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「紅白」初出場の新しい学校のリーダーズの大ブレイクまでを支えたギネス保持者・H ZETTRIOとは

宗像明将音楽評論家
H ZETTRIO(写真提供:ワールドアパート)

本日2023年12月31日に放送される「第74回NHK紅白歌合戦」に初出場する新しい学校のリーダーズ。その音楽面での立役者は、ギネス記録を保持している……と書くと、冗談のように思われるかもしれないが、本当なのだ。

2023年にYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で「オトナブルー」を歌唱するなど、大ブレイクを果たした新しい学校のリーダーズだが、その結成は2015年にまでさかのぼる。そして、2017年6月にシングル『毒花』でメジャー・デビューを果たしたときプロデューサーがH ZETT Mだった。

H ZETT M(写真提供:ワールドアパート)
H ZETT M(写真提供:ワールドアパート)

H ZETT Mは、H ZETTRIOというジャズ・トリオでピアノを担当する人物。さらにH ZETT NIRE、H ZETT KOUというメンバーもおり、それぞれ鼻の頭がH ZETT Mは青、H ZETT NIREは赤、H ZETT KOUは銀と色分けされているグループだ。そんなグループなので、新しい学校のリーダーズの持つケレン味とは、最初から相性が良かったのかもしれない。

H ZETT NIRE(写真提供:ワールドアパート)
H ZETT NIRE(写真提供:ワールドアパート)

新しい学校のリーダーズでは、前述の『毒花』だけではなく、シングルでは2017年10月の『キミワイナ'17』、2018年8月の『狼の詩』もH ZETT Mが作曲を担当し、『狼の詩』ではH ZETTRIOが演奏も担当しているほか、ジャケットにまで登場している。

アルバムでも、2018年3月の『マエナラワナイ』、2019年3月の『若気ガイタル』は、H ZETT Mがプロデュースとほぼ全曲の作曲を担当。『マエナラワナイ』の「恋の遮断機 feat.H ZETTRIO」では、新しい学校のリーダーズとH ZETTRIOのコラボも行われていた。その後も、2023年4月の配信限定EP『一時帰国』で、「乙女の美学」「踊る本能001」の作編曲をH ZETT Mが手掛けるなど、現在に至るまで新しい学校のリーダーズとH ZETTRIOの交流は続いている。大ブレイクまで、新しい学校のリーダーズの音楽面を支えていたのがH ZETT Mだと言えるのだ。

H ZETT KOU(写真提供:ワールドアパート)
H ZETT KOU(写真提供:ワールドアパート)

『マエナラワナイ』に如実なように、ジャズをベースにして歌謡性も強調した楽曲群は、歌謡性に満ちた大ヒット曲「オトナブルー」(yonkey作曲)の呼び水だったとも言えるだろう。個人的には、『毒花』のカップリング曲「ワカラナイ」や『マエナラワナイ』収録の「zzz」のラウンジ・テクノ風味や、『キミワイナ'17』のカップリング曲「SNS24時」で展開されるジャズファンクも印象深い。『若気ガイタル』収録の「ラチラチラミー ~試験当日~」は、アブストラクト・テクノ歌謡とでも呼びたくなるサウンドだ。

さて、冒頭で触れたH ZETTRIOのギネス記録とは、2019年1月から毎月新曲を配信リリースしていることに対してのギネス記録だ。バンド結成10周年となる2023年には、60か月連続での配信リリースを記録し、「単一音楽ユニットによるデジタルシングル連続リリース月最多数」を認められ、2023年12月11日にはブルーノート東京で認定式が行われた。この「H ZETTRIO LIVE 2023 祝 -60ヶ月連続配信達成記念-」は、12月10日、11日の2日間にわたって開催され、両日で60曲全曲が披露された。実にパワフルな活動ぶりなのだ。

H ZETTRIO(写真提供:ワールドアパート)
H ZETTRIO(写真提供:ワールドアパート)

H ZETTRIOのライヴを見ると、そのフィジカルな躍動感に魅了される。一方で、これまで何度かH ZETTRIOにインタビュー取材をしてきたが、彼らの非常に理知的な姿勢も印象に残っている。新しい学校のリーダーズとH ZETTRIOを結びつけてきたのは、実はその知性の部分だったのではないだろうか。2023年12月31日には、テレビ神奈川で5年連続となる5時間ぶっ通しの特番「SPEED MUSIC ソクドノオンガク」も放送される。2024年のH ZETTRIOの活動も楽しみにしたい。

H ZETTRIO(写真提供:ワールドアパート)
H ZETTRIO(写真提供:ワールドアパート)

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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