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元オリックス・鈴木郁洋コーチが韓国で充実の若手育成 連絡くれる若月ら古巣捕手陣に「嬉しいことです」

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
リーグ参入7年目で、初めて韓国シリーズを制したKTウィズ(写真:kt wiz)

2022年、韓国KBOリーグで活動する日本人コーチは2人。そのうちの1人がKTウィズの鈴木郁洋2軍バッテリーコーチ(46、元オリックス)だ。

昨年、韓国でのコーチ生活をスタートさせた鈴木コーチは「言葉、文化、考え方の違いがあったりとすべてが初めてでしたが、やりやすい環境を作ってくれていたので充実していました」と1年を振り返った。

若手捕手の育成を任された鈴木コーチは、まずチーム期待の高卒2年目、カン・ヒョンウ(20)の姿を見守った。

「最初はどこか適当に見えるプレースタイルだったのが、春季キャンプを通して少しずつ自覚が出てきました」

鈴木コーチはカン・ヒョンウの成長を実感するも、その有望株は韓国特有の事情でしばらくチームを離れることになった。それは兵役義務。軍への入隊だ。

代わってチャンスをつかんだのが2018年にプロ入りした22歳のチョ・デヒョンだった。

チョ・デヒョンは昨季2軍でチーム捕手最多の56試合に出場。鈴木コーチはチョ・デヒョンについて「賢い選手です。どうやったら抑えられるか、投手の良いところをどう引き出せるかを考えていて、試合の流れを読む力もあります」と可能性を高く評価した。

鈴木郁洋コーチと捕手のチョ・デヒョン(写真:kt wiz)
鈴木郁洋コーチと捕手のチョ・デヒョン(写真:kt wiz)

育成選手だったチョ・デヒョンはシーズン終盤の10月17日、正式登録(支配下選手登録)になるとすぐに1軍に昇格した。しかし試合に出ることなくシーズンは終わってしまった。

昨季のKTは好調で、残り1試合となった143試合の時点でサムスンライオンズと同率1位。さらにLGツインズが0.5差の3位で追うという首位争いを繰り広げていた。若手捕手を試す余裕はなかったのだ。

鈴木コーチはチョ・デヒョンについて「足りないのは経験だけです。昨年は優勝争いがあって1軍の試合には出られなかったですが、今年はシーズンの半分くらい1軍を経験できればと2軍コーチとしては思っています」と話した。

結局KTはサムスンと共に首位のまま公式戦全日程を終了。その翌日の一発勝負の1位決定戦でサムスンに1-0で勝利し、韓国シリーズに進出した。そしてシリーズでトゥサンベアーズに4連勝。KTはリーグ参入7年目で初の王者に輝いた。

新天地1年目で1軍優勝の喜びに触れた鈴木コーチ。昨季は鈴木コーチの古巣オリックスも25年ぶり(当時はオリックス・ブルーウェーブ)のリーグ優勝を果たしている。

「大したものですよね本当に。若月(健矢)、伏見(寅威)は僕が育てたということではないですが、2軍の時から見ていたキャッチャーです。その2人の力もあってチームが勝つというのは嬉しいです」

「彼らは僕が韓国に行く前には食事会を開いてくれて、その後も『いつ帰ってくるんですか?一緒にご飯行って話しましょう』と誘ってくれます。辞めたのに連絡をくれるというのはすごく嬉しいことです。頑張って一緒にやって良かったなと思います」(鈴木コーチ)

韓国も日本同様に2月にキャンプインする。今年の韓国は1月30日から2月2日までが旧正月の連休となるため、2月3日をキャンプ初日とするチームが多い。KTもその一つだ。

本来は寒い韓国を離れて海外キャンプを行うところだが、感染症拡大の影響で昨年に続き全10球団が韓国国内で練習を行う。鈴木コーチも現地での自主隔離を経てキャンプに加わる予定だ。

「まだ新しいチームなので、キャッチャーだけではなくてあの子たちをなんとかしなくちゃいけないと思っています」

鈴木コーチの韓国での2年目のコーチ生活が始まる。

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韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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