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【2019参院選】<若者向け>テーマ別公約比較【社会保障編】

室橋祐貴日本若者協議会代表理事
(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

参議院選挙の投開票日は7月21日

教育」、「子育て・女性の社会進出」と若者に大きく関係するテーマを見てきたが、最後は「社会保障」を見ていく。

ちなみに、よく「高齢者向け」の政策として、年金や介護などが取り上げられるが、あまりに低年金者が多いと生活保護世帯の増加など結局若者の負担が増えることになり、介護はもちろん「介護離職」につながることになり、高齢者施策だと切り離して見ることは適切ではない。

当然、世代間対立を煽るべきでもない。奪い合いではなく、高齢者向けだろうが、若者向けだろうが、必要な部分には予算を充てていく。そうしければますます「自己責任」の意識が強まり、生きにくい社会になるだろう。

年金対策

○自民党

・厚生年金の適用拡大

・年金受給開始時期の選択肢の拡大

・私的年金の活用促進

・10月から、年金生活者年間最大6万円の福祉給付金を支給

・在職老齢年金の廃止・縮小

○公明党

・低年金者に最大月額5,000円(年6万円)を支給する「年金生活者支援給付金」の円滑な実施

・年金受給開始年齢の多様化や、高齢者の就労を進めるための在職老齢年金制度の見直し、被用者年金のさらなる適用拡大

・厚生年金等の未加入問題に取り組むとともに、マイナンバー制度を活用して「免除制度」の確実な適用を図るなど、国民年金等の未納・未加入問題の解消へ取り組みます。

○立憲民主党

・安心して医療や介護が受けられるよう年金の最低保障機能を強化します。

○国民民主党

・低所得の年金生活者に対して、最低でも月5,000円を給付します。

・短時間労働でも厚生年金に加入できるよう適用拡大

○日本共産党

・「マクロ経済スライド」を廃止

・高額所得者優遇の保険料を見直し、1兆円規模で年金財政の収入を増やします

・巨額の年金積立金を年金給付に活用

・低収入の年金生活者に、一律月5000円・年間6万円を現在の年金額に上乗せして給付

○日本維新の会

・働いても年金が減らない制度構築

・年金支給年齢の段階的な引き上げ等年金制度の再構築

・賦課方式から積立方式に移行

○社民党

・基礎年金について「マクロ経済スライド」による抑制を中止

・年金支給年齢の引き上げ(65歳を68歳~70歳へ)に反対。

・最低保障年金の創設

こうして見ると、与党である自民党と公明党は、厚生年金の適用拡大、年金受給開始時期の選択肢の拡大、低賃金者への追加給付など、現状の年金制度をベースにした改善策を掲げ、

野党は、年金の最低保障機能を強化(立憲民主党)、積立方式に移行(日本維新の会)、マクロ経済スライドを廃止(日本共産党、社民党)など、抜本的な改善策を提示している。

過去に記事(年金制度にまつわる数々の誤解と今後必要な制度改革案(2016/12/26))を書いた通り、現制度における年金の問題は、年金制度自体の持続性よりも、低年金者が生まれてしまうことだ。

ただ、誰も負担なしで追加することはできず、基本的には現状の制度の改善、短時間労働者や非正規社員等への厚生年金の適用拡大、受給開始年齢の引き上げ、被保険者期間の延長が重要になってくる。

また、若者世代・将来世代のためには「マクロ経済スライド」は残しておくべきであり、日本共産党や社民党が主張している「マクロ経済スライド」をなくすのは検討に値しない。

むしろ、ちゃんと現状を伝え、将来世代のために少し我慢してもらうべきだ。

もしこれを廃止してしまえば、再び社会保険料が上がることになり、現役世代のことを考慮しているとは思えない。

本来、年金制度とは高齢や障害によって働けなくなった(所得がなくなった)時の備え、防貧機能であることを考えれば、高所得者に必要額以上に支払う必要性は低く、現在高所得者にも支払っている国庫負担分は削減していくべきである。(カナダのクローバック制度が参考になる)

その意味で、高所得者への給付削減がどの党にも入っていないのは残念である。

医療、介護、最低賃金

○自民党

・特定健診・保健指導実施率の向上、歯科健診機会の拡大、介護予防に資する通いの場のさらなる拡充などを推進し、健康寿命を延ばします。

・小児・周産期医療、救急医療等の確保 、医師偏在対策、医師の働き方改革を進めます。

・かかりつけ医・歯科医・薬剤師機能の強化を含め地域包括ケアシステムを強化

・データヘルスやゲノム医療を推進、AI、センサー、ロボット、介護補助具等を活用し、医療・福祉分野の生産性の向上を図ります。

・介護・福祉人材の確保と介護の受け皿整備を進め、介護離職ゼロを実現するとともに、介護予防・フレイル対策、共生と予防を柱とする認知症対策を進めます。ICT化の推進により介護・福祉現場のペーパーレス化を進め、介護職員がケアに専念できる環境をつくります。

・最低賃金については、地域経済や中小企業・小規模事業者の実情、地域間格差に配慮しつつ、引き続き年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げることで、全国加重平均が1,000円になることを目指します。

○公明党

・認知症施策の推進に向けた基本法を制定

・地域医療介護総合確保基金を確保し、医療機関の集約化と重点化を行うとともに、病床の機能分化・連携、在宅医療の推進や介護分野との連携など、地域医療構想の実現に向けた取り組みを支援

・医師偏在対策を進めるとともに、タスクシフティング・シェアリング(業務の移管・共同化)や勤務終了時から翌日の始業時までに一定の休息時間を設ける勤務間インターバルの導入など医師の働き方改革に向けた支援を進めます。

・ICTによる医療情報連携や診断支援などによる医療現場の負担軽減、IoT機器による健康データ管理による生活習慣病の予防、AIによる健康相談システムの構築等で、医療現場の働き方改革を進めるとともに、超高齢化社会に備えた先進的なヘルスケアシステムを構築

・がん対策推進基本計画に基づいて自治体や職域での検診を後押しし、がん検診受診率50%以上の達成をめざすとともに、リスクの高い人に介入するリスク検診の導入

・「地域包括ケアシステム」の構築を加速

・今後の福祉人材の確保のため、賃金引き上げやキャリアアップ支援等の処遇改善や専門性の確保

・最低賃金を年率3%以上を目途として着実に引き上げ、2020年代前半には全国加重平均で1,000円超に、2020年代半ばには47都道府県の半数以上で1,000円以上へと引き上げ、地域間格差を是正。最低賃金引き上げの影響を強く受ける中小・小規模事業者への支援を一層強化

○立憲民主党

・暮らしの安心に欠かせない介護・医療・保育などの分野で賃金を引き上げます。

・医療・介護・保育・障がいに関する費用の世帯の自己負担額合計に、所得に応じた上限を設ける総合合算制度を導入

・女性医師・研究者が能力を最大限発揮できるようにするため、環境の整備を行います。女性医師・研究者の育成・支援に取り組み、女性医師・研究者の割合を引き上げます。

・中小零細企業への支援を拡充しつつ、5年以内に最低賃金を1300円に引き上げることを目指します。

○国民民主党

・健康寿命を延ばすため、予防医療やリハビリテーションを充実

・医療従事者の長時間労働の是正、女性医療従事者の就業継続 ・再就業支援などにより、医師・看護師を確保

・全ての介護職員の賃金を引き上げ

・かかりつけ医と訪問看護など医療と介護の連携推進、在宅サービスの充実、配食や見守りなどの促進を行い、「地域包括ケアシステム」の構築と定着を進めます。

・認知症予防事業や認知症患者の徘徊対策などを推進

・医療・介護・障害福祉等にかかる自己負担の合計額に上限を設ける「総合合算制度」を創設

・企業の雇用・賃上げ努力に応じて法人税率に差をつけるとともに、 中小企業には、正規雇用増加分の社会保険料事業主負担の半分相当を助成します。

・中小企業に適切な支援をしつつ、最低賃金は、『全国どこでも時給1,000円以上』を早期に実現

○日本共産党

・介護・保育労働者の月5万円の賃上げ

・公費1兆円の投入で国民健康保険料(税)を抜本的に引き下げます

・国が、小学校就学前の子どもの医療費を所得制限なしで無料化する制度をつくり、その土台のうえに自治体の助成制度を加え、小・中・高校生の無料化を推進します

・低所得者の介護保険料を3分の2の水準に軽減します。

・最低賃金をただちに全国どこでも1000円に引き上げ、すみやかに1500円をめざします。全国一律の最低賃金制度を創設します。中小企業

の賃上げ支援予算を1000倍の7000億円に増額し、社会保険料の事業主負担分を減免するなどして賃上げを応援します。

○日本維新の会

・医療・リハビリ・介護・福祉の連携によるいのち輝く未来社会の実現

・医療費の適正化・効率化

・自立支援に軸足を置いた介護の推進による健康寿命の延伸

○社民党

・医療、介護の自己負担や保険料の増大、生活保護費の切り下げなどにストップをかけます。

・医師、看護師など医療従事者の数を計画的に増やし労働条件を改善するとともに、医療の安全・質を向上させます。国公立病院の統廃合や民営化に歯止めをかけ、地域の拠点病院を守ります。

・「医療基本法」の制定

・要支援者・軽度者サービスの保険給付はずし、訪問介護・通所介護などの利用制限、繰り返される介護サービスの縮小をやめさせます。介護利用料の2割負担、3割負担の撤回を国に求めます。利用料・保険料の減免制度に取り組みます。

・最低賃金について、「大都市一極集中」や「大都市と地方の格差拡大」を是正するため、地域別から全国一律に転換し、時給1000円に引き上げ、1500円をめざします。あわせて中小・小規模企業への支援を一体的に行います。

網羅性という意味ではやはり公明党がもっとも具体的にかつ細かく対策を掲げている。

国民民主党は、(他の野党よりも)再分配だけではなく、経済成長にも目が向けられており、具体的な方法はわかりにくいが、「企業の雇用・賃上げ努力に応じて法人税率に差をつける」というアイデアは面白いのではないだろうか。

立憲民主党は「女性政策」において、女性医師の環境整備を掲げており、他のテーマも含め、女性によく目が向けられていると感じる。

最低賃金に関しては、野党が「5年以内に最低賃金を1300円」(立憲民主党)、「すみやかに1500円」(日本共産党)と野心的な目標を掲げているが、悪影響がどれくらいあるのか、その実現性、効果が判断しづらい。(韓国の事例を見れば非現実的だろうが)

最後に、「年金の最低保障機能」(立憲民主党)や「総合合算制度」の創設(立憲民主党、国民民主党)、「公費1兆円の投入で国民健康保険料(税)を抜本的に引き下げます」(日本共産党)など、予算が必要な政策も多く、財源とセットで見なければ、実現性をはかることができない。

そこで財源も見ていくと、日本共産党は具体的な率まで出しており、その点は評価できる。

財源

○自民党

・消費税率10%引き上げ(軽減税率)

○公明党

・消費税率10%引き上げ(軽減税率)

○立憲民主党

・消費税率10%への引き上げは凍結。金融所得課税や法人税などを見直し、税の累進性を強化して公平な税制へ転換

○国民民主党

・消費税引き上げに反対

・「子ども国債」を発行

○日本共産党

・消費税10%への増税の中止

・中小企業の法人税負担率は18%ですが、大企業は優遇税制があるため10%しか負担していません。大企業に中小企業並みの負担を求めれば4兆円の財源がつくれます。

・所得が1億円を超えると、所得税の負担率が逆に下がります。富裕層に有利な証券税制の是正と最高税率の引き上げで3.1兆円の財源になり

ます。

・米軍への「思いやり予算」や辺野古の新基地建設費など、国民の税金を使う必要のない予算を廃止して0.4兆円の財源をつくります

○日本維新の会

・消費増税凍結

・議員報酬3割カット、議員定数3割カット

・国家公務員の人員削減、人件費2割カット

・歳入庁を設置し徴税と社会保険料の徴収を一元化

○社民党

・税制における「応能負担」原則・「所得再分配」機能を取り戻します。消費税の税率10%への増税に反対

・所得税の累進性強化、内部留保をためこむ大企業への法人課税強化など、税制全体をパッケージとした税制改革を行うとともに、膨張する防衛費などの歳出を見直し、財源を確保

<今回参照した各政党の公約一覧は下記の通り>

○自民党

令和元年 参議院選挙公約

○公明党

公明党政策集 Manifesto2019

○立憲民主党

立憲ビジョン2019

女性政策

○国民民主党

新しい答え2019

○日本維新の会

日本維新の会マニフェスト―詳細版―

○日本共産党

2019参議院選挙公約

○社民党

ソーシャルビジョン 3つの柱

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

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