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町村議会に占める60歳以上の議員の割合は76.9%。どうしたら若者の政治家を増やせるか?

室橋祐貴日本若者協議会代表理事
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

2023年4月に統一地方選挙が行われる。

統一地方選挙とは、4年に一度、地方自治体の選挙を全国的に一斉に実施することだ。

日本だと国政選挙ばかりが注目されがちだが、子育てなど身近な生活に関わることは地方自治体が決めていることも多く、地方自治体の首長、地方議会の議員選挙の影響は意外と大きい。

また国政選挙を実際に支えているのは地方議員であり、この地方議員の自民党議員の多さが、国政選挙でそう簡単に野党が勝てない大きな一因でもある。

その意味では、日本の政治を大きく変えようと思ったら、まずは地方議員の構成から変えなければ現実的に難しい(風が吹いて一回奇跡的に勝てたとしても、継続的に勝つことは難しい)。

政党別だけでなく、年齢や性別も重要な要素だ。なぜなら、国政選挙に出馬する候補者は、地方議員出身も多く、地方議員の平均年齢が高ければ、必然的に国会議員の平均年齢も上がるからである(同様に、地方議員に男性が多ければ、国会も多くなる)。

都道府県議会でも50代以上が70%以上を占める

では地方議員の構成を見ていこう。

まず男女の比率を見ると、県議会、市議会、町村議会、いずれも8割以上を男性が占めている。

出典:総務省
出典:総務省

そして、年齢別に見ると、町村議会は、60歳以上の議員の割合が76.9%となっている。

中には最年少議員が60代という議会も珍しくない(全国に91議会)。

出典:総務省
出典:総務省

最も平均年齢の低い都道府県議会でも、60歳以上だけで40%を超え、50代も含めれば、70%以上になる(71.2%)。

一方、20代と30代を合わせても、10%もいない。

結果的に、40代だけでなく、50代前半でも「若手議員」扱いされることも珍しくない。

これでは、若者や現役世代の課題がきちんと把握されず、後回しにされても不思議ではない。

ちなみに、20〜30代が占める人口の割合は、21%となっている。

出典:日本若者協議会
出典:日本若者協議会

自分たちの代表と思えない議員構成

国際的に見ても、日本の若手議員の割合は非常に低い。

出典:日本若者協議会
出典:日本若者協議会

この若手議員の比率は、(若手を登用しやすい)比例代表選挙を取り入れている国になれば、もっと大きくなる。

これによる悪影響は、政策への直接的な影響にとどまらない。

20代〜30代の若い世代の政治家が少ないことによって、若者の価値観を共有する政治家が少なくなることに加え、若い世代にとって政治家が「自分たちの代表」である意識を弱め、政治や選挙を遠くに感じてしまう遠因となっている。

結果的にさらに若者の政治参加が停滞するという、負のスパイラルを生み出している。

出典:日本若者協議会
出典:日本若者協議会

ほとんどが50代、60代ということは、若い世代にとって親世代であり、身近に感じようにも限界がある。

若者の政治家が少ない理由は?

では、なぜ若者の政治家が少ないのか?

まず最大の理由は、被選挙権年齢が高いことだ。

詳細は以前取材してもらった記事をご覧頂ければと思うが、地方議員の場合は25歳、都道府県知事の場合は30歳にならないと、そもそも出馬する権利さえ与えられていない。

「25歳の壁」って何?被選挙権の年齢引き下げが求められる理由

被選挙権年齢が引き下げられないのって、一言で言うと、若者がそれだけ信用されていないということなんですよ。個人的に若い人はもっと怒った方がいいんじゃないかなと思います。見下され、上の世代の人と上下関係が出来てしまっている部分を直していかないと、日本社会全体が新しい価値観に適応できなくなってしまうと思うんです。デジタル化の遅れもそういうところに関係すると思います。

引用元:「25歳の壁」って何?被選挙権の年齢引き下げが求められる理由

それ以外に、若者が出馬しない理由としては、様々あるが、主要なものとしては下記が挙げられる。

・「政治家」という選択肢がない

・出馬する際のお金がない

・落選するリスクが高い

・政治家になれる自信や知識がない

「政治家」という選択肢がない

まず一つ目は、政治家になるという選択肢が出てこない。

仮に社会課題の解決に関心があっても、その解決の手段として、ビジネスやNPOなどが取られることはあっても、政治家がそういう位置づけになれていない。

日本の主権者教育や報道では、投票のことばかりが語られ、それ以外のアプローチがあることは自分で調べなくては情報として入ってこない。

そもそも政治家が具体的に何をしているのか、きちんと知っている人は日本で多くはないだろう。

出馬する際のお金がない

次に、いざ出馬しようと思っても、金銭的負担が高く、躊躇してしまうケースだ。

まず供託金として、選挙に出馬する際にお金を預けなければならず(一定の割合票を獲得すれば後から返ってくる)、若い世代ほど、資産形成の時間が短いため、貯金も少ない。

また日本の選挙は、規制が多く、自由に活動することができないこともあり、ポスターやビラなど選挙運動自体にお金がかかる。

落選するリスクが高い

また少しずつ変わってきているものの、新卒主義、終身雇用が根強く、選挙に落選した際の転職リスクが大きい。

そもそも出馬する際、多くの場合は、会社を辞めなければならない。

一部の会社では「立候補休職制度」が導入されているが、会社員が政治活動することに抵抗感も根強い。

関連記事:JAXAに在職しながら出馬。「立候補休職制度」は議員のなり手不足解消に一石投じるか(室橋祐貴)

政治家になれる自信や知識がない

最後が、政治家になれる自信や知識がない。

政治家に興味はあるけど、政治家は選ばれた存在であり、自分が選ばれる自信がない、ふさわしいとも思えない。

またそもそも政治や選挙に関する知識がなく、勝てる自信もない。選挙を手伝ってくれる友人が少ない。ノウハウもない。

若者議員を増やすための取り組み

このように、若者議員が少ない理由は様々あり、一つ一つ解消しなければならないが、すぐにでも解消できるのが、最後の「政治家になれる自信や知識がない」だ。

政治家になりたいという選択肢(意欲)を持っている時点で、他の人より一歩進んでいる。

NPO法人Rightsの調査によると、「すぐにでも立候補する意思がある」「将来的に立候補する意思がある」と回答した18歳〜25歳は5.8%存在している。

出典:日本若者協議会
出典:日本若者協議会

この層に、実際に出馬してもらい、当選させることができれば、議会の議員構成は大きく変わる。

そのために、筆者が代表理事を務める日本若者協議会が取り組もうとしているのが、「若者立候補育成プロジェクト2030」だ。

2030年までに若者議員を全国で4000人誕生させることを目標に、2022年10月から立ち上げる。

出典:日本若者協議会
出典:日本若者協議会

具体的には、選挙プランナーや若手議員などの専門家を招き、政治活動・選挙活動を行う上で必要となる実践的な学びを得るための講義やワークショップなどを行う。

また同じく政治家を志す同世代とコミュニティを形成し、日頃の選挙活動や議会活動などに関する情報を共有する。

当選後には、日本若者協議会でまとめている若者政策などを紹介しながら、実際に若者政策の実現を一緒に目指す。

現在、参加者を集めており、政治家という、社会課題解決の手段に関心のある人は、ぜひ参加してもらいたい。

https://youthconference.jp/youngpoliticians2030/

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

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