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日本、8強進出を目指す19年W杯でアイルランド、スコットランドと同組に! 

永田洋光スポーツライター/週刊メルマガ『ラグビー!ラグビー!』編集長
19年にもこの喜びを再現できるか――15年W杯で南ア戦勝利を喜ぶジャパン!(写真:ロイター/アフロ)

史上最高のラッキードロー!

スコットランドにアイルランドだ!

「宿澤さんと平尾さんが生きていれば、さぞかし喜んだだろうに……!」

そう思った。

2019年に日本で開催されるラグビー・ワールドカップ(W杯)の組み合わせ抽選会が10日に京都で行なわれ、日本(世界ランキング11位)が、プールAでアイルランド(同4位)、スコットランド(5位)と同組になると決まったときのことだった。

この2チームと同組になるのは、日本代表が宿澤広朗監督―平尾誠二キャプテン体制で臨んだ91年の第2回W杯以来。あのときは、相手の本拠地、エディンバラのマレーフィールドと、ダブリンのランズダウンロード(現アビバスタジアム)で、本気の真剣勝負を繰り広げた。

スコットランドには9―47で敗れたが、前半終了直前に、FB細川隆弘のトライ&コンバージョンで9―17と追い上げてハーフタイムを迎えている(当時トライは4点)。昨年亡くなった平尾さんが、「あの前半は僕のベストゲーム」と振り返った、濃密な40分間だった。

アイルランドにも16―32と食い下がり、WTB吉田義人の快走からFL梶原宏之がサポートして挙げたトライは、大会全体のベストトライの1つに数えられた。15年W杯イングランド大会で南アフリカを撃破して世界を驚かせるまで、日本がもっとも世界に近づいたのがこの大会だった。

その15年W杯でジャパンが唯一黒星を喫した相手がスコットランド。おかげでジャパンは、グループリーグで3勝を挙げながら勝ち点差でベスト8進出を逃した。

だから、15年W杯スコットランド戦に出場した福岡堅樹は、こう話す。

「前回大会で自分が出場した唯一の試合で、チームが負けた唯一の相手。雪辱を果たしたい」

同じ思いは、19年W杯日本代表の中核となる、立川理道、田中史朗、田村優、山田章仁、堀江翔太、真壁伸弥らに共通している。

6月にはアイルランドと前哨戦!

一方、アイルランドはなんと6月に来日して2試合戦う予定だ(17日、24日)!。この2試合の重みが、抽選によって何倍にも増した。

アイルランドのジョー・シュミット ヘッドコーチ(HC)は、こう話す。

「日本はここ数年、短期間で急速に力を伸ばした。卓越した選手たちがいて進化を遂げているし、ジェイミー・ジョセフ(HC)が、さらに彼らの進化を促すだろう。6月の対戦は、高温多湿の条件でテンポの速い日本と戦うのだから、非常に難しいゲームになるが、今から対戦を楽しみにしている」

アイルランドは、同時期にニュージーランドに遠征するブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズにローリー・ベスト、ショーン・オブライエン、CJ・スタンダー、ジョナサン・セクストンら11名を送り出し、主力が欠けての来日となる。

ジャパンは、同様の条件で来日したスコットランド(89年)とウェールズ(13年)を、どちらも秩父宮ラグビー場で撃破しているが、そのときも、来日メンバーからW杯の主力に成長した選手が出ている。89年は、ショーン・リニーンとトニー・ステンジャーであり、13年はダン・ビガーとリーアム・ウィリアムズだった(この2人は今回はライオンズに選ばれた)。だから、与(くみ)しやすい――なんて考えるのは、まったくの間違いだ。

6月には、ルーマニア(16位)も来日して10日にテストマッチを戦うが、なんとこのルーマニアも、ヨーロッパ地区予選勝者として19年に同組になる可能性が高い。最初から19年W杯のプール分けがわかっていたかのように、ジャパンのW杯への強化が動き始めるのだ。

天国にいる宿澤氏と平尾氏――どちらも“強運”の持ち主だった――が、何らかの形で力を及ぼしたのではないか、などと思わずオカルトめたいことを考えてしまった。

そのぐらい、最高のドローを日本は引き当てたのである。

4戦全勝から全敗まですべての可能性がある

プールAの残る1チームは、ヨーロッパ地区予選2位とオセアニア地区3位で行なわれるプレーオフの勝者に決まった。

こちらは、現在の力関係から考えて、フィジー(10位)、トンガ(13位)、サモア(14位)の3チームで争うオセアニア予選で最下位となったチームが勝ち上がると予想される。

つまり、日本は最高に恵まれたグループに入ったとはいえ、対戦相手は、W杯で2戦2敗のアイルランドと、同じくW杯で3戦3敗のスコットランド。それに常に僅差の勝負となるルーマニアに、いつ戦ってもどうなるか予測がしづらい南太平洋の強豪と、いずれもランキングが接近していて予断を許さぬ相手ばかり。4戦全勝から全敗まですべての可能性があり得るのだ。

ラッキーなのは、グループリーグでニュージーランド、イングランド、オーストラリアの世界トップ3との対戦がなく、日本に対して雪辱に燃える南アフリカや、W杯になると突然力を発揮するフランスとの対戦も回避できたことだけ――と見ることもできる。

しかも、仮にジャパンがプールAを1位ないし2位で通過して、準々決勝に進んだとしよう。その場合の対戦相手は、1位ならばプールB2位チーム、2位ならばプールB1位チームとなる。

プールBにいるのはニュージーランド、南アフリカ、イタリア、アフリカ地区1位チーム、敗者復活戦勝ち上がりチーム……。つまり、いずれにしても、ニュージーランドか南アフリカと対戦することになる可能性が極めて高いのだ。

両者の力関係は、現在絶好調のニュージーランドと、なかなか調子が上向かない南アフリカとなっているが、19年までにどう変わるかはわからない。

ジャパンが前回のW杯で南アフリカを破り、スーパーラグビーでサンウルブズが南アフリカに本拠を置くブルズから勝利を挙げたとはいえ、対戦するのはW杯準々決勝だ。日本に対して警戒感を持った南アフリカは絶対に“別物”になってジャパン粉砕を目論んでくる。

ニュージーランドには07年W杯フランス大会準々決勝でフランスに敗れた過去もあるが、こちらも2大会連続優勝を果たした今、油断はあり得ない。

だからこそ――ハードルがムチャクチャ高いからこそ――ジャパンには、この準々決勝を突破してもらいたい。

これが実現したら、ものすごい感動の嵐が日本列島を吹き抜けること間違いなし!

そうなって初めて、日本開催のW杯は「大」成功になる。

絶妙の組み合わせで、大会が盛り上がることは間違いなし!?

W杯名物の超激戦区、いわゆる「死のプール」は、今回日本と反対側の山に並んだ。

プールCには、イングランド、フランス、アルゼンチンが入り、壮絶な順位争いが予想されるが、それに加えて、残る2枠がアメリカ対カナダのプレーオフ勝者と、オセアニア予選2位チーム!

アメリカはこれまでW杯でグループリーグを突破したことはないが、カナダは91年W杯で旋風を起こしてベスト8に入った経験を持つ。オセアニア予選組は、フィジー、サモアが、それぞれベスト8に過去2回入っている。つまり、予選の結果次第では、5チームすべてがベスト8の経験を持つという、とんでもないプールになる可能性があるのだ。これこそ、まさに「死のプール」だ!

隣のプールDも、オーストラリア、ウェールズに加えて、ヨーロッパでメキメキと力をつけているジョージアが入り、さらにオセアニア予選1位チームと、アメリカ対カナダ戦の敗者が加わることになる。こちらも、オセアニア予選1位チームが台風の目となることは間違いないだろう。

大会全体の組み合わせを見れば、大差の試合が予想されるのは、アフリカ地区予選勝者と敗者復活戦勝利チームが、ニュージーランドや南アフリカと戦うプールBぐらいだが、それも本当にそうなるかはわからない。

前回大会では、アフリカ予選を勝ち上がったナミビアが、4戦全敗ではあったものの、ジョージアと1点差の接戦を演じただけではなく、ニュージーランドから2トライを奪って14―58とプライドを見せた。

世界各国でラグビーは今、グングン猛スピードで成長しているのだ。

19年に、この日本でそんな最新のラグビー世界地図が見られることを、まずは喜ぼう。そして、ジャパンが世界の強豪に肩を並べる日が来ることを、心の底から期待しよう!

スポーツライター/週刊メルマガ『ラグビー!ラグビー!』編集長

1957年生まれ。2017年に“しょぼいキック”を連発するサンウルブズと日本代表に愕然として、一気に『新・ラグビーの逆襲 日本ラグビーが「世界」をとる日』(言視舎)を書き上げた。出版社勤務を経てフリーランスとなった88年度に神戸製鋼が初優勝し、そのまま現在までラグビーについて書き続けている。93年から恩師に頼まれて江戸川大学ラグビー部コーチを引き受け、廃部となるまで指導した。他に『スタンドオフ黄金伝説』(双葉社)、『宿澤広朗 勝つことのみが善である』(文春文庫)、共著に『そして、世界が震えた。 ラグビーワールドカップ2015「NUMBER傑作選」』(文藝春秋)などがある。

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