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開幕から1ヶ月で選手の感染者はゼロ 現在の韓国プロ野球のコロナ予防対策は?

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
サヨナラ打で歓喜。感情を抑えられず濃厚接触?(写真:サムスンライオンズ5/29)

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、38日遅れでシーズンをスタートさせた韓国KBOリーグ。5月5日のシーズン開幕から1ヶ月が経過しようとしている。いまだ無観客での試合が続く中、選手たちはどのような感染予防対策をとっているのか。

NPBでは巨人が、球団内の希望者約220人の新型コロナウイルスの抗体検査を実施。うち4人(チームスタッフ含む)から感染後に回復したことを示すIgG抗体が確認され、PCR検査の結果、坂本勇人内野手と大城卓三捕手が陽性だったと3日に球団が発表した。2選手とも無症状で「微陽性」にあたるとしている。

一方、韓国では発熱症状など感染の疑いがあれば、PCR検査を受けることになっているが、選手の事前の抗体検査やPCR検査は行っていない。ここまでのところ選手をはじめ、球団関係者の感染者はゼロだ。

KBOリーグのコロナ対策は以前も紹介した、「KBOコロナ19対応統合マニュアル」にガイドラインが記されている。

(関連記事:コロナ禍における韓国プロ野球の対策 NPBより早い開幕、工夫するにも限界が? スポーツナビ 2020/5/6)

(関連記事:なぜ韓国野球は明日開幕できるのか? 新型コロナへの徹底した“戦い”がもたらした勝利 THE DIGEST 2020/5/4)

試合中、審判はマスクと衛生用のゴム手袋を着用し、一、三塁のベースコーチもマスクをしている。ベンチ内では選手以外の通訳などのスタッフもマスクをしているが、暑さや息苦しさからか、マスクから鼻を出した状態で着用しているのが大半だ。

左から三塁塁審、三塁ベースコーチ、走者のチョン・ジュンウ(写真:ロッテジャイアンツ)
左から三塁塁審、三塁ベースコーチ、走者のチョン・ジュンウ(写真:ロッテジャイアンツ)

また、選手は試合中、グラウンドにつばを吐かないといったことは徹底されている。一方で自粛を要請されている「素手でのハイタッチ」は行われ、選手同士が激励や喜びを表して抱き合う姿は、中継映像にも映し出されている。元々、選手間の触れ合いが多い韓国ではプレーによる感情の高まりを抑えるのは難しいようだ。

しかし試合中以外の感染予防対策は、開幕後も徹底されている。複数の球団に確認したところ、選手は起床するとKBOが提供するスマートフォン用独自アプリを開き、自身の体調に異常がないかを尋ねる項目にチェック。球場出発前に体温を測り、球場に入る前も検温を行っているという。

日本では遠征移動に際し、公共交通機関を利用することによる、感染リスクが懸念されているが、遠征地が全て地続きの韓国は元々、球団専用バスでの移動のためその心配はない。

これまでは次カードでの先発登板が予定され、ベンチ入りを外れるいわゆる「上がり」の投手に限り、次の遠征先に高速鉄道などを使って先乗りするケースはあった。しかし現在は全ての選手にバス移動が求められている。

バス移動の最長距離となるソウル-プサン(釜山)間は約320kmで、日本に置き換えると、東京から琵琶湖(滋賀県)くらいの距離。試合後に深夜の高速道を飛ばし、4時間程での移動となる。

各球団、主に投手、野手が分乗した2~3台のバスで移動。車内は旅客機のビジネスシートのような座席で、2列席と通路を挟んだ1列席のゆったりとした配置になっている。

各球団の専用バス(写真:ストライク・ゾーン)
各球団の専用バス(写真:ストライク・ゾーン)

また選手たちには試合後の食事など、外出に関して自粛が続いている。これについて選手からは「気分転換したいけど、我慢している」という声が聞かれた。

ここまでに全10球団が開幕から25または26試合を消化。当初の予定通り144試合を戦うことから、試合中止によって日程が過密になる不安もあるが、ここまで雨天中止は4試合のみ。中止に伴うダブルヘッダーも5月16日のLG-キウムの一度しか行われていない。

韓国も6月は梅雨の時期となるため、今後は天候が試合日程に影響を与える可能性はある。

韓国ではこの1か月の間にソウル市内のクラブや、ソウル市郊外のインターネット通販の物流センターなどで集団感染が発生。その影響で、早ければ5月下旬には実施と思われた、観客を入れてのプロ野球開催は見送られている。今後も選手、関係者の徹底した感染予防と無観客での試合が続きそうだ。

(関連記事:韓国プロ野球、新型コロナで延期していた開幕を5月5日に決定 無観客で38日遅れのスタート 4/21)

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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