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全国高校女子硬式野球選抜大会 神戸弘陵二連覇で幕

中川路里香フリーランスライター
二連覇を果たし、笑顔で記念撮影に応じる神戸弘陵ナイン

『第25回記念全国高等学校女子硬式野球選手権大会』の決勝戦が4月7日(日)に東京ドームで行われ、神戸弘陵(兵庫)が初優勝を狙う東海大翔洋(静岡)を9-1で下して二連覇を果たし、4度目の優勝を飾った。

東海大翔洋  000 010 0 1
神戸弘陵   400 050 x 9
【バッテリー】 
東海大翔洋 垣崎、遠藤-宮
神戸弘陵  伊藤、坂井、中川-田垣 

 神戸弘陵は1回、5番・山田佳穂さん(3年)の3点三塁打などで4点を先制、5回には、9番・津田美波さん(3年)の投前セーフティ内野安打を皮切りに打者一巡の猛攻で5点を奪い、試合を決めた。先発の伊藤まことさん(3年)は4回を無失点で投げ抜き、坂井歩夢さん(3年)、中川爽さん(3年)の継投で1失点に抑えた。
 東海大翔洋は5回に、二死から四球で出塁した1番・井戸穂花さん(3年)の二盗、3番・川満芽衣さん(3年)の適時打などで1点を返し、全試合完封勝ちの神戸弘陵に今大会初失点を記録させたが、打ち崩すまでには至らなかった。

最後の打者を打ち取ると、神戸弘陵選手全員がマウンド上に駆け寄り、日本一の喜びを爆発させた
最後の打者を打ち取ると、神戸弘陵選手全員がマウンド上に駆け寄り、日本一の喜びを爆発させた

インパクトある打撃で魅了

 右中間を破る大きな当たりだった。1回1死満塁、5番・山田さんが放った走者一掃の三塁打。「追い込まれると打てないと思い、早いカウントから積極的に振っていこうと決めていました」という山田さん。2-1からの4球目を迷わず振り抜き、チームを勢いづけた。1点を返された直後の5回には、走者2人を帰す右前安打を放ち、試合を決めた。
 初戦から準々決勝までの3試合、5番で先発出場したが無安打と結果が出せず、準決勝はベンチに回ったが、最後は、5打点の活躍で締めた。試合後、「全然チームに貢献できていなかったのでホッとしています」と笑顔を見せた。「調子は上がってきたが、走塁面をもっと強化したい」と夏へ向けて抱負も語った。

決勝戦で5打点の活躍を見せた、神戸弘陵5番・山田佳穂さん
決勝戦で5打点の活躍を見せた、神戸弘陵5番・山田佳穂さん

見事、復活。打率5割の活躍

 今大会、神戸弘陵1番・田垣朔來羽(そらは)さん(3年)らしさが戻った。通算打率5割の大活躍。2年時から主力選手として昨年の三冠にも貢献したが、新チームとなってからのユース大会では打撃が全く振るわず、通算打率9分9厘。チームもベスト8で敗退してしまった。
 今冬は「誰よりもバットを振って振って、振り込んでいた」と石原康司監督が感心するほど練習を積んだ。加えて、パワーがあっただけに強引に引っ張り気味だったところ、逆方向に打つことを覚え、広角に長打を打てる技術が備わった。さらには足もある田垣さんにとっては、三塁打も容易なこと。決勝戦では2本の三塁打を放った。ちなみに、初戦ではランニングホームランを放っている。
 試合後の優勝インタビューでは「去年の優勝よりも嬉しい」と答えた田垣さん。主将となり、自身のプレーに気が回らず苦しんだユース大会から一皮むけ、チームを日本一へ導いただけに、実感がこもっていた。それでも今大会の自身の出来を95点と辛口評価。満点に5点足りないのは、「ピンチに立ったとき、相手に流されてしまった時があったし、チームメイトが結果が出せず下を向いているときに上手な声掛けができなかった部分があった」(田垣さん)からだ。夏には、さらに洗練された姿が見られそうだ。

復調した神戸弘陵1番・田垣朔來羽さんは、決勝戦で左中間、右中間に1本ずつ二塁打を放った
復調した神戸弘陵1番・田垣朔來羽さんは、決勝戦で左中間、右中間に1本ずつ二塁打を放った


初回に失点、出鼻をくじかれた

 初回にいきなり4失点と劣勢に立たされた東海大翔洋。マウンド上の垣崎瑠衣さん(2年)は、自分を落ち着かせようとするしぐさを何度も見せた。その時の思いを、試合後、東海大翔洋・弓桁義雄監督は「『出鼻をくじかれた』という感じだったと思う」と代弁した。田垣さんを直球で詰まらせられたので手応えを感じたが、「いつものキレがなかった」(弓桁監督)と話す変化球をとらえられ、連打された。「ストレート勝負ならいける」と踏んだが、その分、変化球に狙いを絞られた。ただ、5回には一矢報い、1点を返した。1番・井戸さんの足をからめての得点に「うちらしさが出せ、意地を見せられたかなと思います」。

2年生エース、東海大翔洋・垣崎瑠衣さん
2年生エース、東海大翔洋・垣崎瑠衣さん


「日本一を取り戻した」神戸弘陵・石原康司監督

 今大会は連覇よりも、「もう一度アレ(優勝)を取り戻しに行こう」という意識で臨んだ。前年度のチームが三冠しを達成し負けを知らない今の代の選手たちは、どこかで勝ち続けられると思い込んでいたところ、ユース大会で負けた。悔しさを味わい、自分たちは勝ちたいのだということを再認識できた。厳しい練習をこなし、意識の持ち方変えて、一からチームを作り直し掴んだ今回の優勝は、選手たちにとって非常に意味がある。喜びもひとしおだと思う。


「野球がもっと好きになったと思う」東海大翔洋・弓桁義雄監督 

 点差ほど内容は悪くなかったし、今ある実力は出せた。相手を分析していたが、それを上回るプレーをされて対応しきれなかった。選手たちは「自分たちの想像以上に神戸弘陵は強い」と感じたことと思う。対戦したからこそわかったこと。決勝戦ならではの景色が見られたことも大きい。この経験が活かされるチームにして夏に臨みたい。彼女たちは、野球がもっと好きになったと思う。これからです。

初の決勝進出の喜びよりも、敗れた悔しさが控えめな笑顔に見て取れた東海大翔洋の選手たち
初の決勝進出の喜びよりも、敗れた悔しさが控えめな笑顔に見て取れた東海大翔洋の選手たち

(撮影は全て筆者)

フリーランスライター

関西を拠点に活動しています。主に、関西に縁のあるアスリートや関西で起きたスポーツシーンをお伝えしていきます。

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