Yahoo!ニュース

左のエースが築いた韓国の栄光の歴史 19歳の高卒ドラ1がその後を継ぐか【東京五輪・野球】

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
高卒1年目で代表入りしたイ・ウィリ(写真:KIAタイガース)

東京オリンピック(五輪)の野球韓国代表は7月31日、予選B組の最終戦でアメリカ合衆国に敗れて1勝1敗とし同組2位となった。次のラウンド「ノックアウトステージ」の初戦ではA組2位のドミニカ共和国と対戦する。そのドミニカ共和国戦の先発マウンドに上がるのが高卒ドラ1ルーキーのイ・ウィリ(KIA)だ。

2002年6月16日生まれ19歳のイ・ウィリは今年、光州(クァンジュ)第一高校からドラフト1次指名で地元球団のKIAタイガースに入団。開幕直後から先発投手として起用され14試合4勝3敗、防御率3.89という成績だ。

コンパクトな腕の振りから繰り出す140キロ台後半の直球とチェンジアップ、スライダーで、制球が安定している時には三振の山を築く。イ・ウィリのようなエースの風格が漂う左腕投手の出現を韓国球界は待っていた。

韓国は歴代の国際大会で左のエース投手がチームをけん引してきた。銅メダルを獲得した2000年のシドニー五輪では後にオリックスでプレーするク・デソン、08年の北京五輪では若きキム・グァンヒョン、リュ・ヒョンジンが躍動し、金メダルを手にした。

韓国代表チームでのク・デソン
韓国代表チームでのク・デソン写真:築田純/アフロスポーツ

北京五輪の日本戦に2度先発登板したキム・グァンヒョン
北京五輪の日本戦に2度先発登板したキム・グァンヒョン写真:ロイター/アフロ

その翌年の09年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、ポン・ジュングンが日本戦で好投を重ねて準優勝を収めている。

現日本代表監督の稲葉篤紀を打ち取りガッツポーズをとるポン・ジュングン
現日本代表監督の稲葉篤紀を打ち取りガッツポーズをとるポン・ジュングン写真:ロイター/アフロ

しかしこの10年余り韓国は左投手だけではなく、リーグを代表する先発投手が現れていない。KBOリーグの多くのチームで先発1、2番手を外国人投手が担っている。三十代となったリュ・ヒョンジン、キム・グァンヒョン、そしてキム・グァンヒョンと同期のヤン・ヒョンジョンの左のエースたちは活動の場をアメリカに移した。

北京大会に続き東京五輪でも韓国代表を率いるキム・ギョンムン監督は、来日後にこう話した。

「イ・ウィリはまだ若いがとても良い。(同い年で追加招集)キム・ジンウク(ロッテ)も同じです。いまリーグにエース的存在の投手はいないが、今後彼らがリーグ全体を引っ張るような存在になればと思います」

キム・ギョンムン監督は代表チームの勝利を求めるのはもちろん、韓国球界の将来を考えて若き左腕投手を代表に選び、大舞台を任せる決断をした。この日の登板が未来へとつながるか。

韓国-ドミニカ共和国の勝者は翌2日(月)12時にイスラエルと対戦。敗者は3日(火)19時に行われる負けたら敗退が決まる「敗者復活戦」へとまわる。

この試合は民放テレビ局によるインターネットでのオリンピック公式競技動画配信サイト「gorin.jp」で生中継が予定されている(実況なし、現場音声のみ)。

⇒ 野球 ノックアウトステージ第1ラウンド ドミニカ共和国vs韓国(gorin.jp)

(関連記事:韓国がアメリカに敗れて1勝1敗に 予選を2位で終える(監督・選手のコメントも)【東京五輪・野球】

(関連記事:「アメリカには横手投げ」韓国が伝統の投手起用で日本との1位対決を目指す【東京五輪・野球】

東京五輪日程・概要と韓国代表一覧(ストライク・ゾーン)

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

室井昌也の最近の記事