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プレミア12決勝で山口俊から先制弾の韓国の若武者が、元メジャーの新助っ人に尋ねたこととは?

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
キム・ハソンの質問に答えるテイラー・モッター(写真:ストライク・ゾーン)

上の写真は台湾・高雄で春季キャンプを行っている、キウムヒーローズの練習中のひとこまだ。キム・ハソン(24)が、チームの新助っ人テイラー・モッター(30)に質問をし、モッターがそれに答えていた。2人の会話の内容はどのようなものだったのか。

「モッターに韓国とアメリカのバッターのスイングの違いを聞いたんです」

昨秋のプレミア12決勝戦で初回に日本の先発・山口俊(現ブルージェイズ)から先制2ランを放ったキム・ハソンは、長打力と俊足を併せ持つ遊撃手として活躍。昨季は打率3割7厘、本塁打19本、打点104。盗塁はリーグ2位の33個を記録した。

プロ7年目のキム・ハソンは早ければ、今季終了後にポスティングシステムを利用してのメジャーリーグ進出を希望。球団も容認している。

来年以降のメジャー行きを目指すキム・ハソン(写真:ストライク・ゾーン)
来年以降のメジャー行きを目指すキム・ハソン(写真:ストライク・ゾーン)

キム・ハソンの質問に対してモッターはマイク・トラウト(エンゼルス)と往年のホームラン打者、バリー・ボンズのスイングをまねして見せながらこう説明した。

「メジャーリーグのバッターは直球と変化球の球速差に対応するため、速くて小さいスイングをしている」

またこんな説明を付け加えた。

「メジャーのピッチャーは打者の手前で小さく動く、ムービングファストボールをよく投げる。それに対応するためにバッターは、投手側のひじをたたんで出すことが多い」

モッターの話を聞いたキム・ハソンは、「僕には難しいと思う。僕は重心を前に移動させて打つスタイルだから…」と話した。

キム・ハソンのミートポイントは、モッターの説明のような体に近い位置ではなく投手寄り(前)にある。キム・ハソンは今季を自身がこれまで培ってきた通りのスタイルでバッティングをするか、それともメジャー行きを意識した取り組みをするのか考えを巡らせている。

日本人選手でも今年からレイズでプレーする筒香嘉智(前DeNA)がメジャー行きを見据えて、以前から体に近い位置でのミートポイントと、逆方向に強い打球を打つことを心掛けたと伝えられている。2020年のキム・ハソンも未来をイメージして迎えるシーズンになるのかもしれない。

一方、キウムにはメジャーのスタイルとは反対に、ボールを前で打とうとしている打者がいる。キム・ハソンのチームの先輩で2016年から2シーズン、アメリカでプレーした韓国を代表する主砲のパク・ピョンホだ。

「(韓国は)公認球が変わって、力があるバッターは打球が飛ばないことを感じていると思う。僕は今シーズン、本当にわずかな差ですが、前(投手寄り)で打つようにしています。これまでの前の肘を曲げてスイングする打ち方ではなくて、体の重心を活用した打ち方に変えています」

(関連記事:「飛ばないボール」で本塁打42%減の韓国 東京オリンピック4番候補の対策とは?

メジャー進出を目指すキム・ハソンがポイントを後ろに置くか悩み、メジャー経験があるパク・ピョンホはKBOリーグの公認球に合わせて前で打とうとしている。2人は打撃練習中にも意見交換していた。

バッティングについて意見交換を交わすキム・ハソンとパク・ピョンホ(写真:ストライク・ゾーン)
バッティングについて意見交換を交わすキム・ハソンとパク・ピョンホ(写真:ストライク・ゾーン)

異なる意識でキャンプを過ごしているキム・ハソンとパク・ピョンホ。リーグを代表する2人の打者がレベルアップを図りながら、シーズンに向けた準備をしている姿はとても興味深かった。

※本記事は筆者がスポーツ朝鮮に韓国語で寄稿したコラムを、再編集し日本語で記したものです。

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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