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全国高校女子硬式野球選抜大会は4月7日に東京ドームで決勝

中川路里香フリーランスライター
創部4年目にして初の全国制覇に挑む東海大翔洋(チーム提供)

決勝カードは、実力校対新興勢力

 3月21日(木)から行われていた『第25回記念全国高等学校女子硬式野球選抜大会』は、4月7日(日)に決勝戦を迎える。3年連続決勝進出で昨年の覇者、神戸弘陵(兵庫)と対戦するのは、今回が初の決勝進出となった東海大翔洋(静岡)だ。

 神戸弘陵は、言わずと知れた強豪校。昨季は高校女子の3大大会、ユース大会、選抜大会、選手権大会優勝と三冠を達成。昨秋のユース大会では優勝したクラーク記念国際(宮城、以下、クラーク)に敗れベスト8だったが、今大会も優勝候補だ。
 他方、東海大翔洋は、男子はともかく、女子は21年創部で大会参加は23年からとまだよく知られていない。この若いチームが、日本一を懸けてどのような戦いをするのか。


ユース大会覇者、クラーク記念国際を撃破

 東海大翔洋は、ここまで5試合を勝ち上がってきた。1回戦のウェルネス連合(日本ウェルネスグループ高混成)戦は16-0、2回戦は新田(愛媛)に11-10で競り勝つと、3回戦はクラークに5-4とサヨナラ勝ちを収めた。それに勢いづくと、準々決勝は秀岳館(熊本)に7-5、準決勝は蒼開(兵庫)に5-1と勝ち進んだ。
 昨秋のユース大会で1-11と大敗した相手、クラークに勝利したのが今大会大躍進のポイントであることは間違いないとしながらも、東海大翔洋・弓桁義雄監督は、「その前の新田戦が効いた」と振り返る。投手が乱調で、点を取っても奪い返されるという苦しい展開だったが、最後は「うちらしい点の取り方で」決勝点を挙げられたことがクラーク戦で生きたと見る。昨秋は、打線が全く歯が立たず大敗したのを機に、今冬、打撃力アップに力を入れたことが実り、雪辱を果たした。

3回戦ではクラークを撃破(チーム提供)
3回戦ではクラークを撃破(チーム提供)


チームスローガンは『笑顔で日本一』

 弓桁監督は、これまで同校男子硬式野球部や中等部の男子軟式野球部で監督を務めており、指導経験が豊富。高校野球部監督時代は地元選手中心の部員構成でありながら県大会準優勝、軟式野球部監督時代は全国大会優勝1回、準優勝3回と実績もある。女子硬式野球部の今大会の大躍進は、強豪校育成計画が順調に行っているとみていいのだろうか。
 「女子の場合は、そもそも強豪校を目指してきたわけではありませんので」とやんわり否定した。というのも『誰でも楽しく野球しようよ』というコンセプトで立ち上げたからだという。現に、創部二期生となる新3年生部員の中には、吹奏楽部やバレー部出身者がいる。日々の練習も、野球経験の有無に関わらず、全員同じメニューをこなす。チームスローガンは『笑顔で日本一』。笑顔とは、楽しむという意味だ。野球そのものを楽しむのが第一なのだ。弓桁監督自身、以前から勝利至上主義とは別の、野球そのものを教えることに魅力を感じており、それを実現しているのだという。純粋に女子野球人口を増やしたいという思いもある。
 「やりたいようにやらせたい」と、作戦は練るが強制しない。「こういう勝ち方もあるんだよと覚えてもらえたら」。とはいえ、試合を重ねるごとに選手たちに勝ちたい気持ちが芽生えるのは自然の流れ。それには「だったら、こういう方法もあるんじゃない?」と提示していく。教えるというよりは、一緒にやっている、そんな感じだ。

東海大翔洋高は笑顔で野球をするのがモットー(チーム提供)
東海大翔洋高は笑顔で野球をするのがモットー(チーム提供)

強くなっただけでなく、優しさも備わった

 試合ごとに成長を遂げている選手たちに、弓桁監督は感じるものがある。今大会の宿舎でのこと。チェックアウトの際、選手たちが自ら女将や従業員にお礼の手紙を置いて帰るのはこれまでもしていたが、今回は雨で日程が随分狂うなどして、チェックインの時間が予定より早まるなどして宿舎側に負担をかけたことへのお礼に、ハンドクリームを贈っていたという。仕事柄、手荒れがひどいでしょうからという「彼女たちなりの気配りですよね。そういうことができる子たちなんですよ。強くなるイコール、真の優しさが備わるということなのかなと教えられた」と話す。
 ベンチ入り25人の中に、吹奏楽部、バレー部出身の選手はいない。が、東京ドームでボールガールを務める。それは、彼女たちの目標だった。背番号をもらうのではない、自分なりの目標を、彼女たちはこのたび実現させられるのだ。そんな選手たちと戦う決勝戦が楽しみだと弓桁監督は話す。

全員で勝利を掴み、決勝に挑む東海大翔洋ナイン(チーム提供)
全員で勝利を掴み、決勝に挑む東海大翔洋ナイン(チーム提供)


一番が出塁するとおもしろい

 決勝戦が明日に迫ってきた。キーになる選手に弓桁監督は、主将としてチームをまとめ牽引してきたキャッチャーの宮茉夢さん(3年)、一番で足に自信のある井戸穂花さん(3年)の名を挙げる。「井戸が出たら面白いんじゃないでしょうか」。エースの垣崎瑠依さん(2年)の投げっぷりの良さがどこまで通用するかも楽しみだという。「神戸弘陵さんは球界一。選手たちなりに考えて分析していますが、背伸びしたところで、いつも以上の実力は出せませんよね。ただ、その“いつも”を確実にやれるように導くのが私の役割だと思っています」。

準決勝まで4試合に登板、3試合で完投の東海大翔洋・垣崎瑠依さん(チーム提供)
準決勝まで4試合に登板、3試合で完投の東海大翔洋・垣崎瑠依さん(チーム提供)


 神戸弘陵の伊藤まことさん(3年)は、昨春の東京ドーム、昨夏の甲子園で優勝投手となり、大舞台になるほどに実力を発揮するエース。冷静さと制球力の良さが持ち味。伊藤さんのボールを受けるのは、主将として、また2年時から主力としてチームを引っ張る田垣朔來羽さん(3年)だ。経験豊富なバッテリーと東海大翔洋打線の対決も見どころの一つだ。好ゲームが期待できる。

フリーランスライター

関西を拠点に活動しています。主に、関西に縁のあるアスリートや関西で起きたスポーツシーンをお伝えしていきます。

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