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日本ハムの新球場問題 韓国では8年前にホームからフェンスまで「45フィート(13.716m)」を容認

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
インチョンのホームベースから約14mの眺め(写真:ストライク・ゾーン)

日本ハムが来年開業を予定している「エスコンフィールド北海道」が、日本野球機構(NPB)の公認野球規則の規定を満たしていない問題は、14日に行われた12球団の臨時代表者会議で来季に関しては現状のまま公式戦を行うことが認められた。日本ハム側は経緯を説明し謝罪。2023、24年の両オフに改修工事を行うという。

今回の件はホームベースからバックネット(バックストップ)までの距離が、NPBでは「60フィート(18.288m)以上を必要とする」と規定しているが、メジャーリーグベースボール(MLB)では「60フィートをrecommend(推奨する)」とされ、MLBのほとんどの球場が60フィートに満たないことを日本ハムは判断基準としていた。その点について日本ハムは確認や相談が不十分だったとしている。

NPB同様にMLBを基に規則を定めている韓国野球委員会(KBO)は8日に筆者が以下の記事に記したように、「本塁からバックストップまでの距離は、快適な観覧環境をつくる目的に縮める場合でも必ず45フィート(13.716m)以上を維持すること」と定められている。

(関連記事:日本ハムの新球場問題 韓国のボールパークは「メジャー流」で本塁からバックネットがもっと近い

記事では実例として2019年開場のチャンウォンNCパークを挙げた。チャンウォンNCパークの本塁からバックストップまでの距離は14.75mだ(エスコンフィールド北海道は15.18m)。

チャンウォンNCパーク(写真:ストライク・ゾーン)
チャンウォンNCパーク(写真:ストライク・ゾーン)

ではこのKBOの「45フィートまで容認」はいつから適用になったのか。確認してみると2014年の「KBO公式野球規則」から記載され始めた。同年にはクァンジュKIAチャンピオンズフィールドが開場しているが、同球場よりも本塁からバックストップまでの距離が短い球場がその年リニューアル工事によって生まれている。ハンファ生命イーグルスパーク(以下、テジョン球場)だ。

テジョン球場は1965年の開場で、2014年のリニューアル工事でバックストップを7m前にせり出して観客席を増築。本塁からの距離が16mになった。また翌2015年にはインチョンムナク球場(現名称:インチョンSSGランダーズフィールド)も同様の工事を行い、同距離は国内で最も短い13.85mとなっている。

当時のKBOリーグは2012年にリーグの総観客動員数が初の700万人を突破。野球人気の高まりとともに、球場のインフラ整備と「ファンファースト」がリーグの優先課題に挙げられた。上記の2球場ともリニューアル工事の理由を「ファンにメジャー級球場の臨場感を与えたい」としていた。

KBOでは8年前にリーグと球団の「ファンのため」という考えが一致。それが規則を変更した理由だった。

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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