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大号泣した一番最初の楽曲をCDで全国に届けたい~シンセカイセン&Dr.Usuiインタビュー

宗像明将音楽評論家
シンセカイセン(提供:ディアステージ)

 これだけ話せるのに、インタビューが初めてというグループも珍しい。ガールズ・ユニットのシンセカイセンが、2018年10月16日に「ハカイノウタ(2018update)」をリリースする。彼女たちにとっての初のCD、しかも全国流通盤だ。

 シンセカイセンは、2018年1月20日には渋谷TSUTAYA O-WESTで開催された初のワンマンライヴ「シンセカアップデート中ver1.0-START NEW WORLD-」も成功させている

 傍目には順風満帆に見えるかもしれないが、秋葉原ディアステージの仲間たちで結成してから実に約4年。グループ名も「Gimmick!」から「PRP」になり、さらに彼女達にとって初めてのサウンド・プロデューサーや担当マネージャーが付くようになり「シンセカイセン」として改めて始動した。

 現在に至るまでのシンセカイセンの歩み、そしてこれからについて、メンバーとサウンド・プロデューサーのDr.Usuiに話を聞いた。

シンセカイセン(左から鳴海ちか、松永ゆずり、神楽坂れたす、キャンディスン)とDr.Usui。(撮影:利根川貴之)
シンセカイセン(左から鳴海ちか、松永ゆずり、神楽坂れたす、キャンディスン)とDr.Usui。(撮影:利根川貴之)

シンセカイセン初めての楽曲にして代表曲「ハカイノウタ」

――シンセカイセンの代表曲「ハカイノウタ」が、「ハカイノウタ(2018update)」としてついに全国流通で初CD化されるわけですが、「ハカイノウタ」の初披露はいつだったのでしょうか?

神楽坂れたす  忘れもしない2017年2月14日に、「シンセカイセン」という名前のお披露目と一緒に曲を出しました。

キャンディスン  シンセカイセンはロマンティックな日に生まれたユニットなんです。

――ロマンティックな日に、その名も「ハカイノウタ」を初披露したわけですね(笑)。そこから約1年8か月を経てCDで全国流通するのはどんな気持ちでしょうか?

松永ゆずり  ダウンロードカードで初めて出したのも「ハカイノウタ」で、嬉しかったけどCDで出したい気持ちもあったので、むちゃくちゃ嬉しいです。他の人よりもCDで出すことの重みが大きいと思うので、なんかすごく緊張します。

鳴海ちか  もうCDになるだけで嬉しかったんですけど、全国の人にそれを届けられるっていうのが嬉しくて。CDだから頑張れば世界の人にも届けられると思うと嬉しいです。あと、タワーレコードさんやHMVさんとかに挨拶しにいくことに憧れがあって、早く置いてあるブースで写真を撮りたいです。

キャンディスン  全国に自分たちの声を届けられるのはすごく嬉しいです。あと、CDショップは「あ行」から順にCDが並んでいるじゃないですか。この間CDショップに行ったときに、「さ行」の「し」のところにシンセカイセンが並ぶのを妄想していたら、ちょっとにやにやしてきちゃって(笑)。「もっともっとシンセカイセンが広まって、ブースが作られるようになったらどうしよう!」みたいな妄想が今、すごく膨らんでいて。でも、全国に広まるためには、まだまだ自分が頑張らなきゃなと思うので、ここからがまた再スタートだなって気持ちです。

――なるほど。話が逸れますが、キャンディスンさんは私服でもそんなセクシーな格好をしているんですか?

キャンディスン  今日はその辺の服を着てきたんです(笑)。

――なるほど。神楽坂れたすさんはいかがでしょうか?

神楽坂れたす  「ハカイノウタ」は、最初のシンセカイセンの曲で最初のダウンロードカードの曲だし、節目の曲になっていて、それがCDになるのはすごく嬉しいです。私は昔すごくCDを買っていて、アイドルさんの同じCDを何枚も買ったりしていて、リリース・イベントにも行っていた時期があるんです。下から見ていた自分がステージにいる側になるなんて想像もしていなかったし、自分がわくわくした気持ちでCDを買ってアイドルとツーショットを撮っていたのに、自分がやる側になるのが、やりながらもいまだに実感はあまりなくて。たまにふとしたときに「あ、やばいことしてる、私!」みたいに思います。

――ちなみに一番CDを買ったアイドルは誰ですか?

神楽坂れたす  乙女新党さんです。荒川ちかさんとすごく撮っていました。CDを買ってくれる人に、そういうわくわくの気持ちを持っていてほしいから、自分もわくわくの気持ちを持っていたいです。

シンセカイセン「ハカイノウタ(2018update)」ジャケット(提供:ディアステージ)
シンセカイセン「ハカイノウタ(2018update)」ジャケット(提供:ディアステージ)

「ハカイノウタ」の1分近いビルドアップ

――シンセカイセンの1曲目としてDr.Usuiさんから渡された「ハカイノウタ」はEDMです。「ハカイノウタ」を初めて聴いたときの感想はいかがでしたか?

キャンディスン  もう練習スタジオで、歌が入っていないオケを聴きながら、みんなで大号泣したんですよ。

神楽坂れたす  音を聴いて大号泣して、歌詞を見て大号泣して、できあがりを聴いて大号泣しました。

――4人で大号泣したポイントはどこだったのでしょうか?

神楽坂れたす  私たちのために作ってくれた曲が今までなかったんです。でも、Dr.Usuiさんや利根川さん(利根川貴之。『ハカイノウタ』の作詞を担当)が私たちの話を聞いてくれて曲にしてくれたので、そのときの私たちの感情そのものだったんです。

キャンディスン  「ハカイノウタ」は、4人でユニットを始めてからシンセカイセンになるまでの悔しさとか、「こんなに頑張ってもなんで見てくれないんだよ!」みたいな気持ちを、全部利根川さんが歌詞にしてくれたし、音楽も私たちが欲しかったEDMで、それが全部組み合わさっていて。だからオケだけでも泣けるし、歌詞を見てさらに泣けました。

鳴海ちか  「これって自分たちの曲なんだ」って思い入れがいっぱい詰まりすぎていて、その音だけで泣いちゃう感じだったんです。今でも危ない(笑)。1年半以上たっても「ハカイノウタ」って一番最初の曲だし大事な曲だし。昔は自分たちの悔しかったことが詰まった曲だったけど、今はファンの人たちが聴いて「頑張ろう」と思ってくれる曲になってきていると思います。

松永ゆずり  EDMがもともと好きなんです。ビルドアップのところで強い音がいっぱいあって、こんなかっこいい曲がもらえたんだと思いました。私は歌に自信がなかったけど、「これに見合うようにかっこよくなんなきゃ」という気持ちになりました。

――「ハカイノウタ」はビルドアップが1分近くあるんですよね。かなり冒険的だと思います。

Dr.Usui  1回完成したとき、利根川君に「これは長すぎるだろう」と言われたけど、「ここは大事だし、もし振り付けの人が『どうしてもこれは長すぎる』って言ったらカットするから、一旦これで完成させてください」って主張しました。振り付けの先生に「すごく難しいと思うんですけど、大変だったら短くするんで言ってください」って言ったら、すごい振り付けを考えてくださって、切らないで済みました。

キャンディスン  今はそこが見せ場だもんね。

Dr.Usui  ビルドアップにはすごくこだわりがあって、これによって骨太な曲にしたかったんです。音の要素はなるべく少なくしたいけれど、それをちゃんと聴かせるためには、長いタメが必要だなと思ったんです。

――ビルドアップのところは、普通のEDMのマナーだと盛りあがるんですけど、「ハカイノウタ」に関してはみんながステージ上のシンセカイセンに見入っていますよね。1分近くも。

松永ゆずり  全然長いとは感じなかった。

鳴海ちか  長いと思わなかった。

神楽坂れたす  てか、1分近くあるの?

キャンディスン  ビルドアップでは曲に入りこんでいて、「自分たちは悔しさから抜け出して輝くセカイセンに行っているんだ」って思いながらやっているんです。

鳴海ちか  殻を破る瞬間だね。

松永ゆずり  スペースマウンテンみたいに。スペースマウンテンは、上がっているときに、周りがめっちゃ速く動くところがあるんですよ。ああいう気持ちでやっています。

Dr.Usui  アイドルは総合芸術なんで、振りも含めて完成される部分があるんです。だからアイドルEDMソングに、ああいう演劇性を入れるのは、たぶん相当新しかったと思うし、今もああいうことをやっているアイドルはいないと思います。

――Dr.Usuiさんは、なぜ今回改めて「ハカイノウタ(2018update)」を制作したのでしょうか?

Dr.Usui  東名阪ツアーのタイミングで初の全国流通盤を出せるので、カップリングの「ドゥイ☆ドゥイ」をリード・トラックにするアイデアもあったんです。だけど、やっぱり一番最初に知ってもらうべきなのは「ハカイノウタ」なんじゃないかと思いました。1年8か月歌い続けて、聴いたお客さんを勇気づけられる曲になったんじゃないかな。だから「ハカイノウタ」を表題曲にするべきだと判断したんです。

シンセカイセン。左からキャンディスン、鳴海ちか、松永ゆずり、神楽坂れたす(撮影:利根川貴之)
シンセカイセン。左からキャンディスン、鳴海ちか、松永ゆずり、神楽坂れたす(撮影:利根川貴之)

ライヴに来てくれるファンを想像しながらヴォーカルを録音し直した

――「ハカイノウタ(2018update)」では、ヴォーカルを録り直したんですか?

全員  録り直しました。

――トラックは同じでしょうか?

Dr.Usui  ミックスをやり直していますね。

――ヴォーカル録り直すにあたって、変わったところはあったでしょうか?

鳴海ちか  まず声量が違うんですよ。みんなの声も大人になっていたんです。

キャンディスン  去年初めて録ったときは全力で歌う感じだったけど、今回は「ここはちょっと力を抜こう」とか「感情を込めて歌おう」っていうのをプラスアルファできたかもしれません。

神楽坂れたす  前回録ったときはすごく真っすぐ歌っていたんですけど、ライヴでやっていくうちに、歌い方の癖が強いみたいで、ねちょねちょしてきちゃうんですよ。

――ねちょねちょしてくる……?

神楽坂れたす  録り直すときに1回フラットに歌ったら、Dr.Usuiさんと利根川さんに「え、ねちょねちょ歌わないの?」って言われて。褒められてない気がするんですけど(笑)。1年半で歌い方が変わったのを新しく録り直せたのは、再出発感があっていいなと思いました。

松永ゆずり  私は最初に歌ったとき、本当に歌うのが苦手で、喉もすぐ腫れちゃうし、歌うので精一杯だったんです。でも、1年半以上やってきて録り直したときは、気持ちも込められるし、ライヴをしているのを想像しながら歌えるようになっていて。いつも来てくれるみんなのことを想像しながら歌うと、気持ちも込もるし、すごくいい歌を歌えるような気がして。少しだけ余裕ができて、表現をプラスすることができるようになったと思いました。

「ドゥイ☆ドゥイ」の「四天王み」

――さらにカップリングとして「ドゥイ☆ドゥイ」が入ります。こちらはユーロビートですね。

神楽坂れたす  「ドゥイ☆ドゥイ」は、「おいおいみんな、ちょっと楽しもうぜ!」みたいな感じなんで、かっこつけて楽しむ曲だと思っています。

松永ゆずり  「ウェイウェイ!」みたいな感じがみんな好きなので、歌っていてすごく楽しいです。

神楽坂れたす  小生意気な感じでね。

鳴海ちか  私は「ドゥイ☆ドゥイ」を歌うのが実はすごく難しくて、いつもソロのところでライヴ中も眉間に皺が寄っちゃうんですよ。でも、それも含めて「鳴海ちか」みたいな。まだ成長していけたらなと思います。

キャンディスン  初めて東名阪ツアーをやるテーマソングとして「ドゥイ☆ドゥイ」を作ってもらったんです。だから、イントロの部分で「四天王み」がすごい曲だなと思ったんです。

――まさに4人ですしね。

キャンディスン  「1年半以上やってきて、堂々と初の東名阪ツアーをやってやるぜ!」みたいな曲かな。だからすごいドヤ顔で歌っています(笑)。

シンセカイセンが「シンセカイセン」になる前の話

――「ハカイノウタ」というのは、Gimmick!やPRPの時代を含めた歴史を踏まえた楽曲ですが、ユニットが作られたのは正確にはいつなのでしょうか。

キャンディスン  2014年6月です。

――Dr.Usuiさんがサウンド・プロデュースする体制になるまでの約3年間は、4人はそれぞれどう感じていたのでしょうか?

キャンディスン  私がわがまま言いまくっちゃったかも。もともと「ツキイチ!」(秋葉原ディアステージのイベント。投票で1位になったアイドルに楽曲が提供される)のために組んだのも、同い年だったので「やろうよ!」って勝手にグループLINEを作ったんです。私とちかが中学校から同級生だったので、ゆず、ちか、私の3人でグループを組んだら、ゆずが「キャンとちかは中学から仲が良すぎるから、私はひとりで嫌だ」って言って、神楽坂れたすを連れてきて。

神楽坂れたす  でも、私は何も話を聞いていないで入れられたから、当時ちかちゃんとは一言もしゃべったことがなかったんです。

鳴海ちか  そう、私も知らなかった。3人でやるつもりでいたら、なんか4人になっていると思って(笑)。しかも、どんな子かも知らないし、私は不安からスタートしました。

キャンディスン  でも、私はその頃から無駄に自信があって、「いやいや、いけるっしょ、勝てるっしょ!」「さいたまスーパーアリーナ、立てるっしょ!」みたいな感じでやっていて。その後も、アイドルのユニットをやるんだったら、メンバーはこの4人がいいっていう結論になり、私もゲッターズ飯田さんの占いで「9月の終わりまでに決めたことを4年間やり続けたら成功するよ」って言われたんです。

――いきなり占いが出てきましたね。

キャンディスン  だから私がディアステージの代表に「時間を作っていただきたいです」とお願いをして、企画書も作って、4人で1時間プレゼンをしたんです。

神楽坂れたす  でも、私は2017年2月14日以降のほうが本当に目まぐるしくて……。

キャンディスン  マネージャーさんが付いたことが大きいかもしれないです。2016年12月にクリスマス・イベントをやったんですけど、そのときはまだまなみさん(現シンセカイセン マネージャー)は別のユニットのマネージャーで、怖いマネージャーで有名だったし、私たちのことを嫌っていると思っていたんですよ。

神楽坂れたす  なのに、そのクリスマス・イベントの日に話しかけてきたんだよね。

キャンディスン  そう、アドバイスをしてくれて。私、大人からアドバイスされることもなかったんです。それで、クリスマスの25日に「マネージャーさんが来年から付きます」って言われて、本当にクリスマス・プレゼントみたいな感じで。そうしたら、さらにサウンド・プロデューサーとしてDr.Usuiさんも付いてくれるということを知り、そこから怒涛の毎日がキラキラしながら始まりました。転機だったね。

――「START NEW WORLD」のMVでは、結成当初のことも語られているじゃないですか。特に思い出深いことはあるでしょうか?

鳴海ちか  全部を自分たちでやらなきゃいけなかったので、振り入れもCDを焼くのも自分たちで全部やっていました。

松永ゆずり  昔は、ただやりたいようにやっている感じでした。でも、それじゃ自分たちがなりたいものにはなれなくて。アイドルは同世代の方が多くて、みんなすごくキラキラ楽しそうにしているのに、私たちはライヴもそんなにできないし、うまくいかない感じがしていました。

キャンディスン  いくら頑張ったところで、見てくれる人があまりいなかったんです。秋葉原ディアステージの1階が入場規制になるぐらいお客さんを呼んでも、結局なんか内輪で終わっちゃう。必死に頑張っていたんですよ、寝る時間も削って衣装を作ったり。でも、「やり切った感」は生まれるけど、それが実際にさいたまスーパーアリーナっていう目標に近づいてるかって言われたら、近づいてないっていうのが苦しくて。

神楽坂れたす  私は3人についていくのに必死だったんです。私は本当に踊りが苦手なんですよね。みんなが振りを覚えて、衣装を作っていたとしても、私はそのときにまだ振りを覚えられていなかったんです。3人と同じラインに立つのに必死すぎて、あまりユニットに対して貢献できていなかったと思います。

――そもそも秋葉原ディアステージに入ったきっかけは、4人それぞれどういう理由だったのでしょうか?

神楽坂れたす  私はPAをしたくて。

――え、PA?

神楽坂れたす  音楽を聴くのが好きで、音をもうちょっとちゃんとわかるようになれたらいいなと思って。秋葉原の文化も面白いし、PAと一緒に学べたら楽しいなと思って、PA志望で履歴書を送ったんですよ。そうしたら「PAをするんだったら、まずはキャストで1回働いてから、PAの仕事をやってもらうから」と言われて、「そうなんですね」って言いくるめられました(笑)。

松永ゆずり  私は大学生になるときに東京に出てきて、かわいい服を着てバイトをしたかったんです。「踊ってみた」をやっていて、そこでピンキー(藤咲彩音。でんぱ組.inc)さんと知り合いになっていて、ピンキーさんがいるディアステージなら大丈夫かなと思って、オーディションを受けました。

鳴海ちか  私はキャンと中学校から一緒で仲良しで、ふたりで人前に出る後夜祭とかをやっていたんです。「踊ってみた」もふたりでやっていて、ふたりで歌って踊りたい気持ちがあったので調べていたら、ディアステージのオーディションがあって、「一緒にやらない?」って誘いました。

キャンディスン  私はもともと芸能に進みたい気持ちがあったけど、高校生のときはいつもオーディションの最終審査で落ちていて。悔しいなと思っていたら、ちかちゃんに誘われて。当時は未鈴さん(古川未鈴。でんぱ組.inc)しかまだ知らなくて、アイドルさんはももいろクローバーZさんしか聴いてなかったんですよ。

――しかも、ももいろクローバーZは事務所が違いますね。

キャンディスン  「ちかちゃんが受けるなら私も受けるか!」みたいな軽いノリで受けて。私は当時ヘアメイクの学校に行っていたので、当日はオーディション会場に行けなくて、別日に行ったらちかちゃんと一緒に受かったんです。

シンセカイセンは「萌え」ではなく「エモ」

――そして今、ディアステージの中で自分たちのポジションはどんなものだと思いますか?

神楽坂れたす  たしかに異端児。

松永ゆずり  先輩から「強め」とか「ギャル」とか言われるんです。秋葉原ディアステージにはあんまそういう子はいないじゃないですか。面白い人はいっぱいいるけど、「イエーイ」って感じの人はあまりいない。

キャンディスン  だから、でんぱ組.incさんのぐれた姪っ子みたいな(笑)。

鳴海ちか  「強くて、自分たちのやりたいことをやっていて楽しい」みたいな存在ですね。私たちだけのジャンルでありたいです。

神楽坂れたす  ディアステージって萌え産業なんですけど、シンセカイセンって「萌え」とは違うと思っていて。

Dr.Usui  「萌え」じゃなく「エモ」ですね。

神楽坂れたす  悪く言えばディアステージ向きではないのかもしれないとちょっと思うんですけど、でもディアステージは大好きなんですよ。

松永ゆずり  よく「シンセカイセンってディアステージだったんだ?」って言われます。

キャンディスン  驚かれるんですよ、なんか。

神楽坂れたす  あえてのディアステージっぽくなさ。萌え産業ではないところを行こうとしているのが、万人に受けるかどうかは別としても、貫きたいなって思います。

――その「エモ」っていう文脈で言うと、2018年9月17日にnuance(ヌュアンス)と一緒にタワーレコード渋谷店でリリース・イベントをやったとき、シンセカイセンが巨大な紙工作みたいなものを持ちこんでいて驚いたんですよ。

キャンディスン  パネルだ。

――そう、「NO SINSEKA, NO LIFE?」っていうパネルを自分たちで作ってきて、シンセカイセンはこういう人たちなんだよなと改めて感じました。

キャンディスン  そこはディアステージのDIY精神がちゃんと受け継がれていて忘れないんですよ。

――あれは誰が言い出したんですか?

松永ゆずり  みんなもともと「あれ借りたいね」って言っていて。

キャンディスン  でも、メジャーのアーティストさんレベルじゃないと借りられないかもと思ったので「自分たちで作るか!」みたいな(笑)。「段ボールで作れるじゃん!」って、事務所の近くのコンビニに段ボールをもらいに行くところから始まりました。

神楽坂れたす  でも、6時間もかかってないよね。

キャンディスン  4、5時間だったね。

Dr.Usui  ライヴをやったり、リリース・イベントをやったりしている間に、こういうことをやっていますからね(笑)。

さいたまスーパーアリーナへのロードマップ

――2018年10月20日には、東名阪ツアーファイナル「SSS TOUR2018-Chaos Theory-」が渋谷ストリームホールで開催されますが、どんなライヴにしたいでしょうか?

鳴海ちか  「Chaos Theory」っていうタイトルが付いているし、みんなが予想できないようなライヴというか時空間にしたいなと思っています。

神楽坂れたす  最初から最後まで見てほしいです。なんなら1曲目の前から全部を見て完成する作品みたいな作り方をしているんです。

松永ゆずり  大阪、名古屋も「Chaos Theory」というテーマでやってきたんですけど、それとは違う感じで予測できない東京公演になるんです。来てくれる人が考えていることを、いかに裏切るかをすごく考えて、「これやったら面白くない?」みたいな感じでアイデアを練っています。

キャンディスン  「Chaos Theory」はカオス理論を英語にしただけなんですけど、やっぱ何かひとつが加えられることで変わっていくじゃないですか。だから予測不可能なシンセカイセンらしさを詰めこみたいし、「こうやって上にあがってくると思ってなかっただろ?」みたいなところを見せたいです。さいたまスーパーアリーナにつなげられるライヴにしたいんで。

――そのさいたまスーパーアリーナを目標にしていますが、今後シンセカイセンではどう活動していきたいでしょうか?

鳴海ちか  まず音楽番組に出たいです。深夜の音楽番組で取りあげてもらって、そこからみんなに広まっていくという夢があります。

松永ゆずり  私はウェイなフェスに出たくて。

――「Ultra Japan」とか?

松永ゆずり  そうです。

キャンディスン  出たい!

松永ゆずり  そういうのに出ていって、おしゃれな感じで「イェイ!」ってしたいです。

キャンディスン  世界を牛耳りたいよね。

――話が急にでかくなりましたね。

神楽坂れたす  私、神奈川県民なのでFm yokohamaに出たいんですよ。家族がみんな驚くと思うんです。あと、横浜アリーナに立ってみたいです。

――Fm yokohamaと横浜アリーナの距離感がすごいですね!

キャンディスン  目標はもちろんさいたまスーパーアリーナなんですけど、そこに行くまでに「ミュージックステーション」にも「CDTV」にも出たいです。あと、やっぱり「TOKYO IDOL FESTIVAL」でアイドルさんからも「ワーッ!」と言われる人になりたいんです。タイムテーブルを見て「やっぱりシンセカイセンは最後だよね」みたいな立ち位置に行きたいんです。

――どうなったら、そうなれると思いますか?

キャンディスン  まずは渋谷ストリームホールを埋めなければいけないと思うんですよ!

――いい感じに宣伝につなげましたね!

キャンディスン  バレましたか(笑)。でも、まずひとつひとつ埋めていかないと、さいたまスーパーアリーナにたどり着けないんです。でも、ひとり1万人ファンがいたら可能じゃないですか。まずは渋谷ストリームホールのキャパは約700人なんで、1人に200人ずつファンがいれば完璧だし、追加公演になるんで、まずそこまでファンを増やしたいと思います。もう口だけならいくらでも言いますよ!

――その調子でいきましょう!

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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