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世界一奪還への一歩に 2020年囲碁界を展望する

内藤由起子囲碁観戦記者・囲碁ライター
免状を授与されたサザエさんと波平さんと若手棋士=日本棋院にて1月5日(筆者撮影)

1月5日は語呂合わせで「囲碁の日」。囲碁の総本山、日本棋院では打ち初め式が行われ、囲碁界の新しい年を祝った。

昨年は井山裕太棋聖が3冠を守り、第一人者の座を守ったものの、芝野虎丸名人が王座も奪取し2冠となるなど、若い力の台頭が顕著になり乱世の様相を呈してきた。今年の囲碁界の展望をしてみよう。

井山対若手対ベテラン

現在のタイトルホルダーをおさらいすると、井山裕太三冠が棋聖、本因坊、天元を保持。芝野虎丸二冠は名人と王座。あとは、羽根直樹碁聖、村川大介十段だ。

井山三冠は30歳。村川十段が29歳でアラサー世代。

虎丸名人は20歳。ベテラン羽根碁聖が43歳。

脂がのる時期の井山三冠に対して、虎丸名人を中心とする一力遼八段や許家元八段ら若手が台頭する中、羽根碁聖らベテラン勢がまだまだ頑張っている状況なのだ。

1月のみどころ

井山三冠は1月9日から棋聖戦の防衛戦が始まる。

挑戦者は河野臨九段、平成四天王(羽根碁聖、張栩・前名人、山下敬吾九段、高尾紳路九段)世代だ。河野九段は昨年、本因坊戦で井山三冠を追い詰めたもののまさかのミスで後退したものの、年間を通して好調は維持している。

当の井山三冠は年末、天元戦を防衛したあたりから復調を感じているという。激戦が予想され、名勝負が繰り広げられるだろう。

2月は国際棋戦に注目

2月には日本、中国、韓国の3カ国による、国別対抗勝ち抜き団体戦の「農心杯」第3ラウンドがある。第2戦に登場した中国の楊鼎新九段が7連勝していたところ、井山三冠がストップさせた。次戦、井山三冠は世界ナンバーワンの朴廷桓九段(韓国)との対戦がある。これを突破し、14年ぶりの優勝を日本にもたらしてもらいたい。

十段戦の挑戦者は?

3月には十段戦が始まる。

1月に打たれる挑戦者決定戦は、十段復帰を狙う井山三冠と快進撃を続ける虎丸名人のふたりで争われる。どちらがきても最強の挑戦者。村川十段にとって試練のシリーズになりそうだ。

井山本因坊9連覇なるか

5月の本因坊戦は挑戦者決定リーグの中盤戦。現在は前碁聖の許家元八段が全勝でトップを走っているが、虎丸名人、羽根碁聖、志田達哉八段、一力遼八段が1敗で追う混戦となっている。井山三冠は、現在本因坊8連覇中で、高川秀格二十二世本因坊の9連覇に並ぶかどうかが見どころになる。ちなみに最多は趙治勲二十五世本因坊の10連覇だ。

混戦の碁聖戦

碁聖戦は6月末にスタートする。

挑戦者を決める本戦トーナメントはまだ2回戦が始まった状況だが、本命と見られた井山三冠、虎丸名人が早くも敗退。全く先が見通せない展開になっている。

タイトル戦と国際棋戦

8月末に名人戦が始まると、王座戦、天元戦と年末まで大勝負が続く。

その間に、国際棋戦も開催され、タイトルホルダーには過密スケジュールが待っている。国際棋戦に出場できるのはタイトルホルダーが優先される。

これまで国際棋戦は井山三冠がひとり奮闘している状況だったが、今年は虎丸名人ら新しい力の躍進が予想される

今年が、日本の世界ナンバーワン奪還の一歩とならんことを期待したい。

囲碁観戦記者・囲碁ライター

囲碁観戦記者・囲碁ライター。神奈川県平塚市出身。1966年生。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。お茶の水女子大学囲碁部OG。会社員を経て現職。朝日新聞紙上で「囲碁名人戦」観戦記を担当。「週刊碁」「囲碁研究」等に随時、観戦記、取材記事、エッセイ等執筆。囲碁将棋チャンネル「本因坊家特集」「竜星戦ダイジェスト」等にレギュラー出演。著書に『井山裕太の碁 AI時代の新しい定石』(池田書店)『囲碁ライバル物語』(マイナビ出版)、『井山裕太の碁 強くなる考え方』(池田書店)、『それも一局 弟子たちが語る「木谷道場」のおしえ』(水曜社)等。囲碁ライター協会役員、東日本大学OBOG囲碁会役員。

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