残念なエピソードの数々だったという。

その人が、その場で飛び出した話を教えてくれた。

「ある友人はラーメン店のカウンターにうっかり財布を置き忘れてしまったそうです。店を出てすぐに気づき、引き返したそうですが、店員は『知りません』と……。短い時間だったので不審に思い、監視カメラを確認してもらったら、店員が盗んでいたことがわかったそうです。

財布は返してもらいましたが、日本といえば、安心、安全。『落とした財布が必ず戻ってくる国』『正直者の国』というイメージが強かっただけに、その友人はとてもショックを受けていました」

信じられない話だが、その場に複数の仲間もいて、目撃したそうだ。

居酒屋でレシートをよく見たら

別の友人も同じ同級会の席で、こんな体験を話したという。

「数人で久しぶりに日本の居酒屋に行ったのですが、料金が予想より高かった。レシートを見たら、注文していないものが含まれていたそうです。

店員に伝えたら、すぐに計算し直して、返金されたそうですが、その友人はおかしいと首をひねっていました。そのような残念なエピソードがいくつも飛び出したんです」

中国人も感じる、日本の深刻な人材不足

これらのエピソードは偶然かもしれないし、誤解だった可能性も否定できない。その場にいた人しかわからないだろう。だが、もともと日本びいきだった彼らが、日本のサービスに対して不信感を持ち、イメージが悪化したのは確かだ。

この話をしてくれた人は現在、日本に住んでいるが、2022年末、中国から来日したIT企業の幹部と仕事で数日間、行動をともにしたとき、その幹部からも「日本のサービス、以前と比べてあまりよくないと思うんだけど、あなたはどう思う?」と意見を求められたそうだ。

その人はいう。

「正直、日本にずっと住んでいる私も、最近、少し疑問に思うことが増えました。サービスの劣化とも関係しますが、日本の人材不足は深刻だと感じます。

たとえば、仕事であるイベントに行ったとき、本来ならば、担当者は教育されているはずなのに、慣れていないアルバイトばかりでした。

言葉遣いも大学の同級生と話すようなくだけた感じで、外国人の私から見ても、『この話し方で顧客対応するのだろうか?』と思ったほどです。

ある有名ホテルのロビーには、英語しかできないスタッフがいました。もしかしたら、英語と日本語の両方できるスタッフが不足していて、やむを得ず配置したのかもしれません。

そういう、その場しのぎの対応が増えたな、と感じています。

また、仕事で知り合う日本人とは、お金の話題が増えました。仕事をする上でお金の話をするのは当たり前ですが、これまでは時間をかけて、相手との信頼関係を構築し、そのあとお金の話に入る日本人が多かった。お金の話を真正面からするのは、自分の経験では、これまであまりありませんでした。

でも、最近は人間関係や義理よりも、お金の話が先になることも……。いろいろな意味で、以前よりも余裕がない日本人が増えたのかな、と感じています」

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ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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