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リーグワン4強候補の受難とは? &ディビジョン1第13節私的ベストフィフティーン【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
快走を重ねた尾崎。代表復帰も目指す。(写真:つのだよしお/アフロ)

 リーグワン・ディビジョン1は、4月17日までに第13節を消化。プレーオフに進める上位4強が固まりつつある。

 まずは首位のサンゴリアスが一番乗りで進出した。

 万事のプレーにおける低さ、鋭さ、独創性に活路を見出すブルーレヴズに前半を18―24とリードされながら、後半開始からの約10分間で32―24と形勢逆転。ピンチにおける勤勉さと向こうのエラーを得点化するしたたかさが光り、最後は56―27で勝点を56に伸ばした。

 豪華なタレントが組織立って攻めるのを最大の特徴とする。終盤戦では、誰が出場しても一枚岩となれるよう進化したいようだ。スタンドオフの田村煕は言う。

「いい選手がサンゴリアスにたくさんいるので、個の強さがチームに返還されたらそれが大きな力になります。リーダー陣がこだわっているのは、プレーが途切れた時にハドルを組んでどんな話をするか。この時、目を見て話せていない選手がひとりでもいるとばらばらになります。(直前に起きた反則を確認したいためか)スタンドのビジョンを見ちゃいがちですが、それをしていいことなんてあまりない。リーダーの声に傾ける(ようにしたい)」

 このほど2位に浮上したのはスピアーズ。勝点49。初勝利を目指すグリーンロケッツに防御の穴を突かれながら、71―41と打ち合いを制した。かねて大型フォワードを活かす戦い方に活路を見出していたが、この日は金秀隆、根塚洸雅の両ウイングらが向こうの穴を各々の走力、技能で突き破っていた。

 チームに攻めの意識とスキルを涵養する田邉淳アシスタントコーチは、2人をはじめとする若手ウイング勢にこう期待する。

「日本人の一番の強みでもある、アジリティで勝負してほしい。ボールを持っていない時にワークレートを上げることも要求しています。また、国際レベルで活躍したいのであればハイボールキャッチもマスターしないと通用しなくなる。そのことも伝えています」

 サンゴリアス、スピアーズとも、白星を積み上げながら課題の再点検をしているような。それはスコアを作る過程のエラー、若手を交えるメンバー構成からも明らか。ウイルス禍を勝ち抜く本当の意味でたくましいチームとなるべく、トライアルアンドエラーを重ねる。

 その向きは、勝点48で3位のワイルドナイツも然りだ。開幕からの2戦を不戦敗とするも実戦全勝。前年度のトップリーグに続く「2連覇」が期待されるが、陣営はここ数試合を制するまでの過程に課題があるとしている。

 怪我などで人員が入れ替わるなか、看板の防御システムの遂行力、総合的なプレー選択の判断に狂いが生じているのか。16日にスティーラーズを37―31で下すまでの間も、風上の前半における攻撃をミスで終わらせたり、リードを広げた後に反則で得点機を与えたりと消化不良気味だった。

 スタンドオフの松田力也はこのように述べた。

「自分たちで苦しむ展開に持っていっているのは事実だと思います。ただ(やや手こずった)前半も、やるべきことをやっている時間帯は点数も入っています。それ(チームの戦術、戦略)を信じてやるしかない。ここからは、ひとつのミスで負ける試合もあると思う。そこはゲームメーカーとして、練習から口を酸っぱくして言うしかない。ミスを恐れずにやることも大事ですけど、ミスをしないことも大事です。そこの違い(を理解させること)はリードしたいですし、チームとしても詰めていかなきゃいけない。もう少しのところまで来ている。自信を持って、続けていきたいです」

 残る4位の椅子を争うイーグルス、ブレイブルーパスは、上昇気流に乗りながら勝点をそれぞれ41、39とする。この両軍に敗れたヴェルブリッツも勝点37で6位につけ、豪華戦力のつながり方次第で逆転も望める。

<ディビジョン1 第13節 私的ベストフィフティーン>

1、稲垣啓太(ワイルドナイツ)…スティーラーズ戦に先発し、スクラム、相手の接点への圧力、好スイープで渋く光った。

2、堀江翔太(ワイルドナイツ)…攻守ともコンタクトでゲインラインを攻略。しなやかにスペースを切り裂く走りも光る。

3、平野翔平(ワイルドナイツ)…スクラムを好プッシュ。

4、ワーナー ディアンズ(ブレイブルーパス)…相方のジェイコブ・ピアスとともに、対するブラックラムズの接点に圧をかけ続けた。

5、コリー・ヒル(イーグルス)…雨のなかでおこなわれたシャイニングアークス戦で空中戦の軸をなした。前半終了間際には相手ボールの1本をスティール。地上戦でもチョークタックル、向こうのジャッカルを引きはがすスイープで光った。ワイルドナイツのジョージ・クルーズもタックルで向こうのミスを誘った。

6、リーチ マイケル(ブレイブルーパス)…タッチライン際での快走。ピンチを防ぐカバー防御と八面六臂の活躍。イーグルスのコーバス・ファンダイクも出色。サンゴリアスの箸本龍雅も好タックルを連続して決めた。

7、ラクラン・ボーシェ(ワイルドナイツ)…要所でチョークタックル、ジャッカルを重ねる。ブルーレヴズのクワッガ・スミスも加速力、ターンオーバー技術が光った。

8、姫野和樹(ヴェルブリッツ)…レッドハリケーンズ戦で球を持つたびに前進。要所でのジャッカルも効いた。ヴェルブリッツではロックのパトリック・トゥイプロトゥも好突進、好タックルを重ねた。

9、谷口和洋(スピアーズ)…「内側」のサポートを重ね4トライ。パスさばきの緩急、ウイングと連携してショートサイドを狙う判断も際立った。レッドハリケーンズのティアン・メイヤーも自陣ゴール前でのタフな防御、キック、オフロードパスが冴えた。

10、フレッチャー・スミス(グリーンロケッツ)…防御の穴を突く走り、高低、長短を織り交ぜたキックで光る。

11、アタアタ・モエアキオラ(スティーラーズ)…対するワイルドナイツのマリカ・コロインベテとのフィジカル対決は圧巻。鈍い音を鳴らしてクラッシュした。

12、中尾隼太(ブレイブルーパス)…フォワードのシェイプの後方から駆け上がって防御をひきつけ、大外へパス。カバー防御も光った。レッドハリケーンズのニック・グリッグは激しく突き刺さった。

13、サム・ケレビ(サンゴリアス)…防御網を破りながらのオフロードパスが光る。直接対決したスティーラーズのルカニョ・アム、ワイルドナイツのディラン・ライリーもよく前に出た。

14、尾崎晟也(サンゴリアス)…試合開始早々、自陣深い位置でのインターセプトからビッグゲイン。相手のミスキックを捕球するやスワーブを切り、トライを決めた。それ以外の場所でも、迫る相手をギリギリのところでかわし続けた。

15、ダミアン・マッケンジー(サンゴリアス)…時折、後ろのスペースを狙われたが、攻めては防御をひきつけてのパスで何度もチャンスメイク。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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