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日本代表・姫野和樹が語るリーグワンの伸びしろとは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
オンライン取材に応じる姫野

 ラグビー日本代表の姫野和樹が12月22日、オンラインで会見。来秋のワールドカップフランス大会への展望に加え、所属するトヨタヴェルブリッツの共同主将として12月17日開幕の国内リーグワンへの思いを語った。

 身長187センチ、体重112キロの28歳。2019年のワールドカップ日本大会では5試合に出場し、史上初の8強入りに喜ぶ。勝負どころで繰り出したジャッカルを流行語とするなど、快進撃の立役者となった。

 今秋の代表活動では強豪国から未勝利も、チーム力の高まりには手応えを感じているという。

「練習でやりたいことを理解してやれているかという、プロセスの面での自信はある。新しい選手が入ったなかでチームのコネクトが獲れていることも自信につながっています」

 今回は自ら希望する形で、共同会見を開いた。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——まず、リーグワンについての所感は。

「リーグワン2年目。もうちょっと、お客さんに来てもらえたら嬉しいなというのが思ったところ。(ヴェルブリッツの初戦は)雨が降っていたのもあり難しかったとは思いますが、全体的に見ても集客は今後の課題になる。

(ヴェルブリッツは)いいプレシーズンを過ごしたんだなと——まだチームに(代表活動から)帰ってきて2週間ですが——思います。自分のコンディションもいい。日本代表の秋のシーズンから、身体の調子がよくなってきているので、あとはトヨタの新しいラグビーにマッチングさせていきたいというのがいまの感想です」

——ヴェルブリッツの初戦は12月17日。愛知・豊田スタジアムで静岡ブルーレヴズに31―26で競り勝ちました。姫野選手はリザーブスタートで、後半18分からプレーしました。

「いまのトヨタのバックロー(姫野がプレーするフォワード第3列)はすごく調子がいいですし、僕自身、開幕週の前の週に体調を崩してしまって——(チームが開幕前に実施した)記者会見に出られず申し訳なかったんですが——また、ベン・へリング新ヘッドコーチがやるラグビーをまだまだ理解できていない部分もあるので、『リザーブから』と話をしました。僕としては自分が与えられた仕事をやるだけ。いまはラスボス(※)ほどではないですが、その役割ができれば幅も生まれる。いいチャレンジ。リザーブからの出場でどうチームを変えるかというポジティブな課題もある。大事な経験としてとらえています」

※昨季のリーグワンでMVPを取った埼玉ワイルドナイツの堀江翔太は、途中出場から流れを変えることで「ラスボス」の異名を取った。

——へリングヘッドコーチのラグビーについて。

「シンプルですね。シンプルなラグビーをやっています。それがチームに合っている。昔からそうなので。複雑なムーブ、代表のやる多彩な部分(にフォーカスする)よりも、シンプルなラグビーをする。それがアタックもディフェンスも出ているかなと」

——ワールドカップ前年。コンディション調整も必須と見られますが、姫野選手はどのくらいのペースで試合に出場したい意向でしょうか。

「僕は試合に出たいなという気持ちが強くて。前回の2019年は合宿が多く、チームとして過ごす時間がメリットになっていました。ただ今回はワールドカップ前に国内リーグがある。そこには多くの試合がやれるというメリットがあって、ポジティブだと感じています。僕はどんどん試合に出て試合勘、ゲームのなかでの経験を得られる方がいいと思っています。

秋のシーズン終わってからたくさん休みをいただいたので、リフレッシュはできています。本当にラグビーをやりたい気持ちになっているので、正直、僕としてはプロテクトよりは試合数を重ねていくことのほうが大事だと考えています」

——リーグワンは5月下旬まで。日本大会時は国内のトップリーグが前年12月に終わったのに比べると、フランス大会前の準備期間は長くありません。

「チームと多く時間を過ごせないことはひとつのデメリット、マイナスな点かなとは思います。ただ(国内で)色んな選手が平等に試合数をこなせるのはポジティブです。秋のシーズンではコーチ陣からレビューをもらっている。自分たちが課題に思っていることを改善し、強みを伸ばす。それぞれが(所属する)チームのなかで自己研鑽して、集まった時に各々の課題がクリアに改善されていれば、自分たちにとってプラスになるうえ、短い時間でもスムーズにチームへアジャストできると思っています」

——ちなみに姫野さんは、代表のコーチ陣からどんなレビューをもらったのですか。

「タックルとジャッカルのディシジョンに迷いがあるとレビューいただいた。ブレイクダウンに入るか、しっかりとタックルでコリジョンするかという判断のところを磨いて欲しいと」

——日本代表は1人の走者に2人でタックルする「ダブルコリジョン」を意識しています。そのなかで、どのタイミングでジャッカルを仕掛けるか。

「ジャッカルは強みとして持っています。ただ、(防御の接点へ2番目に入る場合)タックルに行くか、ボールを奪うかという判断の精度を上げるのが必要だと思います」

——4年前といまとで、日本代表はどう違いますか。

「4年前はチーム全体に余裕がない感じはしました。というのも、確固たる自信がないような。でもいまは日本代表が強くなってきたし、リーチさんも『ティア1のスタンダードでやろう』と言っているように、意識改革ができています。若い選手も育っていますし、前回のワールドカップでベスト8に行ったことで『俺たちもやれる』という空気感も感じる」

 日本大会以降、日本代表の主力格と見なされている姫野。2021年にはスーパーラグビーのハイランダーズでプレー。その経験が肥やしになっているようで、今度の会見でもこう述べていた。

「圧倒的に、メンタリティが軽くなりました。前までは、自分にプレッシャーをかけたりしていたし、顔にぶつぶつができるくらいストレスフルになって。

 前までは自分にプレッシャーをかけていたし、顔にぶつぶつができるくらいストレスフルになって、パフォーマンスが維持できなくなった。そういうメンタル的な不器用さがあったんです。ただニュージーランドに行ってからは考えが柔軟になって、オンとオフのバランス、メンタルの動き方(が変わった)。それまでは肩にすごく色んなものを乗せてプレーしている感じだったのですが、それを自分で軽減させることができるようになった。

あの時は(スーパーラグビーの直後に活動があった)日本代表にも行かないようにしようとも思ったんです。それまでは周りの声とか、『次の日本人が活躍するには自分が』とか、色んなことを肩に背負っていた。

でも、もう、そんなのはどうでもいいと(切り替えた)。マインドセットを『楽しむ』にした。自分が楽しければいいという、ちょっと自己中心的な考え方にした。それがモチベーションに変わった。いまでもメンタルで追い込まれたらいつも書くノートも書かへんとか、メンタルの切り替えの方法を学べた。それがいまでも活きているなと思います。キャパシティ、余裕が違います」

 自分に過度な負担をかけないメンタルスキルを得た姫野。リーグワンのレベルについては、こんな皮膚感覚を明かしてもいた。

「スピードがあって、スキルフルだし、そのレベルは世界に匹敵する。ただ、フィジカルは差こそ縮まってきていますが、まだまだ伸びしろがあるかなぁと思います」

 これから本格化する国内シーンでは、自分にフォーカスして大胆に躍動する。

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ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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