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日本代表選手選考 派遣棋士選抜に思うこと

内藤由起子囲碁観戦記者・囲碁ライター
伊田篤史九段(右)を破って代表となった佐田篤史七段。2022年11月=筆者撮影

中国・杭州アジア大会が今年9月に開催されます。囲碁は競技種目に採用されており、日本代表が派遣されます。男子団体戦(5人)、女子団体(3人)、男子個人(2人)が行われ、現在、派遣選手の選抜の真っ最中。気になるあの棋士は選ばれたのでしょうか。コロナ禍で延期されていた中国・杭州アジア大会が9月に開催されることが決定、公表されました。アジア大会はオリンピック傘下で行われますので、日の丸をつけ、ジャージ姿で対局することになります。日本は「最重要棋戦」として位置づけていますので、主力選手を送り込むといいます。これより上のエリアが無料で公開されます選手として内定しているのが、一力遼棋聖、芝野虎丸名人、井山裕太本因坊、関航太郞天元、そして予選を勝ち抜いた佐田篤史七段が代表をつかみとりました。女子団体には、藤沢里菜女流本因坊、上野愛咲美女流立葵杯が内定。残る1枠は、牛栄子扇興杯と上野梨紗二段の勝者で争われ上野二段ni近日中に決定する予定です。ここでひとつ疑問が生じたことでしょう。タイトルホルダーが優先されるのならば、仲邑菫女流棋聖の名が挙がるはずなのに、ありません。仲邑女流棋聖は、「現地の保護者同伴が難しいことなどから、予選参加を辞退した」との報道がありました。本当でしょうか。仲邑女流棋聖はもう中学2年、今年の9月の時点では中学3年です。保護者が同伴しないといけない年齢なのでしょうか。一流棋士の多くは中学生でプロになりますので、中学生プロはめずらしくありません。彼ら彼女ら中学生が保護者同伴で対局に向かうなんてことはまず、ないでしょう。仲邑女流棋聖は小学生でプロになり、一般的にマスコミにも注目されているので、お母さんが現在も送り迎えをしています。しかし海外派遣は、ひとりで移動するわけではなく、ちゃんと日本棋院職員や団長など事務方も同行しますので、保護者同伴など必要ないと思われます。ですので、本当の理由は他にあるのでは?と考えてしまいます。以下は私の推理です。アジア大会はオリンピック傘下で行われるので、ドーピング検査がついてまわります。いつなんどき検査がきても拒否できません。手合い前日の夜など来られたら、お気の毒としか言いようがありません。人前で用を足さなければならないなど、苦痛も伴います。また、風邪薬などにも気をつける必要があります。もし、ドーピング検査にひっかかったら、普段の通常の手合いも一定期間出場停止になるそうです。このような条件があるので、過去のアジア大会でも辞退した棋士が何人かいます。ふだんの手合いにあまりに影響があるので、二の足を踏むのも理解出来ます。13歳の仲邑女流棋聖には、ドーピング検査が過酷と思ったのでは?と推測するのです。最重要国際棋戦と位置づけているのならば、仲邑女流棋聖には出場してもらいたいところなのですが……。代表になる棋士のみなさんは、こんな(ドーピング検査など)リスクを背負って日本代表として戦うということも知っていただきたいと思います。

コロナ禍で延期されていた中国・杭州アジア大会が9月に開催されることが決定、公表されました。

アジア大会はオリンピック傘下で行われますので、日の丸をつけ、ジャージ姿で対局することになります。

日本は「最重要棋戦」として位置づけていますので、主力選手を送り込むといいます。

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囲碁観戦記者・囲碁ライター

囲碁観戦記者・囲碁ライター。神奈川県平塚市出身。1966年生。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。お茶の水女子大学囲碁部OG。会社員を経て現職。朝日新聞紙上で「囲碁名人戦」観戦記を担当。「週刊碁」「囲碁研究」等に随時、観戦記、取材記事、エッセイ等執筆。囲碁将棋チャンネル「本因坊家特集」「竜星戦ダイジェスト」等にレギュラー出演。著書に『井山裕太の碁 AI時代の新しい定石』(池田書店)『囲碁ライバル物語』(マイナビ出版)、『井山裕太の碁 強くなる考え方』(池田書店)、『それも一局 弟子たちが語る「木谷道場」のおしえ』(水曜社)等。囲碁ライター協会役員、東日本大学OBOG囲碁会役員。

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